水素化アルミニウムリチウム
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水素化アルミニウムリチウム


IUPAC名

リチウムアルミニウムヒドリド
別称LAH
水素化アルミニウムリチウム
水素化リチウムアルミニウム
テトラヒドリドアルミン酸リチウム
識別情報
CAS登録番号16853-85-3 
RTECS番号BD0100000
特性
化学式LiAlH4
モル質量37.954 g/mol
外観白色結晶(純粋)
灰色粉末(市販品)
密度0.917 g/cm3, 固体
融点

150 °C, 423 K, 302 °F (分解)
への溶解度水と反応
構造
結晶構造単斜晶
熱化学
標準生成熱 ΔfHo?116.3 kJ mol-1[1]
標準モルエントロピー So78.74 J mol-1K-1
標準定圧モル比熱, Cpo83.18 J mol-1K-1
危険性
主な危険性強い可燃性 (F)
NFPA 704232W
R/SフレーズR15 R7/8 R24/25 R43
関連する物質
関連する水素化物水素化アルミニウム
水素化ホウ素ナトリウム
水素化ナトリウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

水素化アルミニウムリチウム(すいそかアルミニウムリチウム、lithium aluminium hydride)は、組成式 LiAlH4で表されるアルミニウムヒドリド錯体無機化合物の一種であり、ケトンアルデヒドアミドエステルなどの還元に用いられる。粉末状の強い還元剤であり、と激しく反応し水素を発生するため、使用する際はジエチルエーテルなどの脱水溶媒を用いる必要がある。LAH(ラー)という略称がよく用いられる。
反応性

LAHは非常に強力な還元剤である。水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)も還元剤として知られているが、LAHの方がはるかに強力である。これは、Al-H結合が、B-H結合に比べて弱いためである。LAHは、エステルケトンアルデヒドアルコールへ、アミドニトリルニトロ化合物アミンへと還元する。ジエチルエーテルから再結晶した純粋なLAHは白色固体であるが、市販品はアルミニウムの混入により灰色をしていることが多い。空気に晒されても白色を保っているものは、水蒸気と反応した結果生成した水酸化リチウム水酸化アルミニウムが表面を覆っていると考えられる。

LAHはその塩基性の強さから、アルコールのようなプロトン性溶媒や水と激しく反応して以下のように分解される[1]

LiAlH 4 + 4 CH 3 OH ⟶ LiAl ( OCH 3 ) 4 + 4 H 2 {\displaystyle {\ce {LiAlH4 + 4 CH3OH -> LiAl(OCH3)4 + 4H2}}}

LiAlH 4 + 4 H 2 O ⟶ Li + + Al ( OH ) 3 + OH − + 4 H 2 {\displaystyle {\ce {{LiAlH4}+4H2O->{Li^{+}}+{Al(OH)3}+{OH^{-}}+4H2}}}
調製

LAHは水素化リチウム (LiH) と塩化アルミニウム (AlCl3) を用いて合成される。 4 LiH + AlCl 3 ⟶ LiAlH 4 + 3 LiCl {\displaystyle {\ce {4LiH + AlCl3 -> LiAlH4 + 3LiCl}}}

この反応は 97%(重量)という高い収率で進行する。反応混合物をエーテルに溶解させた後に、固体として残る塩化リチウム (LiCl) をろ過で除去する。
構造

固体はリチウムイオン (Li+) と水素化アルミニウムイオン (AlH4?) からなるイオン結晶で、単斜晶系に属する。AlH4? は四面体型構造で、結晶中の Al?H 平均結合距離は 1.55 Aである[2][3]
無機反応

LAH と水素化ナトリウムTHF 中の複分解により水素化アルミニウムナトリウム (NaAlH4) を生成する(収率 90.7%(重量))。 LiAlH 4 + NaH ⟶ NaAlH 4 + LiH {\displaystyle {\ce {LiAlH4 + NaH -> NaAlH4 + LiH}}}

同じようにして水素化アルミニウムカリウム (KAlH4) も合成できる(収率 90%(重量)) LiAlH 4 + KH ⟶ KAlH 4 + LiH {\displaystyle {\ce {LiAlH4 + KH -> KAlH4 + LiH}}}

水素化アルミニウムナトリウム (NaAlH4)、水素化アルミニウムカリウム (KAlH4) からは塩化リチウムを用いた逆反応も進行する。溶媒にはジエチルエーテルもしくは THF を用い、収率はそれぞれ 93.5%(重量)、91%(重量)となる。 NaAlH 4 + LiCl ⟶ LiAlH 4 + NaCl {\displaystyle {\ce {NaAlH4 + LiCl -> LiAlH4 + NaCl}}} KAlH 4 + LiCl ⟶ LiAlH 4 + KCl {\displaystyle {\ce {KAlH4 + LiCl -> LiAlH4 + KCl}}}

水素化アルミニウムマグネシウム (Mg(AlH4)2) は LAH と臭化マグネシウム (MgBr2) から合成される。 2 LiAlH 4 + MgBr 2 ⟶ Mg ( AlH 4 ) 2 + 2 LiBr {\displaystyle {\ce {2LiAlH4 + MgBr2 -> Mg(AlH4)2 + 2LiBr}}}
有機化学での利用LAHを用いる有機反応

LAH は有機化学において非常に強力な還元剤として広く利用されている。反応性が高いため大量の LAH を扱うには問題があるが、それにもかかわらず小規模な化学工業にも用いられている。しかし大規模な化学工業上の反応では水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムが利用されることが多い。反応にはジエチルエーテルが良く用いられ、反応後に水洗されることが多いが、これは還元反応後に生成する無機副生成物を除去するためである。

LAH について広く知られている反応はエステル[4][5]カルボン酸[6]を1級アルコールへと還元する反応である。LAH が開発される以前の反応は、金属ナトリウムエタノール中に加え加熱するという非常に厳しい条件での反応であった(ブーボー・ブラン還元)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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