この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
毒物及び劇物取締法
日本の法令
通称・略称毒劇法
法令番号昭和25年法律第303号
種類行政手続法
効力現行法
成立1950年12月8日
公布1950年12月28日
施行1950年12月28日
主な内容毒物および劇物の取扱規制
関連法令ダイオキシン類対策特別措置法、化学物質審査規制法、労働安全衛生法、農薬取締法、医薬品医療機器等法、麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法、大麻取締法、あへん法、刑法
条文リンク毒物及び劇物取締法
毒物及び劇物取締法(どくぶつおよびげきぶつとりしまりほう)は、毒物および劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする法律である。急性毒性などに着目して、毒物や劇物を指定し、製造、輸入、販売、取扱いの規制を行うことを定めている。毒劇法[1]と略称される。法令番号は昭和25年法律第303号、1950年(昭和25年)12月28日に公布された。
概要一般的な毒の概念については「毒」を参照
毒物及び劇物は、この法律で指定されているもの及び薬事・食品衛生審議会の答申を基に政令で指定されているものがある。毒物及び劇物に指定されると、製造、輸入、販売、取扱等が厳しく規制される。また、毒物及び劇物を販売する場合には、安全データシート (SDS) の添付が義務付けられている。 分類は厚生労働省の諮問委員会で決定されるが、判定基準を参考に決定される。医薬品および医薬部外品は本法律では規定しない。以下に目安を示すが、化学物質ごとに個別判断されるのでこの範囲に適合しないものもある。 判定基準を大人で換算すると、たとえば誤飲した場合の致死量が、2 g程度以下のもの。GHSにおける急性毒性区分1または2に相当。法別表で27品目、毒物及び劇物指定令で106品目を定めている。詳細は「日本の毒物一覧」を参照 判定基準を大人で換算すると、たとえば誤飲した場合の致死量が、2 - 20 g程度のもの。あるいは刺激性が著しく大きいもの。GHSにおける急性毒性区分3、皮膚腐食性区分1、眼傷害性区分1に相当。法別表で93品目、毒物及び劇物指定令で338品目を定めている。詳細は「日本の劇物一覧」を参照 毒物のうちで極めて毒性が強く、且つ広く一般に使用されるもの。法別表で9品目、毒物及び劇物指定令で10品目を定めている。詳細は「日本の特定毒物一覧」を参照 上記に該当しないもの ただし、医薬品及び医薬部外品は、毒物及び劇物には含まない(毒物及び劇物取締法 第二条)。また混同されやすいが「医薬品医療機器等法における毒薬、劇薬」と「毒物及び劇物取締法における毒物、劇物」は全く異なる分類である[2]。 なお、毒物あるいは劇物を希釈した製品(例えば殺虫剤)は、政令の規定次第で毒物から劇物、あるいは無指定へと除外される。 また特定毒物については取り扱いが厳しく規制されているが、それ以外の毒物と劇物の差は表示(毒物は毒物と、劇物は劇物と表示する)のみである。この点は、毒薬と劇薬とで保管の規制に差があることと対照的である。 業態に応じて大きく4段階の規制が行われる。 適正な表示や廃棄の義務には懲役3年以下または罰金200万円以下の、事故届出や報告・立入検査の義務には罰金30万円以下の罰則がある。 表示の例毒物劇物 毒物または劇物の容器及び被包には、以下の項目の表示が義務付けられている 国立医薬品食品衛生研究所 (NIHS) が公開している判定基準の要約を次に示す[3]。毒物及び劇物の判定は次に示す動物またはヒトにおける知見(急性毒性、刺激性)に基づき、当該物質の物性、化学製品としての特質等も勘案する。 経路毒物基準劇物基準 原則、毒物基準を1つ以上満たす場合は毒物、毒物基準は該当せず劇物基準を1つ以上満たすものは劇物とする。この基準はGHSにおける急性毒性、皮膚腐食性、眼傷害性の判定基準に準拠している。 有機溶剤のトルエンやキシレンは比較的毒性が低く劇物の基準には満たないが、いわゆる「シンナー遊び」の横行が社会問題となったため劇物に指定された。またアジ化ナトリウムは従来劇物にも指定されていなかったが、飲食物への混入事件を契機として毒物に指定され、より厳しい管理下におかれることになった。これらは、社会的影響の大きさから下された判断であると考えられている。 逆に、社会的影響の小ささから指定されていないものも多く存在する。金属セシウムは非常に反応性が大きく、空気や水との反応で発火・爆発を起こしやすいが、より反応性が低い金属ナトリウム・カリウム、およびナトリウム・カリウム合金などが指定されているのにもかかわらず、取締りの対象となっていない。 この例にみられるように、毒性や危険性が高くてもごく限られた用途にしか使用されず、社会的な問題を起こしていない物質は取り締まりの対象として指定されない傾向にある。猛毒の神経剤であるサリンは、市場での流通は全くないため、毒劇物指定されておらず、サリン等による人身被害の防止に関する法律によって流通規制されている(一方タブンは、サリンに近い毒性を持つにもかかわらず、劇物となっている[注釈 1])。
分類
毒物
劇物
特定毒物
普通物
規制
毒物劇物営業者
毒物および劇物の販売とそれを目的とした製造、輸入、を行うもの(法3条)。3業態別に登録が必要で(法4条?6条)、毒物劇物取扱責任者を置く必要がある(法7条)。また非届出業務上取扱者としての義務に加えて、譲渡に関して様々な規制がある。
特定毒物研究者・特定毒物使用者
特定毒物を使用する者(法3条の2)。研究者は都道府県知事の許可を得て、学術研究のために製造・輸入・使用ができる。また品目ごとに政令で指定された使用者は、それぞれ定められた用途に使用できる。非届出業務上取扱者としての義務に加えて、認められた以外の譲渡や所持が禁止されている。
要届出業務上取扱者
政令で定める事業(電気メッキ、金属熱処理、大量運送、しろあり防除)のために毒物および劇物を取り扱う者(法22条1、施行令41条)。都道府県知事への届出が必要で、非届出業務上取扱者としての義務に加えて、毒物劇物取扱責任者を置き(法7条)、廃棄物の回収命令に従う(法15条の3)などの義務がある。
非届出業務上取扱者
業務上毒物および劇物を取り扱う者(法22条5)。適正な管理(法11条)、表示(法12条)、廃棄(法15条の2)、運搬(法16条)、事故の際の届出(法16条の2)、および報告や立入検査などに応じる(法17条)義務がある。
表示方法
毒物
医薬用外劇物
医薬用外
医薬用外毒物医薬用外劇物
「毒物」又は「劇物」である旨を定められた通りに表示
毒物 「医薬用外」の文字と、赤地に白文字で「毒物」の文字
劇物 「医薬用外」の文字と、白地に赤文字で「劇物」の文字
毒物又は劇物の名称
毒物又は劇物の成分及びその含量
厚生労働省令で定める毒物又は劇物については、同省令で定める解毒剤の名称
毒物又は劇物の取扱い及び使用上特に必要と認めて、厚生労働省令で定める事項
判定基準
経口LD50が50mg/kg以下LD50が50mg/kgを超え300mg/Kg以下
経皮LD50が200mg/Kg以下LD50が200mg/Kgを超え1000mg/Kg以下
吸入(ガス)LC50が500ppm(4hr)以下LC50が500ppm(4hr)を超え2,500ppm(4hr)以下
吸入(蒸気)LC50が2.0mg/L(4hr)以下LC50が2.0mg/L(4hr)を超え10mg/L(4hr)以下
吸入(ダスト・ミスト)LC50が0.5mg/L(4hr)以下LC50が0.5mg/L(4hr)を超え1.0mg/L(4hr)以下
皮膚・粘膜刺激性硫酸、水酸化ナトリウム、フェノールなどと同等の刺激性を有する
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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