「民俗音楽」とは異なります。
民族音楽(みんぞくおんがく)とは、英語のethnic musicの訳語で、「民族(=共通の言語・文化を持つ人の集団)が固有に伝承してきた音楽」の意味[1]。国語辞典には昭和50年代から載るようになった比較的新しい言葉[1]だが、この語はさまざまな用いられ方をしており、注意を要する。 この節の出典は、学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』の「民族音楽」の項[2] もともとethnicには「異民族・異教徒」という意味があり、ethnic musicは「異民族・異教徒のエキゾチックで野蛮な音楽」というニュアンスがあった。歴史的にこの語は欧米で内外の異民族、特に異教徒や少数民族の音楽の特異な響きを指して用いられることが多く、ヨーロッパ人が自民族の音楽を指す言葉としては使わなかった。 日本に移入されたこの語は、(1)の意味から自国である日本を除外して「日本以外の非欧米の伝統的な音楽」の意味でつかわれた。近年は当たり前になったが、以前は例えば「フランスの民族音楽」などのような言い方はしなかった。伝統的な音楽への志向はまだ残っており、例えば「中国の民族音楽」と言った場合、京劇や民謡がすぐ思い浮かぶが、女子十二楽坊やラン・ランは通常含まない。 (1)(2)に含まれる西欧中心主義や自民族中心主義、および伝統的な音楽とそれ以外のジャンルを峻別する考え方への批判から、例えば「日本の民族音楽」といった場合、古典音楽・民謡・民俗芸能・歌謡曲やポピュラー音楽、日本人が作曲・演奏する西洋クラシック音楽に至るまでのあらゆる音楽を指すような用法が近年見られる。この立場を推し進めると「民族音楽」という語が不要になり、単に「○○の音楽」と言えばよいことになる。 基本的には(3)の立場に立つが、「○○の音楽」と言った場合に想起されにくい音楽を示すためにあえて「○○の民族音楽」という語を使う用法。近年はこうした用法が主流になって来ている[注 1]。例えば「ドイツの音楽」と言った場合、どうしてもクラシックが思い浮かびがちだが、「ドイツの民族音楽」と言われれば民謡や民族舞踊の存在を意識する。 ロシア・中国・朝鮮などでは民族音楽という語をそのような意味で使っている。中国の用法では女子十二楽坊は立派に民族音楽である。中国・朝鮮では「民族楽器」「民族舞踊」と言う際の「民族」もほぼこれに準じる[1]。 「民族音楽」というより「エスニック・ミュージック」と呼ぶ場合が多い。民族衣装や民族料理を楽しむような気軽さで異民族の音楽のエキゾチックさを楽しむ際にこの用法が使われる場合があるが、エキゾチックさを強調することは(1)の用法に近い部分があり、注意を要する。 ここでは世界で行われている音楽全て(広義のワールド・ミュージック)から、近代的な商業音楽(ポピュラー音楽)と、ポピュラー音楽の影響で生まれた融合音楽(狭義のワールド・ミュージック)と、西洋芸術音楽(クラシック音楽)を除いた音楽、つまり(4)の意味での民族音楽について、世界各地域の概観を示す。 地域の区分は平凡社『音と映像による世界民族音楽体系』に準拠するが、旧ソ連地域はヨーロッパ、西アジア、中央アジア、チベット・モンゴル、極東シベリアに分割し、さらに極東シベリアをエスキモーと統合した。また地域名称は適宜現代的なものとし、それぞれに例を示した。 当然ながら、地域の分割は様々な文明論・文化論で示されている区分(例えばハンチントンの『文明の衝突』など)とかなり似てくる。 古代中国では三分損益法・十二律・五声(五音音階)という音楽理論と、さまざまな打楽器と琴、横笛とオカリナの仲間からなる儒教の儀式用の合奏が確立した。
「民族音楽」の意味
(1)西洋の古典音楽と大衆音楽以外の伝統的な音楽
(2)西洋と日本の古典音楽と大衆音楽以外の伝統的な音楽
(3)特定の民族・地域・国で行われている音楽全て
(4)「○○の音楽」と言った場合に見落とされやすい音楽を特に示す
(5)自民族の伝統的な音楽およびそれに基づいて新たに創作された音楽
(6)エキゾチックな感じを与える音楽
類義語との違い
民俗音楽/フォークミュージック(Folk music
伝統音楽/トラディショナルミュージック
世界音楽/ワールドミュージック(World music
ルーツミュージック(Roots music
詳細は「ワールド・ミュージック」を参照
世界各地域の概観
東アジア
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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