水流モデル
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等価な水流の回路(左)と電子回路(右)。

水流モデル (すいりゅうモデル、: electronic?hydraulic analogy) は、金属のような導体に電圧をかけた際に発生する、電子の流れを説明する時に使用されているアナロジーである。電流は目に見えず、電気回路中で起こる過程を説明しづらいため、各種電子部品が電流に対して果たす役割を水流で表現するものである。電気は元来、ある種類の流体として理解されており、電気を特徴付ける各種の量の名前も「電流」など、流体を想起するものになっていることがある。
目次

1 水流モデルの構成方法

2 水平な水流による水流モデル

2.1 電圧、電流、電荷

2.2 基本的な回路素子

2.3 その他の回路素子


3 原理的な等価性

4 方程式の例

5 水流モデルの限界

6 脚注

7 関連項目

水流モデルの構成方法 水圧の差

このモデルを構成する方法は1通りではない。大別して重力によって圧力を生み出すモデルと、ポンプによって圧力を生み出すモデルがある。

重力における圧力では、大きな水タンクを複数用意して、片方を高所におくか、水位を異なるようにするなどして、水頭位置エネルギーを圧力元とする。このモデルでは電位重力ポテンシャルと等価である強みがある。

第2の方法は、圧力を生み出すポンプを用いて、重力は用いないものである。こちらは回路の電源が明確になり、回路を完成させられる点において有利である。この方法については、次節で検討する。

その他の方法でも、流体の流れを扱う方程式と電荷の流れを扱う方程式の類似性に準拠している。流量と圧力は定常の場合でも非定常の場合でも、水流のインピーダンスから計算できる[1][2]。水流のインピーダンスは、水圧と体積流量の比として定義される。このとき、圧力と流量はフェーザ表示で扱われるため、大きさと共に位相も持つ[3]

音響学においては、水流モデルの変種として、圧力と音速の関係を音響インピーダンスと定義するものが使われている。この方法では、穴を1つ開けた大きなキャビティ(空洞)はコンデンサに類似する。圧力が時間に依存して大気圧と異なる場合、キャビティに圧縮エネルギーが蓄えられる。穴(あるいは長い管)は空気の流れの運動エネルギーを蓄えるインダクタに類似する[4]

回路によるモデルは、磁気ミラー中でのプラズマの流体力学的不安定性のフィードバック安定化をモデル化するためにも使用された[5]。この応用は、極板への電圧印加によってプラズマを中心に維持するためのものである。乱流および非線形効果が存在していることを除けば、プラズマは(アナロジーではなく)本当の電気回路を作ると考えられる。
水平な水流による水流モデル
電圧、電流、電荷

一般に電位水頭に相当するが、このモデルでは、水が水平に流れることを仮定するため重力は無視でき、電位は圧力に相当する。電圧電圧降下又は電位差)は、2点間の圧力の差である。電位、電圧は、通常ボルト単位で表す。

電流流量、つまり単位時間当たりに流れる水の体積に相当する。通常アンペア単位で表す。

電荷は水の量に相当する。
基本的な回路素子

導線:単純なパイプ。

抵抗:細くなったパイプ。

キルヒホッフの第1法則における節点:T字管。

太いパイプに水を満たしたものは導線に相当する。導線に例える場合は、パイプの両端にキャップがついていると考える。導線の片方の端を回路に接続することは、パイプの片方の端のキャップを外して別のパイプに接続したことに相当する。高圧電源に接続したような少数の例外を除き、片方の端だけ導線を回路に接続しても何も起こらない。他方の端にはキャップがついたままなので、回路には何も流れない。

抵抗は細くなったパイプに相当する。細いパイプでは、同量の水を通すにもより強い圧力を必要とする。いかなる導線にも電流に対する抵抗があるように、すべてのパイプもまた、水が流れる時に抵抗がある。

キルヒホッフの法則におけるノード(接点)はパイプの分岐に相当する。分岐に正味で流入した量と同じだけ流出がある。

コンデンサ:柔軟なダイアフラムで仕切られたパイプ。

コイル:流れの中に設けられた重い水車もしくはタービン。

電圧源(電流源):フィードバック制御されたポンプ。

水流モデルにおけるコンデンサは、両端がそれぞれパイプにつながったタンクで、タンク内がゴムシートで分割されている(油圧アキュムレータ)状況に相当する[6]


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