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熊本水俣病
赤:水俣市、青:葦北郡、薄黄色:その他の熊本県
概要
分類および外部参照情報
ICD-10T56.1
ICD-9-CM ⇒985.0
MedlinePlus007763
[ウィキデータで編集]
水俣病(みなまたびょう)とは、熊本県水俣湾周辺の化学工場などから海や河川に排出されたメチル水銀化合物(有機水銀)により汚染された海産物を住民が長期に渡り日常的に食べたことで水銀中毒が集団発生した公害病である[1][2]。
第二次大戦後の日本における高度経済成長期の負の側面である四大公害病の一つである。「公害の原点」ともいわれ[3][4]、工業災害における犠牲者の多さでも知られる[注 1]。また、水俣病と全く同じ原因そして同じ症状の患者が新潟県阿賀野川下流域で集団発生した(第二水俣病)[1]。有機水銀病とも言われる[5]。
1956年(昭和31年)5月1日、熊本県水俣市の新日本窒素肥料(現・チッソ)水俣工場附属病院長の細川一が水俣保健所に患者の発生を報告し、公式に確認された[6][7]。1958年(昭和33年)頃から「水俣病」の名称が使われ始め[8][9]、1968年(昭和43年)9月26日、厚生省は、水俣病の原因物質をチッソ水俣工場の廃液に含まれたメチル水銀化合物であると認定した[10][11]。
1997年(平成9年)7月29日、熊本県知事が水俣湾の安全宣言を行い、同年10月から漁が再開された[12][13]。
概要熊本大学医学部公衆衛生学教室は1956年9月から現地調査を開始し、1957年1月に詳細な調査報告書を学会誌に発表した。写真は同調査時の患者の男性[14]。
1931年(昭和6年)、熊本県水俣町(現・水俣市)にある日本窒素肥料株式会社(チッソの前身)水俣工場の技術者の橋本彦七らは、炭化カルシウムからアセチレンを作り,これを水銀触媒を使ってアセトアルデヒドに変える一連の合成方法を発明し、特許原簿に登録した。1932年(昭和7年)から同工場で操業開始。アセトアルデヒドを原料とするブタノール、酢酸、酢酸エチル、無水酢酸、酢酸繊維素、酢酸ビニールなどの製品化に成功した[15][16][17]。1938年(昭和13年)、橋本は水俣工場長に就任[15]。1941年(昭和16年)、チッソは日本で初めてアセチレンから塩化ビニルへの合成に成功した[16]。橋本は第二次世界大戦後、水俣市長を通算4期務めた[18]。
チッソは、アセチレンの付加反応に金属水銀や昇汞(塩化水銀(II)の別名)を用いており、目的の反応生成物を取り除いた後の工業廃水を水俣湾に排出していた。そのため、これに含まれていたアルキル化水銀が環境中の魚介類の食物連鎖によって生物濃縮し、これらの魚介類が汚染されていると知らずに摂取した八代海沿岸の熊本県および鹿児島県の住民の一部に「メチル水銀中毒症」がみられ、これが水俣病と呼ばれることとなった。環境汚染の食物連鎖で起きた人類史上最初の大規模有機水銀中毒でかつ世界中に知れわたった公害病とされる[19]。「メチル水銀」も参照
有機水銀は自然界にごく普通に存在し、魚介類で有機水銀を含まないものはない。人間は日常的に魚類から有機水銀を摂取している。日常の食事などからの摂取が一定の範囲内であれば、適切に排出され問題はないが、大量に摂取した場合は排出しきれず蓄積され、激しい中毒症状を引き起こす場合がある。妊婦などには、胎盤を通じて胎児に影響が出ないよう、マグロやカジキといった水銀含有量の多い魚の摂取について注意喚起が行われている。
後年わかるように、水俣病は昭和20年代後半から30年代前半に、触媒の変更によってアルキル化水銀が海中に放出され、環境中でそれを摂取した魚類が適切に排出できずに食物連鎖するうちに蓄積し、さらにそれを食べた人間に有機水銀中毒症状が発生したものである。水俣病はいわば量的問題で起こったものであり、自然界における摂取と排出のバランスの崩壊で発生したものであった。
当初は原因が分からず「奇病」と呼ばれていたが、地名をとって「水俣病」と呼ばれるようになった。原因が解明されたあとは、同様の公害病の呼称にも用いられた。水俣病、第二水俣病(新潟水俣病)、イタイイタイ病、四日市ぜんそくの4つは、四大公害病と呼ばれる。
主なメチル水銀中毒症の集団発生[20][21][22]発生源ヒトへの経路集団発生地確認年呼称
聖バーソロミュー病院併設医科大学メチル水銀製造実験中の曝露
(技術者3名が中毒、うち2名死亡)ロンドン1865年聖バーソロミュー病院1865年の症候群
農薬工場作業中の直接曝露
(職業病)ロンドン郊外1940年ハンター・ラッセル症候群
チッソ水俣工場
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