気温
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屋外に設けられた気温表示ディスプレイ

気温(きおん)とは、大気(空気)の温度のこと。気象を構成する要素の1つ。通常は地上の大気の温度の事を指す。
「気温」の表現

「気温」だけを表す単語は日本語中国語など一部の言語[注 1]にしかなく、英語では「温度」を表すTemperatureが気温の意味で代用され、厳密に「気温」を表す場合はAir temperatureやAtmospheric temperatureなどが使用されている。
気温の測定と統計気象観測所の気温計バイメタル式気温計気温のグラフの例。月平均の最低・最高気温が示されている
測定

天気や気候について考えるときの気温は「地上の気温」である。気温は温度計により測定するが、構造や測定値の特性が異なるいくつかの種類の温度計が存在するため、測定値を利用する際に留意する必要がある。地上の気温の測定方法は世界気象機関(WMO)により規定されており、地上から1.25?2.0mの高さで、温度計を直接外気に当てないようにして測定することと定められている。なお日本では、気象庁が測定高さを1.5mと定めている[1]

ふつう、上記の測定方法を満たすため、温度計や同じような測定環境が求められる湿度計は、ファン付きの通風筒や百葉箱に入れられる[1]

温度計がの侵入や結露によって濡れたり、の侵入やによって凍結したりすると、水の蒸発や融解による潜熱吸収の作用で温度が低下し、誤差の原因となる。また、太陽光が直接当たったり、温度計の周りの空気の流れが滞ったりすると、本来の周囲の気温以上に温度が上昇し、これも誤差の原因となる。これを防ぐために、通風筒や百葉箱は雨・雪が侵入しにくい構造になっており、通風筒ではファンにより強制的に、百葉箱では風を通しやすい構造により換気を行っている。なお、ファンの発熱の影響を少なくするため、通風筒内では外気の出口にファンを設ける構造が適切とされている[1]

温度計を納めた通風筒や百葉箱の設置環境としては、本来の周囲の気温に近づけるために周囲の風通しが良いこと、日陰になって必要以上に低温にならないために周囲の一定範囲内に樹木や構造物などが無いこと、加熱により必要以上に高温にならないように周囲に熱源となるものが無いことなどが望まれる。気象庁の「気象観測の手引き」では、開けた平らな土地で、かつ近くに木々や建物などの他の障害物のない場所で行うことと定められており、急な傾斜地の上や窪地の中は避けるべきだが、やむを得ず設置する場合は周囲の気温と比較して特性を把握しておくべきとされている。また、通風筒や百葉箱の下の地面(露場)は、丈の短い芝生が最も望ましく、難しければ周辺と同じ土壌でもよいが、雑草の繁茂を防ぐ管理上の理由から人工芝も認められている。一方、照り返しの強いアスファルトなどは不適当とされている。露場の面積は広ければ広いほど良いとされるが、気象庁のアメダス観測所ではおおむね70m2以上の露場が確保されている[1]

気象予報に利用するため、上空の気温の観測も行われている。定時・定点の観測として、ゴム気球に温度センサを取りつけて空に放つラジオゾンデが最もよく用いられている。ラジオゾンデは対流圏を通過し成層圏内の上空30km程度まで到達する。また、航空機も随時・定時に気温の観測を行い、航空気象に利用されている。

また、世界気象機関のほか、日本をはじめとした多くの地域では気温を摂氏(°C)で表すが、アメリカ合衆国では伝統的に華氏(°F)で表すことが多い。
統計

気温はふつう一定の間隔で連続的に観測される。このデータの中で、1日や1年など一定期間における、最も高い気温を最高気温、最も低い気温を最低気温と言う。一般的には単に「最高気温」「最低気温」という場合、天気予報において良く使われることから、1日の最高気温や最低気温を指すことが多い。また、一定期間における平均の気温を平均気温と言う。

