歴史資料
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歴史資料(れきししりょう)とは、歴史を考察する際に必要な資料。「史料」と同義に用いられることも多いいっぽう、「史料」は、より狭義に用いる場合がある[注釈 1]。およそ以下の5つに大別できる。
新聞雑誌文学などもふくめ、文字によって記録された文献資料

絵画写真漫画地図などの図像資料

映画録画録音などの映像資料音声資料

遺跡遺構遺物・人為層・遺物包含層人骨などの考古資料

風俗習慣伝説民話歌謡など伝承された民俗資料

文献資料と歴史学

文献資料は歴史学研究における根本的な資料であり、われわれは歴史的事件や人物に関しての詳細を文献を通じて知ることができる。ただし、以下の点に注意しなければならない。
当時の人々にとって重大で書き留めておかなくてはならないと意識された事象・事物のみが記録され、すべての事象が記録されるわけではないこと。とくに、あまりにも日常生活に根ざして語るまでもなく当然視されていたような事象・事物(たとえば
生業衣食住産育排泄にかかわる事象など)は記録されず、記録されたとしても廃棄されてしまうケースが多いこと。

時代をさかのぼるほど、著述・編纂が為政者層、体制側、知識階級、有力者側、成人男性、都市住民に片寄る傾向があること。それゆえ、時代が古くなればなるほど、庶民、女性、子ども、地方の実態はつかみにくい傾向が生じる。また、つかみえた情報も著述・編纂にたずさわる階層の価値観を反映したものになりがちである。

記憶違いによる誤記写本として流通する過程で生じる誤写、また、記録・書写の過程で作為による改変なども考えられること。

それゆえ、歴史事象の究明のためには、文献資料を互いに付き合わせて史料批判文献学的な検討をおこなうだけでなく、絵画写真などの図像資料考古学的発見によって得られる遺構遺物などの考古資料、長い間伝承されてきた風俗習慣伝説などの民俗資料(伝承資料)も視野に入れた論考が必要である。
歴史研究と研究素材ドロイゼンベルンハイム

『英国社会史』の著者で戦後は登呂遺跡調査会委員長も務めた今井登志喜(1886年-1950年)東京大学教授は、『歴史学研究法』のなかで、歴史資料ないし史料の概念に含まれる総体の資料は非常に多く、また内容的にもきわめて複雑であるとしており、「すべての文献口碑伝説碑銘遺物遺跡風俗習慣等、一般に過去の人間のいちじるしい事実に証明を与えうるものは、皆史料の中に入るのである」[1]と述べている。

最近では、2003年(平成15年)改訂の『高等学校学習指導要領日本史B』では「資料をよむ」という単元が新設され、『学習指導要領解説』における当該単元の解説として「雑誌新聞等も含めた文献絵画地図写真等の画像映画録音などの映像音声資料、日常の生活用品も含めた遺物遺跡景観地名習俗伝承言語など様々なものが歴史的資料となり得る」として、歴史資料にはさまざまなものがあり、生徒にはその多様性を理解させるとともに、なるべく多くの種類の資料にふれさせ、それぞれの資料特性を考えさせることを学習活動とするよう規定している。

このように、古くから最近まで歴史資料の多様性については指摘されてきたが、こうした異種雑多な歴史資料の性質については、さまざまな分類の試みもおこなわれている。

たとえば、プロイセン学派に属するヨハン・グスタフ・ドロイゼン1808年 - 1884年)は「遺物」「史料」「記念物」という分類原理を提示している。

ドイツの歴史学者エルンスト・ベルンハイム1850年 - 1942年)は、ドロイゼンの示したカテゴリーの基本線に沿って、以下のような歴史資料の分類を試み、その特質を説いている。

A)直接の観察と思い出

B)報告・伝承
口碑(口頭による伝承) 歌謡物語伝説俚諺逸話など。

記録(文字による伝承) 金石文系譜的記録、官吏表、年代記伝記回想録公開状新聞私翰など。

画像・地図(形像による伝承) 地図、事件を示す絵画彫刻など。

C)遺物
残留物、狭義の遺物?人骨発掘物建築物言語風俗習慣儀式制度など。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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