気道感染
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Respiratory tract infection

Conducting passages
概要
診療科感染症内科学
分類および外部参照情報
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世界の疾病負荷(WHO、2019年)[1]順位疾病DALYs
(万)DALYs
(%)DALYs
(10万人当たり)
1新生児疾患20,182.18.02,618
2虚血性心疾患18,084.77.12,346
3脳卒中13,942.95.51,809
4下気道感染症10,565.24.21,371
5下痢性疾患7,931.13.11,029
6交通事故7,911.63.11,026
7COPD7,398.12.9960
8糖尿病7,041.12.8913
9結核6,602.42.6857
10先天異常5,179.72.0672
11背中と首の痛み4,653.21.8604
12うつ病性障害4,635.91.8601
13肝硬変4,279.81.7555
14気管、気管支、肺がん4,137.81.6537
15腎臓病4,057.11.6526
16HIV / AIDS4,014.71.6521
17その他の難聴3,947.71.6512
18墜死3,821.61.5496
19マラリア3,339.81.3433
20裸眼の屈折異常3,198.11.3415

気道感染(きどうかんせん)とは気道呼吸器におこる感染症である。呼吸器感染症とも呼ぶ。気道感染を示す重要な徴候としては発熱といった症状である。

発熱、咳、痰を起こす疾患というのはほとんどが気道感染。または呼吸器感染症である。気道とは鼻腔から肺胞までの区間をいい、声帯より上を上気道、声帯から下を下気道という。中耳、副鼻腔は気道と交通性があるため、広義の気道としてとらえられることが多い。胸膜炎、膿胸、肺膿瘍、心膜炎も多くの場合は気道感染に続発して起こることも知られている。

ここでは一般診療でかかわる主な疾患、および発熱、咳、痰を起こす疾患の鑑別などを述べる。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
管理の方針

気道感染のマネジメントの基本はまず、トリアージとして入院適応、隔離の必要性を検討し、感染症と疾患の特定、起炎菌の特定、治療の決定という流れで進む。
トリアージ

入院適応のある重症感染症か否かはバイタルサインや呼吸状態によって評価される場合が多い。また気道感染の場合は、空気感染するものが多く、隔離の必要性も考慮する。隔離が必要な疾患としてはインフルエンザ麻疹百日咳結核SARSなどが知られているが対応は明らかに異なる。結核ならば結核病床での入院となるが、インフルエンザならば感染のリスクの説明のみで帰宅できることが多い。これらは起炎菌が同定されるまでわからないため、咳や痰がある患者は否定されるまで感染症として扱い、疑わしきは隔離対象とするのが原則である。
感染症と疾患の特定

問診、身体所見、X線写真心電図、採血、喀痰検査などが行われる。感染の部位診断としては可視域ならば視診、可視域でなければX線写真や理学的な所見を参考とする。特に疼痛部位とその性状は重要な情報となる。
起炎菌の同定

確定診断は培養による。しかし、迅速キットの普及、正確な部位診断によって予測が可能な場合が多い。
治療の選択

抗菌薬をはじめとする化学療法やドレナージといった治療を行う。院内発症の場合は施設により起炎菌、薬剤感受性が異なるためサーベイランスの情報が重要となってくる。抗菌薬や抗ウイルス薬が必要な疾患を以下に纏める。

抗菌薬の適応となる気道感染

A群β溶血性連鎖球菌STDによる咽頭炎、インフルエンザ、中耳炎喉頭蓋炎気管支炎(特にマイコプラズマ)、肺炎、肺化膿症、膿胸など

抗菌薬の適応とならない気道感染

インフルエンザ以外の感冒、A群β溶血性連鎖球菌とSTD以外による咽頭炎、クループ、マイコプラズマ以外の気管支炎、胸膜炎心膜炎など
有名な急性気道感染

慢性の疾患の場合は各種専門医の領域になるので主に急性の経過をとる疾患について述べる。日常的にかかわる疾患としては以下のようなものがある。なお、中耳炎副鼻腔炎に関しては厳密には気道感染とは言わないものの専門医のもとで治療を受けない場合が多いのでここで説明する。
かぜ症候群詳細は「風邪」を参照

