気体
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気体(きたい、: gas)とは、物質の状態のひとつであり[1]、一定の体積を持たず、自由に流動し圧力の増減で体積が容易に変化する状態のこと[1]。「ガス体」とも言う[1]
概要

気体というのは、物質の集合状態のひとつであり[2]、圧縮やズレに対する抵抗が小さく、膨張に対してはまったく抵抗を示すことなく無限に体積を大きくしようとし、体積も形も一定でない状態をこう呼んでいる[2]。気体は、物質の三態のひとつである[3]

純粋な気体を構成する粒子は、原子の場合(ネオンなどの希ガス)、同一種類の原子から構成される元素分子の場合(酸素など)、複数種類の原子から成る化合物分子の場合(二酸化炭素など)がある[要出典]。混合気体は複数の純粋な気体が混じりあったものである。空気もそれ(混合気体)にあたる。

液体や固体との大きな違いは、気体を構成する粒子間の距離が大きい点である。気体粒子の相互作用は電場重力場のある状態では無視できる程度であり、右図のようにそれぞれの粒子が一定の速度ベクトルを持つ。

気相液相とプラズマ相の中間にあり[4]、プラズマへと転移する温度が気体の存在する上限温度となる。極低温で存在する量子縮退気体[5]が近年注目を集めている[6]。高密度の原子気体を極低温に冷却したものは、ボース気体またはフェルミ気体と呼ばれる統計的振る舞いを示す。詳しくはボース=アインシュタイン凝縮を参照。気相の粒子(原子分子イオン)は、電場などがない限り自由に運動する。

気体は液体とともに流体であるが、分子の熱運動が分子間力を上回っており、液体の状態と比べ、原子または分子がより自由に動ける。通常では固体や液体より粒子間の距離がはるかに大きく、そのため密度は最も小さくなる。また、圧力や温度による体積の変化が激しい。構成粒子間でのやりとりが少ないので、熱の伝導は低い。

気体状態では、粒子は自由かつランダムに動く熱運動をしている。また、それを構成する粒子間の引力(分子間力)は働かない。さらにその粒子の大きさ、質量共に気体の体積に比べてはるかに小さい。このために気体の状態では物質の種類を問わずに共通の性質が表れやすい。たとえば同一温度、同一気圧の下では、気体の種類を問わず同一体積中に含まれる分子数は一定である。これをアボガドロの法則という。気体分子の大きさと質量を存在しないものとした仮想の気体のモデル理想気体といい、気体の基本的性質を示すために扱われる。

臨界温度以下の気相のことを蒸気と呼ぶ。臨界温度以下で気体を圧縮していくと液体へ相転移(一次転移)する。また、ある臨界圧力以下の圧力が物質の飽和蒸気圧と等しくなる点が沸点である。
気体の単離

我々は空気中で生活しているため、化学の分野など、気体を成分に分けて扱おうとすると、周囲の空気と混じってしまいやすいため、特別な工夫を必要とする。

水溶性で空気より軽い場合は、上方置換で集める。例: アンモニア

水溶性で空気より重い場合は、下方置換で集める。例: 二酸化硫黄塩化水素塩素二酸化窒素

非水溶性の場合は、水上置換で集める。     例: 一酸化窒素窒素酸素水素

利用

流体なので形を定めることが出来ない。しかし、固体の容器に監禁することで利用する例もある。柔らかな素材に閉じこめれば、体積が弾性的に変形するので、衝撃吸収の可能な素材となる。また熱伝導度が低いため、断熱の効果もある。発泡スチロールでは多数の細かい泡のような形で気体を含んでおり、これらの性質を強く示す。
物理的性質が漂う様子から、周囲の気体の動きがある程度わかる。

ほとんどの気体は人間の知覚では観察が難しいため、圧力・体積・温度といった物理的性質と粒子数(物質量)といった性質で表す。これら4つの特性を様々な気体の様々な条件下で計測したのが、ロバート・ボイルジャック・シャルルジョン・ドルトンジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックアメデオ・アヴォガドロといった人々である。彼らの研究によって最終的にそれらの特性間の数学的関係が明らかとなり、理想気体の状態方程式となって結実した。

気体粒子は互いに十分離れているため、液体や固体ほど隣接する粒子に影響を及ぼしあうことはない。そのような相互作用(分子間力)は気体粒子の持つ電荷に由来する。同じ電荷は反発しあい、逆の電荷は引き付け合う。イオンでできた気体には恒久的な電荷があり、化合物の気体には極性共有結合がある。極性共有結合の場合、化合物全体としては中性であっても、分子内に電荷の集中する部分が生じる。分子間の共有結合には一時的な電荷もあり、それをファンデルワールス力と呼ぶ。このような分子間力の相互作用はそれぞれの気体を構成する物質の物理特性によって異なる[注釈 1][7]。例えば、イオン結合の化合物と共有結合の化合物の「沸点」を比べるとその違いが明らかとなる[8]。右の写真のようにただよう煙は、低圧の気体がどのように振る舞っているかという洞察を与えてくれる。

気体は他の状態の物質と比較すると、密度粘度が極めて低い。気体の粒子の運動は圧力温度に影響される。粒子間の距離と速度の変化は圧縮率で表される。その粒子の距離と速度は屈折率で表される気体の光学特性にも影響する。気体は容器全体に一様に分布するように拡散する。
巨視的性質スペースシャトルの大気圏突入のシミュレーション画像

気体を観察する場合、基準となる範囲や長さを指定するのが一般的である。基準となる代表長さが気体粒子の平均自由行程より十分に大きい場合(クヌーセン数が十分に小さい場合)、気体は連続体とみなされ巨視的観点から把握される。その場合、体積の面でも十分な量の気体粒子を標本化できる大きさでなければならない。このような大きさで統計的分析を行うことで、その範囲内のあらゆる気体粒子の平均的動き(すなわち、速度、温度、圧力)を観測できる。対照的に微視的、つまり粒子単位の観察を行う方法もある。

巨視的観点で観測される気体の性質には、気体粒子そのものに由来するもの(速度、圧力、温度)とそれらの環境によるもの(体積)がある。例えばロバート・ボイルは一時期、気体化学を研究していた。彼は気体の圧力と体積の関係について巨視的観点で実験を行った。その実験でJの字形の試験管のようなマノメーターを使い、その管の一端に一定粒子数で一定温度の不活性気体を入れ、さらに水銀を入れて密封した。そして、水銀の量を増やして気体にかかる圧力を増すと気体の体積が小さくなることを見出し、数学的には反比例の関係にあることを発見した。つまり、体積と圧力の積が常に一定になることをつきとめた。ボイルは様々な気体でこれが成り立つことを確かめ、ボイルの法則 (PV = 定数) が生まれた。

気体物性の分析に使用する様々な数学的ツールがある。理想流体についてはオイラー方程式があるが、極限条件の気体では数学的ツールもやや複雑化し、粘性の効果を完全に考慮したナビエ-ストークス方程式などが使われる[9]。このような方程式は対象とする気体の特定の条件を満たすよう理想化されている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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