正義と微笑
[Wikipedia|▼Menu]

正義と微笑
著者
太宰治
イラスト藤田嗣治(装幀)
発行日1942年6月10日
発行元錦城出版社
ジャンル小説
日本
言語日本語
形態B6版
ページ数254

ウィキポータル 文学

[ ウィキデータ項目を編集 ]

テンプレートを表示

『正義と微笑』(せいぎとびしょう)は、太宰治の長編小説。

1942年(昭和17年)6月10日、錦城出版社より「新日本文藝」叢書の一冊として刊行された。装幀は藤田嗣治。初版発行部数は10,000部、定価は1円50銭だった[1][2]
執筆の時期・背景

1941年(昭和16年)12月9日、太宰は弟子の堤重久から弟の堤康久の日記の話を聞くと、即座にこれを小説の題材にすることを思い立つ。15、6歳の頃から書き続けられた弟康久の日記は、兄重久によれば次のようなものであった。

「簿記帳みたいな黒いクロス表紙の、縦がきのノートに、蟻を並べたような小さな文字で、平均一日おき位の割合で、きっちり丹念にかきこんであった。(中略) 随所に、わざと大混乱の文体で、盛んに!や、?を使って、学校や教師に対する罵言、友人に対する侮弄、自己嫌悪の慨嘆、切々たる未来への憧憬が、激しい口調で、それでいてユーモラスに綴られていた。十六歳前後の、少年にしか書けない、どろどろした、切ない何物かがあった。まだ岩にならい岩漿が、赤く、熱く、火花を散らして、行間に流れていた」[3]

また重久は本作品と日記を比べ、こう述べている。

「全篇に滲んでいるキリスト臭は、弟の日記には一抹もなく、当時私たちをとらえていたマルクスを、そっくりキリストに切り変えたものである」[4]

本作品は、1942年(昭和17年)1月に書き始められ、同年3月19日に完成したものと推測される(原稿用紙292枚)[5]。あとがきで太宰は「T君の日記は、昭和十年頃のものらしく、従つてこの『正義と微笑』の背景も、その頃の日本だといふ事も、お断りして置きたい」と記している。
備考

本作品の題名は「ほほえみ」ではなく「びしょう」と読む。「正義と微笑」という言葉は冒頭部分の「微笑もて正義を為せ!」
いいモツトオが出来た。紙に書いて、壁に張つて置かうかしら。ああ、いけねえ。すぐそれだ。「人に顕さんとて、」壁に張らうとしてゐます。僕は、ひどい偽善者なのかも知れんという節から取られている。なお、この「人に顕さんとて」は『
マタイ伝福音書』第6章第16節の言葉であり、主人公は16節から18節までを引用している。


?座の面接の場面で主人公が朗読する『ファウスト』は、森林太郎訳の『ファウスト 第一部』(岩波文庫、1928年7月20日)と『ファウスト 第二部』(岩波文庫、1928年9月10日)である。


モデルとなった堤康久は明治学院中等部から立教大学予科に進み、築地の新劇団の研究生を経て、前進座に参加した[6]。戦後は東宝の専属俳優として活躍した。


2015年3月6日、本書の電子書籍版がITmediaより発売された[7]

ドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』において、担任教師・徳山大五郎の所持品として登場する[8]

脚注^ 『太宰治全集 第5巻』筑摩書房、1990年2月27日、477頁。解題(山内祥史)より。
^ 『太宰治全集 5』ちくま文庫、1989年1月31日、404頁。解題(関井光男)より。
^ 堤重久 『太宰治との七年間』筑摩書房、1969年3月8日。
^ 『太宰治全集 第五巻 月報5』筑摩書房、1956年2月20日。堤重久「『正義と微笑』の背景」。
^ 『太宰治全集 第5巻』筑摩書房、1990年2月27日、479-480頁。解題(山内祥史)より。
^ 長部日出雄 『桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝』文藝春秋、2002年3月30日、241頁。
^太宰治|正義と微笑 - ITmedia 名作文庫
^ 欅坂46メンバー総出演「徳山大五郎を誰が殺したか?」第2話レビュー、みんな怪しすぎる! -music.jpニュース

外部リンク

『正義と微笑』:新字新仮名青空文庫










太宰治
長編小説

新ハムレット

正義と微笑

右大臣実朝

津軽

惜別

パンドラの匣

斜陽

人間失格

グッド・バイ

短編小説

ロマネスク

道化の華

ダス・ゲマイネ

燈籠

黄金風景

女生徒

新樹の言葉

葉桜と魔笛

八十八夜

畜犬談

皮膚と心

俗天使

?

春の盗賊

女の決闘

駈込み訴へ

走れメロス

古典風

乞食学生

きりぎりす

富嶽百景

東京八景

清貧譚

みみずく通信

佐渡

千代女





十二月八日

律子と貞子

水仙

黄村先生言行録

不審庵

花吹雪

佳日

散華

竹青



親友交歓

男女同権

トカトントン

メリイクリスマス

ヴィヨンの妻

女神

フォスフォレッスセンス

眉山

短編集

女生徒

皮膚と心


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:14 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef