死因審問(しいんしんもん、〔英〕inquest)は、英米法国における司法制度で、人が死亡した場合(特に不自然死・異状死の場合)に、検死官(検視官、coroner)がその死因等を調査(検死)するための、原則として公開で行われる審問手続である。検死審問(けんししんもん)などとも訳す。イングランドおよびウェールズでは、一定の場合には陪審(検死陪審)が審問を行う。「検死法廷」も参照目次 人の死亡について死因審問が必要であると思われる場合には、何人も、その死亡を検死官に報告する一般的義務がある。しかし、この義務は、実際にはほとんど実効性を有しておらず、担当の登録係(registrar)が報告義務を負うこととなる。登録係は、次の場合には人の死亡を報告しなければならない[1]。 検死官は、次の場合には死因審問を行わなければならない[2]。 死因が不明である場合、検死官は、死が暴力行為によるものであるか否かを判断するために、検死解剖(post mortem examination)を命じることができる。死が暴力行為によるものでないことが分かったときは、死因審問は不要である[3]。 2004年、イングランド・ウェールズにおいて、51万4000人が死亡し、そのうち22万5500件が検死官に付託された。そのうち11万5800件が検死解剖に付され、2万8300件の死因審問が行われた。そのうち570件が陪審によるものであった[4]。 検死官は、次に挙げる事例に該当する場合、死因審問のため、陪審を召喚しなければならない[5]。検死官は、それ以外にも、自らの裁量で陪審を召喚することができる。 死因審問の目的は、次の四つの点を明らかにすることである[6][7][8]。 証拠は、これらの問題に答えることのみを目的としたものでなければならず、それ以外の証拠は許容されない。死因審問の目的は、「死者がどのような事情の下死亡したか」という広い周辺事情を確かめることではなく、「死者がどうやって死に至ったか」という、より狭く限定された問題に答えることである[7]。さらに、刑事上・民事上の責任について判断することは死因審問の目的ではない[9]。例えば、在監者が独房で首を吊った場合、死因は首吊りであるといえば十分であり、刑務所職員の怠慢・不注意が当該在監者の心理状態に影響を与えたのではないかとか、それによって首吊りの機会を与えることになったのではないかといった周辺事情を調査することが目的ではない[7]。もっとも、死因審問は、公益上要求される程度までは、事実を明らかにすべきである[10]。
1 イングランド・ウェールズにおける死因審問
1.1 陪審の要否
1.2 死因審問の範囲
1.3 手続
1.4 評決
1.5 改革
2 脚注
3 参考文献
イングランド・ウェールズにおける死因審問
死者が、病状末期に医師の立会を受けていなかったとき
死後又は死の14日前以降に死者を見た医師による、死因の確認が行われていないとき
死因が不明であるとき
登録官が、死因が不自然である、暴力行為、ネグレクト若しくは堕胎によるものである、又は不審な状況で起こったと信じるとき
外科手術中の死、又は麻酔を行っている間の死であるとき
死因が業務上の疾病であるとき
死が暴力行為によるとき、又は不自然であるとき
突然死であり、かつ死因が不明なとき
刑務所又は警察の留置場における死であるとき
陪審の要否
刑務所又は警察の留置場での死である場合。
警察官の職務執行に際しての死である場合。
労働における健康と安全等に関する法律 (en:Health and Safety at Work etc. Act 1974
人の死亡が公衆の健康若しくは安全に影響を及ぼす場合。
死因審問の範囲
死者の身元
死亡の場所
死亡の日時
死因