毒キノコ
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プロレスラーについては「きのこ (プロレスラー)」をご覧ください。

妖怪については「木の子 (妖怪)」をご覧ください。

野生のシイタケ

キノコ(茸、菌、蕈、: Mushroom)とは、特定の菌類のうちで、比較的大型の(しばしば突起した)菌類が胞子整形のために作り出す複雑な構造、あるいは担子器果そのものをいう俗称である[1]。またしばしば、キノコという言葉は特定の菌類の総称として扱われるが、本来は上述の通り構造物であり、菌類の分類のことではない[1]。子実体を作らない菌類はカビである[1]植物とは明確に異なる。ここでいう「大型」に明確な基準はないが、肉眼で確認できる程度の大きさのものをキノコという場合が多い。食用、精神作用用にもされるが毒性を持つ種もある。語源的には、「木+の+子」と分析できる。目に見える大きさになる子実体を持つ菌は、担子菌門 Basidiomycota か子嚢菌門 Ascomycota に属するものが多い[2]。日本では約300種が食用にされ、うち十数種が人為的にキノコ栽培されている[3]。日本では既知の約2500種と2、3倍程度の未知種があるとされ、そのうちよく知られた毒キノコは約200種で、20種ほどは中毒者が多かったり死に至る猛毒がある[4]
生物としてのキノコ若いベニテングタケ

キノコの本体(実体)は、カビと共に菌類という生物群に含まれる。菌糸と呼ばれる管状の細胞列で、体外に分泌する酵素で有機物を分解吸収することで生長し、胞子を作り繁殖を繰り返す。

日本菌学会の『菌類の事典』では、子実体、あるいは担子器果がいわゆるキノコであり、有性生殖器官を作る菌糸組織構造物であり、菌などの分類群を指す名称ではないと説明される[1]

つまり厳密にキノコと言えばより大きい、傘状になるものを指す。しかし不正確だが、それを作る生物のそのものを指す場合もあるということである。つまり、定義としては子実体はすべてキノコ、あるいはそれを作る生物はすべてキノコ、ということである。後者の場合、たとえば枯れ枝の表面などに張り付いていたり埋もれていたりする微小な点状のものもキノコと見なす。キノコである生物がカビに見えたり酵母状だということである。このような点状の子実体を持つものは和名も「カビ」とも呼称される例がある。

目に見える大きさになる子実体を持つ菌は、担子菌門 Basidiomycota か子嚢菌門 Ascomycota に属するものが多い[2]。しかし変形菌などの、かつて菌界に分類されていたが、現在は菌類以外に分類されている生物の子実体もキノコとして取り扱われる場合がある。栄養素の吸収の仕方から、動植物の遺骸を栄養源とする腐生性の木材腐朽菌、腐朽菌と植物の生きた根と共生が必要な菌根菌、昆虫類に寄生する冬虫夏草菌と分類される。キノコを含め菌類は生態系のサイクルの「分解」という重要な部分を担当している。キノコがあることで植物を構成するリグニン等は分解され、複雑構造のタンパク質は簡単な構造を持った物に変化し、再度植物の生長のために使われる。

子実体は胞子を散布するための器官であって、通常は「キノコ」の本体ではなく、その役割から言えばむしろ維管束植物でいうに近い(ただし子実体と花が互いに相同な器官というわけではない)。いわゆるキノコの生物としての本体は基質中に広がっている菌糸体である。
生活環生活環の略図例生長途中のマンネンタケ霊芝)の子実体

担子菌門の一例。

ひだ(襞)に形成された担子胞子が飛散。

胞子が木材や落ち葉に付着。胞子が発芽し一核菌糸(単相菌糸:n)を成長させる。(発芽)

交配可能な他の単相菌糸と遭遇すると融合し、重相菌糸(n+n)となる。

植物やその遺骸から炭素源・窒素源・水分・無機物その他を得て成長。

ごとに異なる特定の条件のもとで、幼い子実体(原基)を形成する。(原基形成)

子実体が生長して担子器を形成し、その内部で核の融合と減数分裂とが行われて担子胞子が形成される。

ただし、生活環において二次的ホモタリズム(性的に異なる二個の核が、一個の有性胞子にすでに含まれている状態)を示す種(たとえばツクリタケやハタケキノコなど)では、担子胞子は発芽した時点でただちに重相菌糸(n+n)となり、他の菌糸と融合することなしに正常な子実体を形成する。さらに、単相菌糸と重相菌糸との間で交配を行うこと(ダイモン交配あるいはブラー現象と称される)によって遺伝的撹拌を行う菌もある[5]

また、周囲の環境条件などに応じて、有性生殖を行う世代(テレオモルフ Teleomorph)と無性生殖を行う世代(アナモルフ Anamorph)とを随時に形成する菌群も数多い[6]。たとえば、食用菌としてなじみの深いヒラタケの近縁種であるオオヒラタケ(P. cystidiosus)のアナモルフは Antromycopsis 属に分類されており、通常の子実体の柄の基部に形成され分生子と呼ばれる無性胞子で繁殖する[7]。また、クロハツなどの他のきのこの上に発生するヤグラタケ、あるいは木材腐朽菌として知られるマメザヤタケにおいては、一個の子実体がテレオモルフとアナモルフの両方の機能を有している。

なお、休眠体としての菌核(菌糸が密に合着した塊を指す:スクレロティウム)や、分生子の一種であるが厚い細胞壁を持ち、休眠体として機能する厚壁胞子なども、アナモルフとして扱われる。一種類の菌で、複数のタイプのアナモルフを有する場合は、そのおのおのを指してシンアナモルフ(Synanamorph)と呼び、また、テレオモルフとアナモルフとの両者を併せてホロモルフ(Holomorph)と称する[8]
生育場所倒木のキノコ

キノコの多くは植物やその遺骸を基質としているが、中には動物などの排泄物や死骸を基質とするものや、他種のキノコを基質にするものもある。また、植物の菌根と呼ばれる器官を形成して共生し、植物から同化産物を供給されて成育するものもある。通常目にするキノコの多くは地上に発生しているが、トリュフのように完全に地下に埋没した状態で発生するものもある。地域としては森林草原に発生するものが多い。

一般にキノコは日陰や湿ったところに生えると言われ、実際にそういうところで目にする場合が多い。しかし、キノコの側からすれば、これはやや異なる。というのは、地下性のものを除けば、キノコの形成には光が必要な場合が多いのである。これは、キノコが胞子を外界に飛ばすためのしくみであることを考えれば当然と言える。朽ち木の中の閉じた空洞で胞子を飛ばしても仕方がないので外に開かれた場所にキノコを作る必要がある。しかし菌糸の生育できる場所が湿ったところである場合が多いので、その中で明るい開けたところに出てきてキノコを作っても、周囲に比べるとやはり暗く湿ったところにならざるを得ない、というのが本当のところである。真っ暗なところで形成されたキノコは、びん栽培のエノキタケに見られるように、モヤシのようにしか育たないことがある。また、マンネンタケマツオウジのように、鹿の角状に不規則に分岐した奇形となり、かさを形成しない例も知られている。しかしながら、このような奇形化には、光条件だけではなくガス条件(二酸化炭素の濃度)や他の生物の影響なども関与していることが多い。
キノコと雷

落雷した場所に、きのこがたくさん生育するという話は、古代ギリシア哲学者プルタルコスが『食卓歓談集』(岩波文庫など)に記すほどの経験則である[9]。これを説明する仮説としては、電流によって菌糸が傷ついた箇所から子実体が成長するという説、電気刺激によって何らかの酵素の活性が増大するという説[10]、落雷の高電圧により窒素が固定(窒素固定)され、菌糸の養分となる亜硝酸塩等の窒素化合物が生成されるとする説[11][12]などがある。

日本工業大学教授の平栗健史は「雷が落ちたときの音の衝撃波が菌糸に刺激を与えている」という仮説を立て、近い115デシベルの音をシイタケにあてる実験を行ったところ、落雷と同様に発芽から収穫までの期間が短縮され収穫量が倍増するという結果を得ている[13]
形態と構造柄がなく層状の形となるカワラタケ


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