止め輪(とめわ、英:Retaining_ring、リテーニングリング、サークリップまたはスナップリングとも呼ばれる)とは、穴または軸に加工した溝にはめ込み、隣接する部品を固定するファスナーの一種。溝からはみ出している板幅部分が部品の固定を可能にしている。 止め輪は、その他ファスナーに比べて以下の利点がある。[1] 止め輪は大きく分けて3種類存在する。[2] 偏心型止め輪は、板幅が先端部にかけて細くなっているのが特徴であり、装着時には溝壁と先端のギャップ部を除いて、すべての面で接触している。 同心型止め輪は、どの面をとっても板幅が一定となっているのが特徴であり、装着時には止め輪が楕円形の形状となり、溝壁と3点でのみ接触している。また、ラグ部も存在しないため、構成部位にスペースを確保するが、その分偏心型止め輪に比べて固定力は劣る。偏心型止め輪と比べて単価は低い。 スパイラルリングは、360°すべての面で溝壁と接触しており、また巻数を変えるだけで、軽荷重から重荷重と幅広い荷重条件にも対応。プレス加工とは異なり、板状鋼線をコイリングする生産方法であるため、プレス加工品のようなバリなどの発生がなく、また金型を設計する必要もないため、金型設計費用がかからない。プレス加工に比べ、生産過程での材料のムダがないため、サイズ・材質によってはコストを大きく削減することが可能。C型止め輪のようなラグ部が存在しないため、構成部位のスペース確保に最適。[7][2] 炭素鋼(カーボンスプリングスチール)製が一般的であるが、耐食性、硬度などの要件によってはステンレス鋼、ベリリウム銅、インコネル製なども使われる。[8] 保存期間・耐食性を高めるため、大きく分けて4種類の表面処理がある。[9]
特徴
部品1つあたりに必要な材料が少ない。
製品全体の軽量化を達成する。
止め輪を嵌め込む溝を穴または軸に加工するだけでよいため、廃棄物・生産コストを削減する。
種類
偏心型止め輪
スラスト方向取り付けタイプ
ラジアル方向取り付けタイプ
溝加工不要タイプ
ベベル型・湾曲型止め輪
同心型止め輪
スパイラルリング(巻き止め輪)
単巻タイプ
二重巻タイプ
多重巻タイプ
偏心型止め輪
スラスト方向取り付けタイプ
穴および軸に加工した溝に平行して取り付けるタイプ。先端のラグ部が留めとして機能し、固定力を高める。重荷重に対応[3]
ラジアル方向取り付けタイプ
軸に加工した溝に垂直方向に取り付けるタイプ。低荷重用。スラスト方向取り付けタイプよりも安価であり、製品要件によっては、スラスト方向取り付けタイプの代替品として使用可能。[4]
溝加工不要タイプ
溝を加工する必要なく取り付けが可能なため、対応荷重は低い。一度取り付けると、取り外しは困難。[5]
ベベル型・湾曲型止め輪
ベベル型止め輪は、止め輪外周部(穴用の場合)または内周部(軸用の場合)に15°からなる角度が加工されている点が特長。止め輪を嵌め込む溝にも対応する角度を加工することで、止め輪が溝にぴったりと嵌り、固定部品との間に隙間が生じず、固定部品が軸方向へと動く「アソビ」の発生を防ぎ、それに伴う騒音・振動などを防ぐ。[6]湾曲型止め輪は、止め輪がアーチ状となっているため、止め輪に荷重がかかる際には、荷重を押し返すよう機能する。構成部品の累積公差を補うのが特徴。
同心型止め輪
スパイラルリング
材質
表面処理
リン酸塩皮膜処理
リン酸塩のみ(保存期間の延長)
リン酸塩とオイル(8時間に及ぶ耐塩水噴霧性を付加)
コーティング付きリン酸塩
重リン酸塩とオイル(72時間に及ぶ耐塩水噴霧性を付加)
六価クロム皮膜処理
亜鉛めっき光沢付き(48時間に及ぶ耐塩水噴霧性を付加)
亜鉛めっき(96時間に及ぶ耐塩水噴霧性を付加)
コーティング付き亜鉛めっき二クロム酸塩(240時間に及ぶ耐塩水噴霧性を付加)
コーティング付き重亜鉛めっき二クロム酸塩(480時間に及ぶ耐塩水噴霧性を付加)
三価クロム
亜鉛めっき三価クロム
その他コーティング
オイル皮膜(保存期間の延長)
止め輪製造業者
⇒株式会社羽島板バネ製作所
⇒京浜金属工業株式会社(英文名:Keihin Metal CO.,LTD.)
⇒株式会社オチアイ(英文名:Ochiai Co.,Ltd.)
⇒松村綱機株式会社(英文名:Matsumura-Kohki Co.,Ltd.)
⇒Rotor Clip Company, Inc
⇒大陽ステンレススプリング株式会社(英文名:TAIYO STAINLESS SPRING CO.,LTD.)
⇒特殊発條興業株式会社(英文名:TOKUHATSU CO.,LTD.)
⇒株式会社大洋発條製作所(英文名:THS SPRING CO.,LTD.)
脚注^ Rotor Clip Company., Inc. (2012). 製品規格カタログ. 6頁
^ a b Rotor Clip Company., Inc. (2012). 製品規格カタログ. 7頁
^ ⇒http://www.rotorclip.com/tapered_axial_rings.php
^ ⇒http://www.rotorclip.com/tapered_radial_rings.php
^ ⇒http://www.rotorclip.com/tapered_self_locking_rings.php
^ 株式会社オチアイ. Ochiai of Industrial Fastners. 11頁
^ ⇒http://www.matumura-kohki.co.jp/sr-ring-top.html
^ ⇒http://jp.rotorclip.com/products/material.html
^ ⇒http://jp.rotorclip.com/products/finishes.html
参考文献
Rotor Clip Company., Inc.(2012) 製品規格カタログ. (1st ed.) .
株式会社オチアイ.(2010). Ochiai of Industrial Fastners. (3M ed.) .
松村綱機株式会社. (2009). 総合カタログ., 2nd .
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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