くしゃみ、鼻水鼻閉、微熱、倦怠感、頭痛、食欲不振といった漠然としたいくつかの症状が比較的緩徐に出現するのが特徴である。ライノウイルスコロナウイルスが原因であることが多く、基本的に抗菌薬を用いる必要はない。

自然回復日数は平均1.5週間[2]。診断がついた場合は対症療法を行う。症状をとるには漢方薬が有効な場合が多い。その他には鼻づまりには抗ヒスタミン薬、熱、頭痛などには解熱鎮痛薬が用いられる。特によくつかわるのがPLという合剤である。このPLには第一世代抗ヒスタミン薬が配合されており尿閉やふらつきによる転倒が起こったり、眠気で事故になったりすることがある。くしゃみ、鼻水が慢性にある場合はアレルギー性鼻炎でありかぜ症候群ではない。
咽頭炎詳細は「咽頭炎」を参照咽頭に炎症が見られる

かぜ症候群と異なり、急激に症状が出現する。咽頭炎の症状としては急性の高熱、喉の痛み、腫れであり鼻水はあまりない。原因としては60%がウイルス性であり、40%が細菌性であると言われている。重要な鑑別疾患としては伝染性単核球症ジフテリアHIV淋病亜急性甲状腺炎咽頭結膜炎などがあげられる。特に伝染性単核球症の場合はペニシリンを用いると皮疹が生じることが知られているためできるだけ鑑別をつけたいところである。血液生化学検査や免疫学的検査でも区別は可能だが、頸部リンパ節触診もかなりの確率で診断の手助けとなる。胸鎖乳突筋より前にある前頸部リンパ節に圧痛がある場合は細菌性咽頭炎であることが多く、胸鎖乳突筋より後方にある後頸部リンパ節に圧痛があるばあいは伝染性単核球症である確率が高いと言われている。

自然回復日数は平均1週間[2]。細菌性咽頭炎の場合はほとんどの場合は化膿性レンサ球菌が原因であるため、ほとんどの場合はペニシリンが著効する(溶連菌のペニシリン感受性は100%である)。外来ではバイシリン(バイシリンG顆粒®)またはアモキシシリン(サワシリン®)というペニシリン製剤がよく利用される。サワシリン®を用いる場合はサワシリン®500mgを1日3回(1500mg/day)で10日分、小児の場合は25?45mg/Kg/dayを目安に1日2回10日分といった処方がよく知られている。細菌性咽頭炎に対するペニシリン投与の意義としては無治療の場合よりも症状が1日改善すること、リウマチ熱の予防効果があることがあげられる。ただ、糸球体腎炎の予防効果にエビデンスは存在しない。細菌性咽頭炎と客観的に診断をするにはカナダルールというものがよく知られている。熱が38度以上、咳がない、前頸部リンパ節腫脹を認める、扁挑がはれている、または扁挑に浸出物がある、年齢が3?14歳であるという項目に対して該当する項目数を数える。なお年齢が45歳以上の場合は-1とする。合計点が1以下である場合は細菌性咽頭炎ではなく、2点以上である場合は咽頭培養、または(感度は落ちるものの)溶連菌迅速検査を用いて検査後、ペニシリンを投与して良いとされている。4点以上の場合はエンピリックにペニシリンを投与する場合もある。扁挑に白苔がある場合は細菌性咽頭炎と言われていたが、カナダルールにその項目はない。小児ではアデノウイルスによる咽頭結膜炎コクサッキーウイルスによるヘルパンギーナなども有名である。ヘルパンギーナは幼児、学童の夏風邪でよくみられ、発熱と粘膜疹が特徴的である。早期は点状出血を呈することもある。咽頭痛や流涎が認められる。
喉頭蓋炎急性喉頭蓋炎の内視鏡像。詳細は「喉頭蓋炎」を参照

内科的救急疾患である。小児に多い。後頭蓋に生じる急性炎症性腫脹である。インフルエンザ桿菌による重症細菌感染症の一症状として出現するためクループとは全く異なる病態である。


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