水中毒
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この項目では、西洋医学における説明について説明しています。漢方医学における説明については「水毒」をご覧ください。

水中毒
概要
診療科内分泌学
分類および外部参照情報
ICD-10E87.7
ICD-9-CM276.69
[ウィキデータで編集]

水中毒(みずちゅうどく、英語: water intoxication / water poisoning)とは、過剰の水分摂取によって生じる中毒症状であり、具体的には低ナトリウム血症痙攣を生じ、重症では死亡に至る。人間腎臓が持つ最大の利尿速度は、毎分16mLであるため、これを超える速度で水分を摂取すると、体内の水分過剰で細胞が膨化し、希釈性低ナトリウム血症を引き起こす水中毒に陥る。
症状

血液中のナトリウムイオン濃度の低下に伴い以下の症状が生じる。

135 - 145mEq/L - 基準値

130mEq/L - 軽度の疲労感

120mEq/L - 頭痛嘔吐、精神症状

110mEq/L - 性格変化や痙攣昏睡

100mEq/L - 神経の伝達が阻害され呼吸困難などで死亡

原因

水分の過剰摂取によって血液が希釈されてナトリウムの濃度が低下し、低ナトリウム血症を発症することが原因である。誤った知識に基づくダイエットや、大量の水分補給に注意する必要がある[1]。1時間あたり1リットル程度の水分摂取(食物中の水分も含む)ならば、代謝や腎機能に疾患がなければ、前述のように1時間でほぼ全量が排尿されるため、水中毒になることはまずない。

水中毒は、自閉症統合失調症の患者に多いことが知られ、2010年には、精神科病院における水中毒のための書籍も出版されている[2]。日本の『統合失調症治療ガイドライン2008』においても、多飲症による水中毒は、向精神薬の副作用の項に記載され、統合失調症の慢性期によくみられる[3][4]

水中毒には、抗精神病薬副作用[5]バソプレッシンの持続的分泌が関係するという仮説がある。抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 (SIADH) の関与があるとみなす報告が多く、抗精神病薬によるドーパミン遮断作用は、飲水にかかわるアンジオテンシンIIを増加させて、そのことで水分を保持するバソプレッシンを分泌する[6]。しかし、抗精神病薬の服用にかかわらず、自閉症では多飲が見られる。また、経尿道的前立腺切除術や[7]経尿道的・経子宮頸管的内視鏡手術においても発症することがあると報告されている[8][9]

下痢などで激しい脱水症状を起こした際、スポーツドリンクを大量に与えると、特に乳幼児において、水中毒を惹起する。これは病的脱水時の水補給には、スポーツドリンクではナトリウム濃度が低すぎることから[注 1]、低ナトリウム血症になることが原因である。病的な脱水時には経口補水液を用いる。

精神科病院の入院患者の10?20%に多飲が見られ、3?4%が水中毒を呈している[3]
治療詳細は「低ナトリウム血症#治療」を参照

急激なナトリウム補給を行うと、横紋筋融解症を発症することがある[10]

水分の摂取の厳重な制限と水排泄促進

原因疾患を特定して治療

心因性多飲症によるものの場合、その原因の解明、解決

尿崩症に対する薬物治療(DDAVP)が原因の場合、薬剤の中止

精神科病院での対処

水中毒の専門家である松浦好徳が勤める山梨県立北病院においても、患者が水を飲みすぎて、けいれんが生じるのを防ぐために、多飲症の患者を保護室に隔離したため、隔離室の大半はそうした患者で占められるということがあったが[11]、水を看護室にて自由に飲んでもらう代わりに、心理教育も行うことで、隔離は不要となった[11]
ヒト以外

輸液において、低張性電解質の過剰投与により水中毒を引き起こすことがある。また、子牛においては水の過剰摂取を原因とした一過性に血色素尿を排泄する疾患が存在する[12]
著名な例

2012年に宮崎市の30代女性が入院先の病院で水中毒により死亡している。裁判では、抗精神病薬の副作用による口渇が主な原因であるとし、水分摂取を制限しなかった病院に、過失を認めた判決が下っている[13]

2007年にアメリカのラジオ局KDNDが開催した「水飲み大会」に、優勝商品のWii獲得のために参加した3児の母である28歳の女性が帰宅後に急性水中毒で死亡した。民事訴訟の結果、ラジオ局には賠償金1657万ドルの支払いが命じられた[14]。ちなみに大会名は「Hold your wee for a Wii」(Wiiのために尿を我慢しよう)であり、参加者は排尿と嘔吐が禁じられていた。
注釈[脚注の使い方]^ 一般的なスポーツドリンクで10?20mEq/L[要出典]。

出典^ 森田茂樹、瀬戸牧子、原恵子 ほか「健康成人に発症した急性水中毒症の1例」『日本内科学会雑誌』1983年 72巻 4号 p.458-461, doi:10.2169/naika.72.458
^ (編集)川上宏人、松浦好徳『多飲症・水中毒』医学書院、2010年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-260-01002-3。 
^ a b 精神医学講座担当者会議、佐藤光源、丹羽真一、井上新平『統合失調症治療ガイドライン』(2版)医学書院、2008年、133頁。ISBN 978-4-260-00646-0。 
^ 納谷敦夫「精神病院入院患者における多飲,低ナトリウム血症及び水中毒について」 『精神医学』, 25巻 5号, p.519-525, 1983/5/15, doi:10.11477/mf.1405203587
^ 東徹「その状態は望んだ作用か過鎮静か」 日経メディカルオンライン 2016/2/17
^ 又吉康俊「水中毒の治療戦略」『日本集中治療医学会雑誌』2005年 12巻 3号 p.188-190, doi:10.3918/jsicm.12.188。
^ 小沢隆昭、宮崎久義、外山あつ子ほか「経尿道的前立腺切除術中におこつた高度の低ナトリウム血症」『医療』1989年 43巻 2号 p.235-239, doi:10.11261/iryo1946.43.235


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