正則函数
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、複素解析における正則関数について説明しています。代数幾何学における正則関数については「多様体の射」をご覧ください。

複素解析における正則関数[注 1](せいそくかんすう、: regular analytic function[2]:124)あるいは整型函数[注 2][3](せいけいかんすう、: holomorphic function[注 3])とは、ガウス平面上あるいはリーマン面上のある領域について、常に微分可能複素変数、複素数値函数(英語版)を指す[5][6][7]
概要

正則関数とは、複素関数(複素数を変数とし、複素数に値をもつ関数)のうちで、対象とする領域内の全ての点において微分可能な関数である。すべての点で微分可能という性質は「正則性」と呼ばれる[5][6][7]多項式関数指数関数三角関数対数関数ガンマ関数ゼータ関数など、複素解析において中心的な役割を演じる多くの関数はこの正則性を備える[8][9]

正則な複素関数は、その導関数も正則である。すなわち微分操作を無制限に繰り返してよい[6]実変数関数のように導関数が微分不可能となり微分回数が制限されることは起きない。微分可能回数について言い及ぶこともない。実数関数と勝手の全く異なる点である。

複素関数の微分可能性の特徴は、その微分の定義に起因する。複素関数の微分は実数軸および虚数軸という2次元平面内の任意の方位に沿って見積もられうるが、これをすべて一意とする。すなわちどの方位をみても同一の値をとるものとして定義されている。したがって方位を決めて一度に一方向しか見ない実数空間の偏微分よりも、複素変数空間の微分の方が制約が厳しい。連続であるだけでは十分でない。

ある任意の点についてみたときの周辺の増減がその点に対し軸対称であると正則である。これを満たすとき実数成分および虚数成分を表す関数はそれぞれ調和関数である。また実数成分および虚数成分の偏導関数はコーシー・リーマンの方程式を満たす[10][11](ただし逆は真ではない)。

正則函数が解析的であること:複素解析における正則関数は何回でも微分可能であり、したがって冪級数展開できる。複素関数に関して、それが正則であることと解析関数であることとは同義である。また、一致の定理により正則関数はその特異点を含まない領域へ一意的に拡張(解析接続)できる場合がある[5][6][7]

ガウス平面の全域で正則である複素関数は整関数と呼ばれる。また、正則関数の商として得られる関数は有理型関数という[5][6][7]
定義

ガウス平面 C 内の開集合 D と D 上で定義される複素関数 f(z) について、a ∈ D に対し極限

lim z → a f ( z ) − f ( a ) z − a {\displaystyle \lim _{z\to a}{\frac {f(z)-f(a)}{z-a}}}

が定まるとき、すなわち D 内で z を a に近づけるとき、どのような近づけ方によっても右辺の商がただ一つの値に収束するとき、複素関数 f(z) は点 a で、あるいは z = a で複素微分可能または単に微分可能であるといい[5][6][7]、この極限値を

f ′ ( z ) = d f d z = lim z → a f ( z ) − f ( a ) z − a {\displaystyle f'(z)={\frac {df}{dz}}=\lim _{z\to a}{\frac {f(z)-f(a)}{z-a}}}

と書いて、複素関数 f(z) の点 a あるいは z = a における微分係数と呼ぶ。複素関数 f(z) が D で複素微分可能である、すなわち D の全ての点で複素微分可能であるとき、複素関数 f(z) は 開集合 D において正則であるといい(集合における正則性)、複素関数 f(z) は D 上の 正則関数であるという[5][6][7]。また、複素関数 f(z) が点 a で複素微分可能なだけでなく、点 a を含む適当な(どんなに小さくてもよい)近傍 U(a) でも複素微分可能である(近傍 U(a) の全ての点で複素微分可能である)とき、複素関数 f(z) は点 a で正則であるという(1点における正則性)[5][6][7]
性質

f, g を領域 U 上で定義される正則関数とする。また α, β を複素数の定数とすると

線型性: d ( α f + β g ) d z = α d f d z + β d g d z , {\displaystyle {\frac {d(\alpha f+\beta g)}{dz}}=\alpha {\frac {df}{dz}}+\beta {\frac {dg}{dz}},}

ライプニッツ則: d ( f g ) d z = d f d z g ( z ) + f ( z ) d g d z , {\displaystyle {\frac {d(fg)}{dz}}={\frac {df}{dz}}g(z)+f(z){\frac {dg}{dz}},}

連鎖律: d ( f ∘ g ) d z = d f d g d g d z {\displaystyle {\frac {d(f\circ g)}{dz}}={\frac {df}{dg}}{\frac {dg}{dz}}}

が成り立つ。ゆえに正則関数の和、定数倍(スカラー倍)、積は再び正則である。

正則関数は微分が 0 にならない点において複素平面上の等角写像である。
コーシー・リーマンの方程式詳細は「コーシー・リーマンの方程式」を参照

z = x + iy とし、ガウス平面 C を実平面 R2 と同一視すると、複素関数 f は 2 つの実 2 変数関数 u(x, y), v(x, y) を用いて

f(x, y) = u(x, y) + iv(x, y)

と表すことができる。f(z) = f(x, y) が正則関数であれば、u, v はコーシー・リーマンの方程式と呼ばれる偏微分方程式 { ∂ u ∂ x = ∂ v ∂ y , ∂ u ∂ y = − ∂ v ∂ x {\displaystyle {\begin{cases}\displaystyle {\frac {\partial u}{\partial x}}={\frac {\partial v}{\partial y}},\\\displaystyle {\frac {\partial u}{\partial y}}=-{\frac {\partial v}{\partial x}}\end{cases}}}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:38 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef