気候変動(きこうへんどう、英語: climatic variation)は、様々な時間スケールにおける、気温、降水量、雲などの変化を指し示す用語として、広く用いられている。特に環境問題の文脈では、地球の表面温度が長期的に上昇する現象、すなわち地球温暖化とその影響を、包括的に気候変動とよぶことが多い[1]。 気象学の用語としては本来、平年の平均的な気候が長期的な時間スケールで変化する現象は「気候変化(climate change)」と呼ばれる。「気候変動(climatic variation)」は、平年の平均的な気候からの偏差という意味で用いられ、気候変化とは区別される[2][3]。 しかし、近年では2つの用語を混ぜて利用したり、独自の定義に基づいて用語を使い分けたりする場合もある。例えば、国連のUNFCCC(気候変動枠組条約)ではclimate changeという用語が人為的な変化、climate variabilityが非人為的な変化にあてられている[4]また、IPCCにおいては同じclimate changeという用語が人為的・非人為的変化の両方をまとめて表記するために用いられ、日本語訳においては(「気候変動」を内包する言葉として)気候変化と表記されている[4](IPCC第4次評価報告書#使われている表記も参照)。 地球温暖化のリスクの深刻さを鑑みて、気候変動ではなく、気候危機という言葉を使う動きもある[5]。 地球規模の気候を決める要因には、気候システムに内在するものと、システム外からの影響による外部強制力がある。気候システム内では、大気や海洋が物理法則にしたがって相互作用している。例えば大気海洋相互作用によって起こるエルニーニョ・南方振動は、気候システムに内在した変動である。一方、太陽活動の変動、地球の公転軌道の変化、火山噴火によるエアロゾルの増加、海塩粒子、土壌性エアロゾル(ダスト)の発生などは、自然の要因による外部強制力である。温室効果ガスや大気汚染物質の排出、森林の伐採や土地利用の変化など、人間活動に由来する外部強制力もある。 気候変化とその要因としては、以下のような例がある。 ある要因が気候を変化させ、その変化が要因の影響を増幅する場合、気候には正のフィードバックを起こすメカニズムが備わっていると考える。逆に減衰する場合には負のフィードバックが備わっている。温度上昇による放射エネルギーの増加という強力な負のフィードバックが存在するため、仮に地球温暖化が進行しても、正のフィードバックが暴走する可能性は低いものと考えられている[6]。IPCC第3次報告書(第1部会)の第7章ではより詳しくフィードバック機構について議論されている[7]。ただし、永久凍土からの二酸化炭素放出など、現時点では不明な点が多い正のフィードバック機構も存在する[6]。 正のフィードバック効果の例としては、次のようなものがあげられる。
用語
気候を変化させる要因
氷期と間氷期の10万年周期の変化、および亜氷期と亜間氷期の間の4万年や2万年周期の変化は、地球の軌道要素の変化によって発生する(外部強制力)。
氷床コアや海底の堆積物の調査結果から、1万年以下の周期で温度が急激に変化した事が明らかになっている。これはボンドサイクルのような氷床の形成と崩壊を反映していると考えられている(気候システムに内在する要因)。
小氷期は太陽放射か火山活動の変化、もしくは両方の複合によって起こったと考えられている(外部強制力)。
フィードバック機構
氷 - 反射率・フィードバック
地表面を覆う氷や雪は日光の反射率が大きいが、その下の地面や海面は反射率が小さく、太陽光を吸収して暖まりやすい。氷や雪が融解すると、地面や海面の露出した部分が増えるため、太陽光がより吸収されやすくなって温度が上昇し、さらに氷や雪が融解する[7]。代表的なものとしては北極海の海氷の融解[8]による海水による太陽光吸収量の増大などがあり、近年広く報道されている[9][10]。
永久凍土からの二酸化炭素放出
気温上昇によって永久凍土が融け、閉じこめられていた有機物の分解によって二酸化炭素が放出されることによって、正のフィードバックに寄与するであろうことが指摘されている。今のところ、こうした極域の陸地は全体ではわずかに炭素の吸収源になるのではないかと見られているが、炭素放出の過程は複雑で、この結論の不確実性は大きい[11][6]。
10万年周期の氷期/間氷期サイクルにおける二酸化炭素の役割
このサイクルは軌道要素によるものとされているが効果としては小さすぎ、二酸化炭素の変化がシグナルを強化していると一般に信じられている。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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