毬果
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開いた状態の松かさ(クロマツ)。自然落下した状態 開いた状態の松かさ(Pinus coulteri)

松かさ(まつかさ、: conifer cone、pinecone)とは、マツ科マツ属)の果実のようなもの(毬果あるいは球果)のことである。松毬、松傘、松笠とも書き、「松毬」は「ちちり」「ちちりん」とも訓読する。まつぼっくり、松ぼくりともいう。これは、「松陰嚢(まつふぐり)」が転訛した語である。「松ぼくり」は晩秋植物に分類される季語となっている[1]

英語の "pineapple" (パイナップル、パインアップル)は、本来は「松の果実」という名前の通り松かさのことであったが、後に松かさに似た別の果物、すなわち現在のパイナップルを指すようになった(この場合の“apple”は、リンゴではなく単に果実を意味する)。
目次

1 構造

2 機能

3 利用

4 マツ以外の松かさ

5 脚注

6 参考文献

7 関連項目

8 外部リンク

構造「マツ#形態」も参照

アカマツクロマツ種子は、雌花を構成する鱗片の裏面につく。この鱗片は、主軸に螺旋状につき、全体としては形、あるいは卵状楕円形の塊になる。その外面は鱗片の先端の広がった部分によって覆われ、種子の位置する鱗片のすき間は、鱗片先端が膨らんで、互いに密着することで、その内部に閉じこめられ、外から見ることはできない。これが松かさである。

種子を中に含む構造という点では果実に類似するが、雌しべ子房に由来する真の果実ではない。種子の成熟には2年かかるので、マツの枝を観察すると、先端に今年の雌花、1年枝の根元に昨年から成長した未熟な松かさ、更に下には種子を放出した後の松かさがついているのが確認できることがある。種子を放出してしばらくすると、松かさは根本からはずれて地上に落ちる。このとき、松かさは大きく開いてやや球形に近くなる。

一般に二・三葉マツ(Pinus亜属 )の球果は硬く卵型、五葉マツ(Strobus亜属)のそれは軟らかくカプセル型で素手でも容易に分解できる傾向がある。ただし、Ducampopinus亜属のものは五葉でも卵型で硬いものがあり、この葉の数では完全に分類できない

P. albicaulis(五葉、Strobus亜属)

P. aristata(五葉、Ducampopinus亜属)

動物に食べられたP. cembraの球果(五葉、Strobus亜属)

最大60cmにもなるP. lambertiana(五葉、Strobus亜属)

ハイマツ(Strobus亜属)


P. pungens(二葉、Pinus亜属)

P. banksiana(二葉、Pinus亜属)

アカマツ(Pinus亜属)

クロマツ(Pinus亜属)

同じくマツ科モミ属(Abies)、トウヒ属(Picea)、カラマツ属(Larix)やツガ属(Tsuga)など、あるいはコウヤマキ(コウヤマキ科)などもよく似た松かさを作る。形や大きさはによってさまざまである。それぞれその形態には特徴があり、それによってや種の判断ができる。モミの場合、種子を放出するときに鱗片がバラバラになるため、松かさの姿で地面に落ちることはない。

ツガ(ツガ属)

コウヤマキ(コウヤマキ科)

機能「マツ#生態」も参照

アカマツやクロマツのようにによる種子散布を行う種においては、種子が成熟すると、松かさを構成する鱗片は反り返り、そのすき間を外に広げる。風散布性のマツの種子には「種子翼」という羽根状の付属物がついており、松かさから地上に落ちる間に風に乗って散らばる。

ハイマツチョウセンゴヨウのように動物による散布を行う種においては、種子が成熟しても松かさが開くことはなく、動物が種子を捕食する際に松かさごと運ばれてこぼれることで散布を行う。日本高山帯に分布するハイマツの散布者としてはホシガラスが重要である。チョウセンゴヨウはリスなどによる「貯食」に依存している。

また、松かさはにつけるとを閉じ、逆に乾燥すると開くというような生物学メカニズムを持っている。そのような松ぼっくり自身のメカニズムを利用して山火事に依存した種子散布を行う種もある。アメリカ合衆国ヨセミテ国立公園などに生えているコントルタマツ(Pinus contorta、: Lodgepole Pine、ロッジポールパイン)の松ぼっくりは、火事になると「烈開」と呼ばれる現象で、その硬い松かさを開いて種を地面に捲き散らすという自然現象を発生させる。この地域のように、山火事が多い地域では、それに適応した繁殖を行なう植物も数多い。こぼれた種子は火事のあとの焼け野原で発芽し、森林再生する。逆に、火事が起きないとコントルタマツの松かさは開かないとも言えるため、このヨセミテ国立公園では山火事も自然現象のひとつとして捉え、火事が起きても火を消さない。

このような火災の熱で開く松かさは晩生球果(英語: serotinous cone)などと呼ばれ、マツ属の中でもPinus亜属のAustrale、Oocarpae、Contortaeの各亜節に含まれる一部の種に見られる。

火災で開くP. contorta球果

火災後一斉に生えてきたP. contorta苗木

利用

アカマツやクロマツなどの松かさはその形が面白く、大きさも手頃で、よく保存されるので、子どものおもちゃなどによく用いられる。時には工芸品などに加工されることもある。水で濡らすとかさを閉じ、乾かすと再び開くという性質を生かし、かさが開いている状態では入らず、閉じていれば入るような大きさの口を持つ容器に入れることもある。

また、松脂を含み、燃えやすい形状のため、天然の着火剤としても優秀である。キャンプ用品の中には、松かさ1個から数個でシエラカップ1個分のお湯を沸かすキャンピングコンロも販売されている。

未成熟な状態のうちは砂糖で煮付けてヴァレニエにされたりフランス料理のソースや酒の香り付けに使われるなど食用になる。また精油もとられる。
マツ以外の松かさ

球果植物門の植物の場合も、構造的には松かさのようなものを作るが、外見が大いに異なるので、松かさと認識されがたい。

被子植物ハンノキなどのカバノキ科の植物やモクマオウ科の植物などもよく似た形になる。いずれも楕円形で、多数の鱗片が螺旋状に並んだものをつけ、その鱗片が隙間を広げて種子散布すると、その全体が硬く乾燥して枯れ、落下する。その形は大抵は松かさより小さいが、見た目はよく似たものである。しかし、これらは全く異なるものである。これらの場合、落下するのは種子ではなく果実であり、松かさ状を構成する鱗片はの基部の包に由来する。したがって、鱗片の間にあるのが花であって、松かさ状のものは花序である。したがって、大胞子嚢をつける胞子葉に由来する鱗片が単一の軸状に配置する松かさとは似て非なるものである。

ヒノキヒノキ科

スギ(ヒノキ科)

ハンノキ(カバノキ科)

トクサバモクマオウ(モクマオウ科)


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