この項目では、配管について説明しています。同名のゲームのルール説明については「ゴルビーのパイプライン大作戦」をご覧ください。
水道管(すいどうかん)は、飲料水や洗濯、入浴、炊事などに必要な水を、家庭、学校、企業など、人々が生活・活動する場所に送る管または配管のこと。 水道管は主に以下のような用途に使用される。 日本においては、主に以下のような管種が使用される。
用途
導水管
取水施設から取り入れた水(原水)を、浄水場まで送る管のこと。管ではなく開渠・暗渠・トンネルにより水を流すこともある。
送水管
浄水場で処理された水を、配水場まで送る管のこと。
配水管
配水場から、給水区域まで水を送る管のこと。幹線となり、直接給水管を分岐しない「配水本管」と、配水本管から分岐して直接給水管を取り付ける「配水支管」(配水小管ともいう)からなる。配水本管は一般に200o以上の中大口径が多いが、事業体により異なる。水圧を均等に保ち、管内の水が滞留しないように、道路に沿って網目状に布設されている。
給水管
配水管から分岐して、各家庭など需要者に水を供給する管のこと。日本の上水道の給水装置の新設や改修工事等は、水道法に基づいて指定された指定給水装置工事事業者が行う。
管種
主な管種
金属管
ダクタイル鋳鉄管 - 水道の基幹管路において、最も多く採用されている。従来のA形K形に対し、耐震性に優れたNS形の評価が高く、次世代型のGX形が普及ている。従来からのNS形、S形、SU形等、継手部に離脱防止機能を持つ種類は、耐震管材に区分される。(※ K形は「耐震管材」には区分されない。従来、良い地盤においては「耐震適合性を有する」と言われたが、東日本大震災により被害が確認されたため、現在の検証結果では「地震動増幅が小さい地盤」において耐震適合性を有する、とされている。)GX形ダクタイル鋳鉄管
水輸送用塗覆装鋼管 - 主に大口径の水道本管に用いられる。JIS G 3443 として規格化されている。強度・延性・靱性に優れ、溶接継手により高い加工性・耐震性を持つ。[1][2] 耐震管に区分されるのは溶接タイプとなり、長寿命形水道用鋼管
亜鉛めっき鋼管(白管) - 鋼管の一種。赤水(後述)の原因となるため、現在はあまり使用されない。
塩ビライニング鋼管 - 耐久性に優れる。曲げ加工はできない。
ポリエチレン粉体ライニング鋼管 - 塩ビライニング鋼管に近い特性を持つ。耐熱性に劣り、給湯には使用できない。
ステンレス鋼管 - ステンレス鋼を使用した管のこと。錆びにくい(電蝕の問題はある)が、加工性および経済性に難がある。
波状ステンレス鋼管 - ステンレス鋼管に波状部を施した製品で、波状部において任意の角度を形成でき、継手が少なく済むなど施工が容易。直管部に使用すると地震・不等沈下が生じても継手部などの損傷を防止出来る。継手には伸縮継手とプレス式式継手とがあり、耐震性を必要とする部位にはプレス式継手は向いていない。(伸縮継手にはダクタイル鋳鉄管の離脱防止機構ほどの抜け止め力は無いが、伸縮効果と一定の離脱防止機能がある。構造上、配水管における耐震適合管レベルの耐震性が期待できると考えられる)。東京都やその周辺事業体を中心に口径50mm以下の給水管において採用されている。[3]
鉛管 - 鉛を使用した管のこと。接合は、はんだ付けによって行う。給水管に広く使用されていたが後述の理由で現在は使われない。
銅管 - 抗菌性能を持ち、曲げや切断といった加工がしやすい。耐食性に難があり、ピンホールが比較的生じやすい。以前は給湯配管でよく用いられた。
樹脂管
