武士の家計簿_「加賀藩御算用者」の幕末維新
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『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』(ぶしのかけいぼ 「かがはんごさんようもの」のばくまついしん)は、2003年(平成15年)に新潮新書で発刊された歴史学者磯田道史の著書。一般向けの教養書で、ドキュメンタリー的なノンフィクションであるが、2010年(平成22年)にこれを原作として映画『武士の家計簿』が製作されている。

2010年9月時点で20万部を売り上げた[1]
内容

加賀藩の下級藩士で御算用者(会計処理の役人)を務めた猪山(いのやま)家に残された、約37年間の入払帳や書簡をもとに猪山直之(なおゆき、御算用者、御次執筆役[注 1]として活躍し、家禄を100石から180石に増やす出世を遂げる)、成之(なりゆき、御算用者から、明治維新後は海軍主計官となる)父子の家庭の日常生活や武士階層の風習を分析している。磯田は2001年(平成13年)に神田神保町の古書店でこれらの文書を入手したが、その経緯が「はしがき」に記されている。

1842年(天保13年)、借財が大きくなった直参ながら下っ端とされた猪山家(当主・直之、父・信之(のぶゆき))が借金整理を決意し、家財を売り払い収入、支払いを記載する入払帳がつけられることとなった。仔細に書き残された収入、支出の項目から武士の暮らし、習俗、とくに武士身分であることによって生じる祝儀交際費などの「身分費用」に関する項目や、江戸末期の藩の統治システムが実証的、具体的に描かれている。

本書の後半では、猪山成之の数奇な足跡もたどっている。代々の家職で事務処理と計算に優れた成之は、平時の会計事務にとどまらず、(その延長で)兵站事務にも才能を発揮し、加賀藩の京都禁蕨闕守衛諸隊の兵站を仕切った。加賀藩が新政府方に入ると、大村益次郎のもとで軍務官会計方にヘッドハンティングされ、新政府軍の財政を支えた。大村が1869年(明治2年)に暗殺された後は、兵部省会計少佑海軍掛を経て大日本帝国海軍の主計官となり、海軍主計大監(大佐相当官)まで昇進して、呉鎮守府会計監督部長を最後に、1893年(明治26年)に予備役となっている[注 2]
書誌情報

磯田道史 『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮新書、2003年)
ISBN 978-4-10-610005-5

関連書籍

石崎建治 『猪山直之日記 加賀藩御算用者』(時鐘舎新書、北國新聞社出版局、2010年)
ISBN 978-4-83-301771-8

映画

武士の家計簿
Abacus and Sword
監督
森田芳光
脚本柏田道夫
製作元持昌之、岩城レイ子、三沢和子、真壁佳子、池田史嗣
製作総指揮原正人
飛田秀一
豊島雅郎
野田助嗣
出演者堺雅人
仲間由紀恵
音楽大島ミチル
主題歌Manami「遠い記憶」
撮影沖村志宏
製作会社『武士の家計簿』製作委員会
配給松竹
アスミック・エース
公開 2010年12月4日
上映時間129分[2]
製作国 日本
言語日本語
興行収入15.0億円[3]
次作武士の献立
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『武士の家計簿』のタイトルで時代劇映画化され、2010年に公開された。配給元は松竹アスミック・エース。監督は森田芳光

加賀藩の「御算用者」を担っていた猪山家。その8代目・猪山直之のもと、膨大に膨れ上がった猪山家の借金返済に一家を挙げて奔走する姿と彼らの家族模様、そして藩内の政争や幕末維新の動乱に否応なく巻き込まれながらもそれを乗り越えてゆく直之と息子・成之や家族の姿を描く。原著で描かれている猪山家の歴史そのままでなく、多少の脚色がなされている。

石川県金沢市滋賀県近江八幡市などで撮影が行われた。舞台となった石川県では2010年11月27日に県内の6映画館で先行上映が行われた[4]

「サムライ・シネマキャンペーン」と題し、『十三人の刺客』『桜田門外ノ変』『雷桜』『最後の忠臣蔵』と併せて、2010年公開の時代劇映画5作共同のキャンペーンも行われた[5]

カナダモントリオールで開催された第34回モントリオール世界映画祭において上映が行われた[6][7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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