毬果
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ドイツトウヒ Picea abies(マツ科)の雌性球果。ポンデローサマツ Pinus ponderosa(マツ科)の雄性球果。

球果(きゅうか、毬果[1][2][3][4][5]、cone[6][2][4])は、裸子植物針葉樹類が形成する胞子嚢穂生殖器官)である[7]。「果」と表現されるが、厳密には果実ではない[8][9][10][注釈 1]。英語 cone は円錐を意味する単語であるが、初め矢田部良吉により「毬果」と訳され、後に「球果」として広まった[1]

針葉樹類の球果は単性胞子嚢性であり、花粉を生じる小胞子嚢性の雄性球果種子を生じる大胞子嚢性の雌性球果に分けられる[7]。雄性球果は種子を作る器官ではないため、特に雌性球果を指して「球果」と呼ぶことが多い[9][8][6]マツ目マツ属モミ属トウヒ属のもつ雌性球果は大型となり[11]、俗に「松かさ」や「松ぼっくり」と呼ばれる[12][13]

送受粉を行う時期の未成熟な球果は球花(きゅうか、毬花[2]、strobilus[6][2])と呼ばれる[9][8][14]。雌性胞子嚢穂は雌球花(雌性球花[15])、雄性胞子嚢穂は雄球花(雄性球花[15][16])と呼ばれる[17][18]

雌性球果(雌球花)は被子植物における花ではなく、花序に相当すると考えられている[9][19]。これは、種鱗と苞鱗の維管束が互いに相対しており、種鱗は苞鱗の腋芽シュート、短枝)が著しく短縮し変形したものと考えられるためであり、種鱗と胚珠が花に相当する器官とみなされる[9][19]

かつてはであると考えられて単に「雌花 (female flower)」や「雄花 (male flower)」という語が用いられ[2][20][21][22][注釈 2]、現代の植物学における用語としては適切ではないものの[8][24]、現在も慣習的に用いられることがある[8][24][26]。また、被子植物の進化において心皮(子房)の獲得は重要なイベントであり、球果は子房を持たず、被子植物の生殖器官を指す「果実」や「花」とは異なる構造であるため[8]、それらの語が含まれる「球果」や「球花」という用語を避ける研究者もいる。長谷部 (2020) では、一貫して雌性球果(雌性球花)に対して「雌性胞子嚢穂」、雄性球花に対して「雄性胞子嚢穂」という用語が用いられている[注釈 3]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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