気管支喘息
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心臓性喘息」とは異なります。

気管支喘息

呼気の流量の最大値を計測するピークフローメーター
概要
診療科呼吸器学, 免疫学
分類および外部参照情報
ICD-10J45
ICD-9-CM493
OMIM600807
DiseasesDB1006
MedlinePlus000141
eMedicinearticle/806890
Patient UK気管支喘息
MeSHD001249
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平常時および喘息発作時の気管支のイラストレーション。発作により粘液(Mucus)が分泌され、気道が詰まったようになっている。

気管支喘息(きかんしぜんそく、英語: bronchial asthma)または喘息(ぜんそく、英語: asthma)は、慢性の気道炎症(2型炎症が主体の表現型が典型的であるが、それ以外にも多様な表現型が存在する)、気流制限(典型例では、通常、可逆性あり)、気道過敏性の亢進を病態の基盤に有し、発作性に、呼吸困難喘鳴[1]などの呼吸器症状の増悪をきたす症候群である。なお、末梢気道病変の喘息で聴かれる喘鳴は主として呼気性喘鳴(Wheezing)である[2]

喘息は東洋医学では哮喘と称される(哮は発作性の喘鳴を伴う呼吸疾患で、喘は保迫するが喘鳴は伴わない呼吸疾患である。双方は同時に見られることが多いため、はっきりと区別することは難しい。虚証・実証に区別はされるが、気機〈昇降出入〉の失調で起こる)。

なお、鬱血性心不全により喘鳴、呼吸困難といった喘息類似の症状がみられることがあるが、喘息とは異なる病態である。

喘息をはじめとするアレルギーが関与する疾患の治療に関して、欧米の医師と日本の医師との認識の違いの大きさを指摘し、改善可能な点が多々残されていると主張する医師もいる。
歴史

喘息を指す英単語 asthma はギリシャ語の「aazein」という鋭い咳を意味する言葉に由来する[3]。この言葉は紀元前8世紀イーリアスに登場するのが最初とされている。紀元前4世紀ヒポクラテスはこの病気が仕立て屋、漁師、金細工師に多いこと、気候と関係していること、遺伝的要因がある可能性があることを記載した。2世紀ガレノスは喘息が気管支の狭窄・閉塞によるものであることを記し、基本病態についての考察が始まった。

その後喘息についてさまざまな考察、文献が発表されたが、このころまで喘息という言葉は今日でいう喘息のみならず呼吸困難をきたすさまざまな病気が含まれていた。今日でいう喘息についての病態にせまるには17世紀まで待たねばならない。17世紀にイタリアベルナルディーノ・ラマツィーニは喘息と有機塵との関連を指摘し、またイングランドのジョン・フロイヤー (医師)(英語版)は1698年、A Treatise of the Asthmaにおいて気道閉塞の可逆性について記載した。1860年にはイギリスのソルターは著書On asthma:its pathology and treatmentの中で気道閉塞の可逆性と気道過敏性について述べ、またその後19世紀末から20世紀初頭にはアドレナリンエフェドリンが開発され、気管支拡張薬が喘息の治療として使用されるようになった。この頃まで喘息の基本病態は可逆性のある気管支収縮であると考えられていた。

1960年代に入り喘息の基本病態が気道の慢性炎症であることが指摘され始め、1990年にイギリス胸部疾患学会(BTS)の発表した喘息ガイドライン、および1991年アメリカ国立衛生研究所 (NIH) の発表した喘息ガイドラインにおいて「喘息は慢性の気道炎症である」ことにコンセンサスが得られた。これによりステロイド吸入により気道の炎症を抑え、発作を予防するという喘息の治療戦略が完成し、治療成績が改善した。しかし、吸入ステロイドの普及率は、国・地域によって差があり、殊に、日本は欧米先進諸国に比し、吸入ステロイドの普及率は低い。
症状

排気ガスなどの刺激物、アレルゲン気道感染、急激な寒暖差、運動、ストレスなどの種々の刺激が引き金となり、気管支平滑筋、気道粘膜の浮腫、気道分泌亢進などにより気道の狭窄・閉塞が起こる。気道狭窄によって、喘鳴(ぜんめい:喉のゼーゼー、ヒューヒューという音)、息切れ、咳、痰(たん)などの症状を認める。喘息発作時にはこれらの症状が激しく発現し、呼吸困難や過呼吸、酸欠、体力の激しい消耗などを伴い、時には死に至ることもある。
発症因子
大気汚染

粒子状物質)への曝露は強い発症因子であることが判明している。

たばこ たばこの煙(副流煙)は喘息の発症、憎悪の原因となる[4][5]

野焼き 秋田県において、米の収穫後の野焼きの時期に喘息患者が急増することが報告されている[6]

ばい煙 工場やディーゼル車の排出するばい煙は四日市ぜんそくの主因であり、四大公害の一つに数えられる。

線香 線香の煙と喘息の発症数には有意な相関があることが示されている[7]

粉塵 火山灰などの粉塵は喘息の憎悪要因である[8]

ヨーロッパにおいては、大気汚染と新生児アレルギー感作の増大の関連は結論されていない[9]
食習慣

野菜と果物の摂取はそれぞれ、喘息のリスクと重症度を下げるようである[10]。小児の野菜と果物の消費量に応じて、喘息のリスクが下がる関係が見られ、妊娠期の母親の消費量はその子のリスクに無関係であった[11]。一方、妊娠初期にアブラナ科の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、クレソンなど)を摂取すると幼児の喘息症状の発生率軽減するというデータもある[12]。22研究中17が野菜と果物は喘息やアレルギーの予後を良好にしているという関係が見られた[13]。20か国29施設が参加した国際研究でも、野菜と果物の消費量が発症率に関係することが見いだされた[14]。牛乳の消費と喘息の増加には関連があるが、単純な因果関係では説明できず、一部の喘息の人々では粘液産生を促している可能性がある[15]
動物との接触

への曝露は、喘息のリスクに対してわずかに予防的、逆に、への曝露はリスクをわずかに増加させており、追加の研究が必要だとされた[16]。BCGワクチンの予防接種による喘息の予防効果は一時的である[17]
環境緑化

緑化については研究の条件が違いすぎて評価できなかったため、標準化された基準が必要だと結論している[18]
分類

分類法も複数存在するが、代表的なものの一つに、幼児期に発症することの多いアトピー型と40歳以上の成人発症に多くみられる非アトピー型の2型の表現型に分類する方法がある。喘息はIgE型の免疫不全症であるため、アトピー性皮膚炎などと合併してくることが多くみられる。
アトピー型喘息(アレルギー性喘息)

吸入アレルゲンに対して遅発性喘息反応が起こることがある。曝露後、数時間から数日間気道過敏性が亢進するのだが、詳細な機序は不明である。過敏性肺炎とは異なりI型アレルギーである。
非アトピー型喘息
小児喘息

小児喘息は成長とともに寛解する場合が多いが、成人喘息に移行する場合もある。


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