気温の統計では、その測定間隔に注意する必要がある。SYNOPは3時間ごと、MATERは1時間ごとの測定(通報)であるため、これらのデータを用いた平均気温は、日平均気温であれば8回や24回の平均となる。この間隔は技術革新により次第に短くなってきており、アメダスの例を挙げれば2002年までは1時間ごと、2008年までは10分ごと、2008年以降は10秒ごとと改良されている。これにより誤差が出る事も分かっている。平均すると、1時間ごとの最高気温は0.5℃、10分ごとの最高気温は0.2℃、それぞれ現在よりも低い値であるほか、1時間ごとの最低気温は0.2℃、10分ごとの最低気温は0.1℃、それぞれ現在よりも高い値であると報告されている[2]
気温に関する用語
最高気温
日最高気温ともいう。着目している日、すなわち0時から24時までに
観測された気温の最高値。晴天の日では12時から15時の間に観測されることが多いが、そのときの気圧配置によって夜中に観測されることもある。天気予報などで「日中の最高気温」と明示した場合は、「9時から18時までの最高気温」となる。新聞などでは「0時から15時までの最高気温」が掲載される場合が多い。また、着目している月内に観測された気温の最高値を、月最高気温という。
最低気温
日最低気温ともいう。着目している日、すなわち0時から24時までに観測された気温の最低値。晴天の日では3時から9時の間に観測されることが多いが、その日の気圧配置によっては昼間に観測されることもある。天気予報などで「明日朝の最低気温」と明示した場合は、「明日0時から9時までの最低気温」となる。新聞などでは「前日21時から当日9時までの最低気温」が掲載される場合が多い。また、着目している月内で観測された気温の最低値を、月最低気温という。
平均気温
一日の場合は1?24時の毎正時24回の気温の平均、1か月(1年)の場合は毎日(毎月)の平均気温の平均のことを指す。また、日本の平均気温を算出する場合、全ての観測地の平均気温ではなく、都市化の影響が少なく特定の地域に偏らない、1898年以降継続して観測が続けられている17地点[注 2]における、平均気温と平年値の差を、17地点の平均値で表す。よって、絶対値で○°Cではなく、平年差±○°Cで表す。この方法は世界の平均気温でも用いられている。 
日較差
一日に観測された最高気温と最低気温の差。
月較差
ひと月に観測された最高気温と最低気温の差。
年較差
一年間に観測された最高気温と最低気温の差。最暖月(最も気温が高い月)と最寒月(最も気温が低い月)の月平均気温の差を言う場合もある。
冬日(ふゆび)
日最低気温が0°C未満の日。
熱帯夜(ねったいや)
夜間の最低気温が25°C以上のこと(気象庁の予報用語による)。気象庁が統計しているのは熱帯夜ではなく、正確には「日最低気温が25°C以上の日」である。
真冬日(まふゆび)
日最高気温が0°C未満の日。
夏日(なつび)
日最高気温が25°C以上の日。
真夏日(まなつび)
日最高気温が30°C以上の日。
猛暑日(もうしょび)
日最高気温が35°C以上の日。2006年以前はマスコミ等で酷暑日(こくしょび)と表現されることが多かったが、2007年4月1日に行われた予報用語改正によって正式に定義され、同年の新語・流行語大賞でトップ10入りしている[3]
気温を左右する要因


緯度が同じ日本の札幌とフランスのマルセイユの2月の風景。積雪の有無、樹木の葉の有無などから気温の違いが分かる。


太陽光日射) - 地球上の気温に最も大きな影響力を持つ。太陽と地球の天体運動に伴う太陽光の入射角度の変化により、気温は1年周期で季節変化し、1日周期で日変化する。一般的に、太陽高度が高いほど、気温は高くなる。また、日射が少なく大気放射が多くなるため、同じ時期でも晴れの日より曇りの日や雨の日の方が気温の変化は緩やかである。

大気放射 - すべての物質はステファン・ボルツマンの法則により絶対温度の4乗に比例して単位時間当たりのエネルギーを放出している。大気圏においては主に水蒸気二酸化炭素が大気から放たれる赤外線をよく吸収する。

地球放射 - 太陽光により受けた熱は、地表から上空に向けて赤外線として放射される、これを地球放射という。夜間は地球放射により地表温度が下がり、顕熱によって気温が低下する。これを放射冷却と呼ぶ。雲が少なく風が弱い日には特に気温の低下が大きくなる。水蒸気や雲が多いと、水蒸気や雲からの赤外線の放射が地球放射と相殺するため、気温の低下幅が小さくなる。夜間から朝にかけて放射冷却が続くため、1日の気温は、放射冷却の効果を上回る日射が始まる早朝に最低となることが多い。

顕熱

潜熱

排熱 - 特に都市部では、人為的活動に伴う排熱が気温を上昇させることがある。 また、ビルの側面からの放射熱が気温の低下を妨げる要因になる。

地形 - 盆地や内陸、砂漠などの晴れが多い地域では、日射も地球放射も効率が良いため気温の変化が大きい。

海洋・水辺 - 水は熱容量が大きく温度変化が緩やかなため海上では気温の変化も小さく、陸上にあっても海辺では海陸風により海と陸の空気が入れ替わるため気温の変化が小さい。同様に水を湛える河川湖沼も同じような効果を持ち、その周囲の気温の変化は小さくなる傾向にある。また、暖流や寒流が南北に流れてくる地域では、海洋の影響により暖かくなったり寒くなったりする。


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