ポリエチレン管(青ポリ) - 耐震性・耐久性に優れ、比較的熱に強く、薬品にも強い。柔軟性があり融着式継手による一体化で漏水の心配がない。材質にはPE100の第3世代、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用している。配水・給水の埋設管、建築物内の配管などに用いられ、配水小管では主流となりつつある(※直近の日本水道協会の検査実績より)。黒ポリ(1998年のJIS規格改定より前のタイプ)に比べると次世代タイプであり、短期、長期の特性(クリープ強度、短期破壊水圧、引張降伏強さ)にも優れる。配水管用に使用される材料については「水道配水用ポリエチレン管」、埋設部の給水装置に使用される給水管については「水道給水用ポリエチレン管」[4]と呼ばれる。水道配水用ポリエチレン管は水道ビジョンにおける「耐震管材」に区分されている。※過去のポリエチレン管の事故に対しては、水道配水用ポリエチレン管の規格制定にあたり、理論と実験の両面から長期性能に優れることを比較・確認している。[5]ポリエチレン管を敷設している造成現場
ポリエチレン管(黒ポリ) - ステンレス管に比べると経済性に優れ、薬品に強く、管体は非常に柔軟性がある。金属継手での接続が主流で、熱には弱い傾向にある。給水管に多く用いられている。現在の仕様(JIS K 6762)は第2世代のPE80グレードのポリエチレン管(2種管)と、PE50グレードの鎖状低密度ポリエチレン管(1種管)、PE100グレードの高密度ポリエチレン管(3種管)で構成され、接水部にカーボンブラックを用いない2層管構造であり、耐塩素水性能を向上させている。普及している1種二層管について、公的資料では(冷間)継手構造も含めると「耐震適合性なし」とされる。現存する第一世代の古い単層管(PP管)は耐塩素水性能や環境応力破壊性能が悪いため、更新の対象となっている
鉛管は鉛が水中に溶け出し、摂取者が鉛中毒に罹患する危険があるため、現在新規には使われない。鉛管は取替が進められているが、費用の問題などで工事が進まず、宅内配管ではいまだ使われている場合が多い。なお、未だ鉛管を使っている場合は、朝最初に蛇口をひねった場合は最初にある程度水を流して、水道管内に蓄積した溶出した鉛を出すことが推奨されている。現時点において、鉛管による健康被害は確認されていない。古代ローマ帝国では鉛管を使用していたが、これを帝国滅亡の原因とする説が一部に存在した。ただし古代ローマの水道管には蛇口が存在せず(工事の際の止水栓はある)、水は常時流されていたので、現代よりもむしろ溶出した鉛を摂取する危険は小さく、俗説扱いされている。[7] ガソリンスタンド近傍や化学工場の周辺、跡地などで、万が一埋設管周辺に有機溶剤が漏れ出した場合、水道管に悪影響が及ぶ場合がある。原則としては環境基準を超える土壌汚染の場合には土を入れ替えるのが法的な処置であるため、汚染発見までの一時的な状態への対応の検討となる。
土壌に浸透した環境基準値を超える有機溶剤の影響について
鋳鉄管、鋼管 - ダクタイル鋳鉄管や鋼管は管本体の溶剤による影響は無いと言える。ただし接続部のゴム輪、パッキン類の「ゴム」は有機溶剤によって侵され膨潤、破損する場合も想定されるので必要に応じて受口部を溶剤浸透防止フィルム処理などの処置を検討する必要がある。
硬質塩化ビニル管 - 有機溶剤によって侵される性質がある。浸透防止フィルムでは少量の侵入に対しても材料が侵される可能性もあるため、溶剤浸透の可能性のある場所での敷設には注意が必要。
ポリエチレン1種二層管 - 有機溶剤には侵されないが、環境基準を超えるような高濃度の溶剤に浸る場合には溶剤浸透防止フィルムなどによる措置が有効である。浸透による水道水へのによる「におい」付着の事故例がある。
水道配水用ポリエチレン管 - 有機溶剤には侵されないが、環境基準を超える高濃度の溶剤に浸る場合には溶剤浸透防止フィルムなどによる措置が有効である。1種二層管に比べると高密度であり浸透度合いは小さく、日本水道協会規格の審議資料の中でも、溶剤濃度が環境基準以下であれば敷設に問題ない事が明記されている。