欧州連合競争法
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この記事は特に記述がない限り、欧州連合の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

欧州連合競争法(おうしゅうれんごうきょうそうほう)は、欧州連合域内における競争法(大企業や国家などの経済主体による市場に対する圧力を規制する法体系)。アメリカ合衆国では反トラスト法日本では私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)がこれに相当する。2009年11月まではEC競争法とも呼ばれていた。この法体系は欧州連合において重要とされる政策分野とされ、域内市場の成功を確保し、これはすなわち国境線という障害のないヨーロッパにおいて労働者、商品、サービス、資本を自由に流れさせることを意味する。とくに重要とされる政策には以下の4つの分野がある。

カルテル - 欧州連合および欧州経済領域内における談合寡占の規制。欧州連合の機能に関する条約第101条以下に規定。

独占 - 企業の市場における優越性の濫用阻止。欧州連合の機能に関する条約第102条に規定。

合併 - 欧州連合および欧州経済領域の域内において、ある一定の売上高を有する企業が関与する合併、買収、および合弁事業の統制。欧州連合の機能に関する条約第102条では欧州委員会に合併の統制について授権しており、また欧州連合理事会規則No 139/2004 EC[1]により規定されている。

政府補助 - 欧州連合加盟国による企業に対する直接・間接の助成制度に対する統制。欧州連合の機能に関する条約第107条以下、とくに第112条において規定。

とくに最後の点は欧州連合における競争法制の独特な特徴である。欧州連合は独立した加盟国で構成されているため、各加盟国内の企業を支援することが自由であることもあって、競争政策と欧州単一市場の創設は成功しないと見られていた。EU競争法を執行する権限を持つのは欧州委員会であり、運輸のような一部部門における政府補助はさまざまな部局が担当しているが、一般的に担当するのは競争総局である。2004年5月1日、EU競争法による取り締まりの機会を増やす目的で、反トラストに関する法制度の権限が各国の公正競争管轄庁や裁判所に分散化された。
歴史的背景

ジャン・モネロベール・シューマンなど、ヨーロッパの共同体の創設を唱えた政治家の最大の目的のひとつは単一市場を設立することであった。この目的の達成のため、競争法に関して適切で透明性のある公平な規範を策定しなければならなかった。そこでまず制定された法令が欧州経済共同体理事会規則No 17/62[2]である(現在では廃止されている)。規則No 17/62の作用は、当時EC法体系がまだ優位性を確立していない時代であり、Van Gend en Loos事件[3]以前の時代において発展し、定着されていった。ある加盟国の裁判所と別の加盟国の裁判所において起こりうる、EC競争法の解釈が異なることを避けるために、競争法に関する判断は欧州委員会に権限を集中させることになった。

1964年、欧州委員会は欧州経済共同体設立条約第85条(現在の欧州連合の機能に関する条約第101条)以下に関する最初の大きな決定を下した。これは西ドイツの家電メーカーであるグルンディヒはフランス子会社に対して排他的販売契約権を与えたことが不当であるとしたものである。Consten & Grundig事件[4]欧州司法裁判所は欧州委員会の決定を支持し、そのなかで潜在的影響を含む貿易に影響する手段の定義を拡張し、また欧州委員会が競争法に関する強制的権限を持つという地位を一般的なものとして確認した。このように2機関により欧州連合の機能に関する条約第101条および反競争事業協定は有効なものとして定着するようになった。ただ識者の中には、欧州委員会の独占対策(欧州連合の機能に関する条約第102条の権限)はほとんど効果がないと主張するものがいる[5]。これは個々の加盟国政府が国内でもとくに巨大な企業を訴追されることから守るために抵抗しているためである。欧州委員会はまた学術研究者からも批判を受けている。競争法分野の権威とされる学者のヴァレンタイン・コーラーは欧州委員会のEU競争法の適用は厳格すぎるものであり、企業の活動力を阻害し、場合によっては消費者の利益や商品の質が蔑ろにされることもあると主張している。

それらの規定は1980年代半ばまでは十分に機能していたが、時間が経過するにつれてヨーロッパ経済の規模が着実に成長し、競争阻害や市場活動が複雑化したこともあって、ついには欧州委員会は市場競争の確保のために対処ができなくなっていくということが判明してきた[6]。競争総局に権限が集中していることは各国の公正競争管轄庁の急速な成長と高度化のなかでその意義が失われつつあり、また手続きや法解釈、経済分析の点でヨーロッパ内の裁判所からの批判が増大していた[7]。また陳腐化していた規則No 17/62の改定の理由として将来の拡大があり、加盟国数は2004年までに25、2007年までに27に増えることになっていた。そのうえ中東欧地域の経済体制の転換の進展状況も考えると、すでに能力の限界を超えていた欧州委員会にさらに対処案件の増加がのしかかることが予想されていた。

これらの状況に対して欧州委員会は規制の近代化 (Modernisation Regulation) と呼ばれる、競争法の執行を分散化させる方針を固めた。欧州連合理事会規則No 1/2003[8]により、欧州共同体設立条約第81条・第82条(現在の欧州連合の機能に関する条約第101条・第102条)の執行の中心部分について加盟国の公正競争管轄庁や国内裁判所に移管することとなった。法令執行の分散化は他のEC法ではすでに行われていたものだったが、規則No 1/2003によってついに競争法分野でも分散化が行われることになった。ただ欧州委員会はなおも法令執行の重要な役割を残しており、欧州競争ネットワークの新設でその調整にあたっている。このネットワークは各国の担当庁と欧州委員会で構成されており、各国の公正競争管轄庁間での情報の共有や制度の一致・統合の確保を図るものである。当時の欧州委員会競争担当委員のマリオ・モンティはこの規則について、欧州共同体設立条約第81条、第82条の執行に革命を起こすものだとして歓迎した。2004年5月以降、すべての加盟国の公正競争管轄庁と国内裁判所は欧州共同体設立条約の競争規定の完全に適用する権限を得た。経済協力開発機構 (OECD) は2005年の報告書で、近代化の努力は未来においても有益であると賞賛し、分散化によりリソースが適切に用いられることで競争総局は複雑で共同体全体での調査に集中することができるようになったとしている。しかしごく最近の経済発展で新たな規定の有効性に対する疑念が上がっている。たとえば2006年12月20日に欧州委員会は加盟国政府の強硬な反対を受けて、フランス電力とドイツのE.ONのエネルギー最大手の切り離しを公然と撤回した。また現在係争中であるものとしてE.ONとエンデサの合併に関するものがあり、この件で欧州委員会は資本の移動の自由を適用しようとしたが、スペイン政府は国益の保護を断固として唱えた。各国の公正競争管轄庁はEC競争法の下で自国の最大手企業と争うことに前向きであるか、あるいは自国の保護に走るのかということが注目されている。
談合とカルテル スコットランド啓蒙主義の哲学者アダム・スミスは早期にカルテルを批判していた。

EU法体系においてカルテルは欧州連合の機能に関する条約第101条において禁止されている。この第101条は2つの段落にわたって競争法の対象を事業または事業体 (undertaking) の協定という用語を使って示している。この事業体という用語は、ほぼすべての人が経済活動をおこなってはいるが[9]労働者はその性質上、事業体とは経済的あるいは商業的に反対の位置で独立した活動を行う[10]ため、経済活動を行う者から除外するために用いられており、同様に社会の利益のため行政が責任を負う公共事業に従事する公務員も除外されている[11]。事業体による事業とは協約で結ばれ協調行動を進め、あるいは連帯して決定を行うものである。アメリカの反トラスト法と同様に[12]、このことは取引や契約のようなもの、あるいは当事者間の意見の一致といったものとまったく同じなのである。そのため、納入業者に対して契約に暗黙の了解を含める小売業者への出荷をさせないように指示を送るような文書あるいは口頭での取り決めといった、強い結託に基づく行為はすべて事業に含まれるのである[13]。欧州連合の機能に関する条約第101条1項ではこのことについて次の用語を用いて禁止している。

all agreements between undertakings, decisions by associations of undertakings and concerted practices which may affect trade between member states and which have as their object or effect the prevention, restriction or distortion of competition within the common market.

(日本語訳)事業間の合意のすべて、事業連合体の決定および協定された取り扱いであって、加盟国間における貿易に影響を与え、それらの目的または効果として共同市場内における競争を阻害し、制限しまたは不公平な取扱い[14]

ここでいう協定には、小売業者同士での間のもののような水平的なものと、納入業者と小売業者での間のもののような垂直的なものがあり、欧州連合の領域内ではこのようなカルテル行為を違法としている。欧州連合の機能に関する条約第101条は、企業が正式な文書や協議で合意をしていなくとも、同時に価格を上下させるような非公式協定(いわゆる紳士協定)の締結および協調行動をカルテル行為に含まれるという解釈がなされている。ところが、同時的な価格上昇はそれ自体が協調行動であるということを示すものにはなりえず、むしろ関連する企業が他社の動きは共通市場内における通常の競争行動であると認識している証拠となる。この後半部分の認識について、協定を構成するという主観的要件としては理論上必要なものでない。協定に関連する限りにおいて、たとえ企業が違法性を認識していなくとも、あるいは競争を阻害するという意図を持たなくとも、競争を阻害したという事実のみが違法性を構成するのに必要な要件となるのである。

欧州連合の機能に関する条約第101条が適用されない事例としては3つの類型が挙げられる。まず、第101条3項では事業者の行為が消費者にとって利益になるものである場合を規定しており、たとえば当該分野におけるすべての競争を制限しない限りにおいては、技術的進歩を促進するような行為は違法とされない。だが原則として欧州委員会がこの例外規定を認定することはほとんどなく、この規定を扱えるような新たな仕組みについて検討が進められている。つぎに、欧州委員会は販売価格の修正を除いた重要性の低い協定について第101条の対象外としている。これは当該分野に関連する市場における占有率が10%に満たないような小規模の事業者による協定に対して適用している。しかし後述する第102条と同様に、対象となる市場の画定は重要なものではあるが解決が非常に困難な問題である。最後に、欧州委員会は協定の趣旨ごとに集団的な適用免除を行っている。以上について、適用除外に関して許容される行為、禁止される行為をまとめた一覧に記載がなされている。
優越性と独占

リスボン条約発効後は、欧州連合の機能に関する条約第102条は市場優越性を持つ事業体がその地位を濫用し、消費者に損害を与えることを防ぐことが目的となっている。規定は次の通り。

Any abuse by one or more undertakings of a dominant position within the common market or in a substantial part of it shall be prohibited as incompatible with the common market insofar as it may affect trade between Member States.

1または複数の事業が共同市場またはその本質的部分において優越的地位を濫用することは、加盟国間の貿易に適用する限りにおいて、共同市場と矛盾するものとして禁止する。[14]

これはすなわち以下の行為を意味する。
directly or indirectly imposing unfair purchase or selling prices or other unfair trading conditions;
(訳)直接または間接に不公平な売買価格そのほか不公平な取引条件を課す;

limiting production, markets or technical development to the prejudice of consumers;
(訳)消費者の不利に生産、市場または技術革新を制限する;

applying dissimilar conditions to equivalent transactions with other trading parties, thereby placing them at a competitive disadvantage;
(訳)他の取引当事者と同じ事業に異なった条件を適用し、それによって競争上不利益にする;

making the conclusion of contracts subject to acceptance by the other parties of supplementary obligations which, by their nature or according to commercial usage, have no connection with the subject of such contracts.
(訳)その性質または商慣習によると、契約の内容と関係のない付随的義務を相手方に受け入れさせるために契約を結ぶ[14]

最初に、ある企業が市場において優越的地位を持つかどうか、あるいは競争相手、取引相手、最終的には消費者に対してそれぞれ不当な行為をしているかどうかを判定する必要がある[15]。EU法の考え方では、市場占有率が非常に大きいということは、ある企業が支配的であると推測され[16]、またその推論は普遍的ではなく、覆しうるものでもある[17]。ある企業が支配的地位にあるとすれば、それは市場において39.7%超[18]の占有率を持つからであり、そのためその企業は自らの行為により共通市場での競争を阻害させてはならないという特別な義務を負うことになる[19]。談合行為と同様に、占有率は問題になっている企業や製品の市場におけるもので判断される。そのため独占が懸念される事例をまとめた一覧が閉鎖されることはめったにないものの[20]、不正行為が疑われる分野はたいてい各国法により禁止されている。例示すると、支出額の上昇を認めないことで搬入港で製品を制限したり、技術革新を抑制することは不正とされる[21]。またある商品に別の商品とあわせて販売することも不正とされ、これは消費者の選択肢を狭め競合相手の販売経路を奪うこととされる。この事例に挙げられるのはマイクロソフトと欧州委員会の間での紛争があり[22]Microsoft WindowsプラットフォームにWindows Media Playerをバンドルしていたことに対して4億9700万ユーロの制裁金の支払いを命じた。また事業を行うにあたって、競争を起こすには欠かすことのできない便宜を取り計らわないことも不正となりうる。これについては製薬会社コマーシャル・ソルベンツが争った事例がある[23]。抗結核薬市場において競合相手を作ることになり、コマーシャル・ソルベンツはZoja社に対する原材料の供給継続を強制されることになった。Zoja社は抗結核薬市場で唯一の競争相手であり、そのため裁判所が供給継続を強制しなければ競争が排除されることになったという事例である。

価格設定に関する市場圧力の直接的な濫用の形態に価格搾取がある。ただ市場占有率の大きい企業がどのような点で搾取的であるかを証明することは難しく、また価格搾取に該当する事例は稀である。ある事例では、フランスの葬儀会社が搾取的価格を要求していたことが発覚したが、この件では他地域の葬儀会社の価格と比較しても適正なものであるとされた[24]。さらに悪辣なものに略奪的価格形成というものがある。これは製品の価格を大幅に下げることで小規模な企業の対処を不可能にして事業の撤退を迫ることである。シカゴ学派は略奪的価格形成について、もしそのようなことが可能ならば金融機関はそのような事業体に融資を行うだろうと考えており、実際には不可能なものであると唱えている。ところがフランステレコムSAと欧州委員会が争った事例では[25]ブロードバンド接続事業者に対して、サービスにかかる経費を下回る価格を設定していたため1035万ユーロの支払いを命じた。このような価格設定には競争相手の排除以外に自社に利益はなく[26]、好況の市場において最大の占有率を獲得するために資金が投じられるものであるとされた。価格設定に関する不正行為の類型には価格差別がある。この例として、自社を含む同じ市場において自社で、販売する砂糖を輸出する法人顧客に対して奨励金を支払うのに対して、アイルランドの顧客には支払わないことが挙げられる[27]

これまでに述べてきたように、市場画定は、第82条以下にある規定によって示される競争に関する事例の最も重要なものであることは間違いない。しかしながら、同時に最も複雑な分野であるということもできる。


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