気胸
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気胸
別称肺虚脱、イケメン病
[注釈 1]

左肺気胸のレントゲン(画像では右側)
概要
診療科呼吸器科, 呼吸器外科
症状胸痛、 呼吸困難など
発症時期突発的
原因不明、外傷
危険因子慢性閉塞性肺疾患結核タバコ
診断法胸部X線画像診断超音波検査CT
鑑別肺気腫
予防禁煙
治療自然治癒、胸腔ドレナージ外科手術胸膜癒着
頻度10万人あたり20人
分類および外部参照情報
Patient UK気胸
[ウィキデータで編集]
気胸によって潰れた肺のイメージ

気胸(ききょう、英語: pneumothorax)は、何らかの理由での空気が胸腔内へ漏れ出し、その空気がを圧迫し、肺が外気を取り込めなくなった状態である。
病因

多くは自然気胸(原発性自然気胸 primary spontaneous pneumothorax および続発性自然気胸 secondary spontaneous pneumothorax)で、肺胞の一部が嚢胞化したもの(ブラ Bulla)や胸膜直下に出来た嚢胞(ブレブ Bleb)が破れ、吸気が胸腔に洩れる事でおこる。胸痛をきっかけに受診することが多い。知名度が低いため、喘息などと勘違いして放置されることもあるが、それほど珍しい病気ではない。

年配者の気胸は、肺気腫結核肺癌などの基礎疾患に伴う続発性気胸が多い。女性の場合は、子宮内膜症横隔膜や肺に広がり月経とともに剥がれ落ちて起こる、月経随伴性気胸の場合もある。交通事故などによる肋骨骨折が原因となるものや、点滴誤穿刺、気管支鏡検査による合併症、による肩背部・胸部などへの直深刺などによる外傷性気胸もある。

静脈や動脈の損傷(血胸)を伴う場合は血気胸と呼ばれる。
疫学

自然気胸は、「背が高く」「痩せ型で」「10?20代の若い」「男性」に起こりやすい傾向がある。BMIが20前後の男性では、6パーセント程度にブレブの発生が見られた[3]。しかし低身長者、肥満者、年配者、女性が発病する事も稀ではない。

嚢胞が発生する原因や破れる原因は明確になっておらず、故に「自然」気胸と呼ばれる。喫煙や運動、猫背などの姿勢、気圧変化(夏よりも秋から冬にかけての発症が多い)などによって肺に強い負担がかかったため、成長期の骨の急成長に肺の成長が間に合わず肺が引き伸ばされてしまったため、心的ストレスや睡眠不足等の生活習慣の悪化のためとも考えられているが、いずれも確証は得られていない。

その他、マルファン症候群や肺リンパ脈管筋腫症、ホモシスチン尿症などでも発症率の上昇が認められている。
症状

多くは突然発症する。呼吸をしても大きく息が吸えない、激しい運動をすると呼吸ができなくなるなどの呼吸困難酸素飽和度の低下、頻脈、動悸、咳などが見られる。発症初期には肩や鎖骨辺りに違和感、胸痛や背中への鈍痛が見られることがあるが、肺の虚脱が完成すると胸痛はむしろ軽減する。痛みは人によって様々で、全く感じない人もいれば、軽微の気胸で激痛を感じる人もいる。

自然気胸の場合、両方の肺で同時に発症することは稀だが、片方の肺が発症するともう一方に負担がかかるので、可能性は少なからずある。両肺で同時に発症した場合は酸素が供給されないため危険である。症状が悪化すると、胸部の皮膚に気泡のようなもの(皮下気腫 en:Subcutaneous emphysema)が現われることもある。
緊張性気胸

胸腔に漏れ出した空気が著しく多く、陽圧になって対側の肺や心臓を圧迫している状態を緊張性気胸という。この場合は血圧低下、ショックを来たし、緊急に胸腔穿刺を行わなければ死に至る。これは、心臓は勿論肺も、血液が体内を一巡するごとに必ず通る臓器だからである。しかも肺の毛細血管の還流圧は低いため、血液が肺の毛細血管を通過できなくなる(心臓に戻って来られなくなる)という事を意味する。

緊張性気胸による呼吸困難に対し、陽圧換気は禁忌である。胸腔内圧を更に上げる事になり、肺の虚脱が亢進する。緊張性血気胸・血胸では緊急手術となることもある。
診断左気胸(画像では右側)の胸部CT画像 肺表面にできたブレブの拡大図。何らかの原因で発生し、これが破れる事により肺がパンクする。自然気胸の大半は、これが原因である。

聴診において呼吸音減弱が見られる。これは聴診器で確認できるが、程度が小さい場合は発見しにくいので、専門医による診断察が望ましい。

胸部X線検査で血管影を伴わない空虚な領域は気胸と疑われる。血胸・血気胸では血液を含む胸水によるX線透過性の低下した像を認める。

胸部CTによって、比較的大きな嚢胞であれば場所が確認できる。

胸腔穿刺は胸水の性状を確認するため施行される。

気胸の重症度分類[4]

軽度気胸胸部レントゲン検査で、肺尖(はいせん:肺の頂上)が鎖骨より上にある。
中等度気胸胸部レントゲン検査で、肺尖が鎖骨より下にある。
高度気胸胸部レントゲン検査で、肺の虚脱が著しい。
緊張性気胸高度気胸で、さらに肺から空気が漏洩し続け、胸腔内が陽圧になっている。

鑑別診断の一部

胸痛患者では致死的疾患へのアプローチを優先しなければならない。具体的には下記の6つの疾患がある。
急性冠症候群不安定狭心症急性心筋梗塞

解離性大動脈瘤

心タンポナーデ(心のう内出血や心膜炎)

緊張性気胸・血胸

肺塞栓


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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