気候研究ユニット・メール流出事件
[Wikipedia|▼Menu]

気候研究ユニット・メール流出事件(きこうけんきゅうユニット・メールりゅうしゅつじけん、クライメイトゲート、クライメートゲート、Climategate)は、2009年11月イギリスにあるイースト・アングリア大学(UEA)の気候研究ユニット(CRU:Climatic Research Unit)がクラッキングされ、地球温暖化の研究に関連した電子メールと文書が公開されたことによって発生した一連の事件のこと[1][2][3][4]。『クライメートゲート事件』とも[5][6][7]

この事件は一般のメディアでも報じられ、標的とされたUEAのCRUの所長が一時的に所長職から離れる等の事態となった。しかしイギリス王立協会、ペンシルバニア州立大学、イギリスのラッセル委員会、イースト・アングリア大学がそれぞれに調査した[8]結果、不正の事実は何も見あたらなかった[9]。科学的にも、CRUの報告に疑念の余地がほぼ無いことが当初から指摘されており[10][11]、新たな分析でも一致する結果が得られている。イースト・アングリア大学―クライマティック・リサーチ・ユニット(CRU)の建物
事件の経緯
発端

2009年11月17日[12]クラッカーがCRUのサーバーに格納された個人ファイルを入手し、そこで発見した電子メールをオンラインで公開した[1]。1996年以降[13]の1000通以上のメールと3000以上の文書が流出し、多くの学者によって、地球温暖化を人為だとするための国際的陰謀の証拠であるとして取り上げられた[14]。断片的で選択された文面を根拠にして、多くの学者から、温暖化論者らに多くの批判メールが寄せられた[13]。地球温暖論者の信頼は大きく失墜し、ウォーターゲート事件になぞらえクライメートゲートと呼ばれた[15] メールを巡り疑惑となっている個別の争点は、下に記す。研究界、気候変動論者らは疑惑を否定し、メールでは、間違った事は行われていないとしている[14]。関連する科学者の所属する各機関は、この事件についての調査を開始すると発表した[12][16]。イギリスの新聞ガーディアンは、デンマークで行われた気候変動枠組条約締約国会議(COP15)への影響が懸念されると報じた[13]
事件を巡る調査

UEAは個人情報を含むこれら文書の悪意のある公開を非難し、盗難について独立調査を命じた。イギリス警察はメールの盗難がどのように行われたかを調査している[12][14][13]。また一部の研究者に殺害予告などの脅迫が行われ、治安当局が捜査する例も発生した[13][17]

2009年12月1日に、フィル・ジョーンズ[18]は調査終了まで所長の身分を休職する事を発表した[19][12][13][20]。ピーター・リス(Peter Liss)[21]がCRU所長代行に就任[19][12]。UEAは外部からのジョーンズに対する辞任要求は退けた。

同年12月3日に、UEAは、ミューア・ラッセル(Muir Russell)[22]を独立調査の長に任命し、2010年春までにデータの操作や隠蔽があったのかどうかの調査、およびコンプライアンスの点検、適切な手法の推奨を行うとした[12]。また2010年3月22日、UEAは外部のロナルド・オクスバラ (Ronald Oxburgh)を長とする科学評価パネルを発足させ、CRUの科学研究の質の評価を依頼した[23]

ペンシルベニア州立大学もマイケル・マン(Michael Mann)の研究について調査することを明らかにし、マンは調査を歓迎するとした[24]。2010年2月3日、結果が発表され、マンはデータ操作や隠蔽をせず、trickという語が指すのは普通の統計的手法に他ならないとし、またジョーンズからのデータ・メールの消去依頼にもかかわらずそれらを行わなかったとした。一方で科学者としての倫理、品行に問題がなかったかどうか、特別調査チームを編成して引き続き調査すると発表した[25]

イギリス気象庁は、人々の間での地球温暖化研究の信頼が損なわれたことを認め、「結果としてはおそらく結論は変わらないだろう」としながらも、3年間かけて自らの気象データベースを洗い直すことを表明した[16]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:89 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef