この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
歳費(さいひ)とは、日本の国会議員に対して支払われる給費。それ以外の公職につく者の給与は単に「給与」と呼ばれ区別される。なお、地方議員に支払われる給与は議員報酬と呼ばれる。 日本国憲法第49条は「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」と定める。その内容は国会法や国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(略称、歳費法)、さらに国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第13条に基づき両議院の議長が協議して定める「国会議員の歳費、旅費及び手当等支給規程」によって具体化されている[1]。 国会議員の歳費の法的性質については費用弁償説(歳費には生活の保障という意味はなく職務遂行上必要となる出費について弁償したもので、ただ職務の性質上出費に応じた弁償が困難であることから画一的に相当額としている)と報酬説(歳費は国会議員の職務に対する報酬であるとする)の2つの説の対立がある[2][3]。現行の法制度は歳費については報酬説に立っているのではないかとみる見解[4]がある一方で、国会法などでは民業との兼業を禁止していないことや民事執行法第152条第1項第2号(差押禁止債権)との関係においても歳費については実際に差押えがなされていることから費用弁償説をとる学説[3]もある。 日本国憲法は裁判官については「報酬」としているのに対して(日本国憲法第79条、日本国憲法第80条)、国会議員については「報酬」や「俸給」ではなく「歳費」という表現を用いているが(日本国憲法第49条)、これは旧議院法の用例を踏襲したものであると解されている[5][6]。 中世の身分制議会ないし等族議会の下では議員は選出母体の代理人であるとされ、議員活動の費用はその選出母体から支払われる慣行となっていた[7][8][3][9]。近代に入って議員の立場が身分代表から国民代表へと変化して一種の名誉職とされるようになると、議員の活動に要する費用は自ら支払うべきものとして無報酬とする無償主義がとられることとなった[7][10][3][9]。しかし、議員職の専門化・職業化が進むに伴って他の職業に従事しながら議員活動を行い生活を維持することが難しくなり[10][11]、議員職が副業であることは議会への出席率の低下を招いたこと[3]、また、議員が特定の経済的支援者あるいは党派の領袖の支配下に置かれるといった弊害も生じることが問題となり[10]、さらに普通選挙制の導入においても旧来の無償主義の下では自ら財力を持たない者の議会への進出を妨げることとなり広範な国民が議員職に就くことや有為な人材を得ることが困難となるといった点から反省を受けることとなるに至った[7][10][3][11]。日本国憲法第49条の「国庫から」という文言はこのような歴史的沿革に由来するものであるとされる[10]。 世界的にみると議員歳費についてはイギリス下院で1911年の国会法により定められたのが最初であるとされる(チャーティスト運動も参照)[9]。 日本では大日本帝国憲法下では議員の歳費については議院法第19条において規定されていた。議院法第19条第1項は、各議院の議長の歳費は7500円、副議長のそれは4500円、貴族院の被選および勅任議員および衆議院の議員のそれは3000円と規定されていた(大正9年法律第8号による法改正から同法廃止までの金額)。
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