機関_(機械)
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メルセデス車のV6内燃機関

機関(きかん)は、ある形態のエネルギーを力学的運動力学的エネルギー)に変換するために設計された機械である[1][2]。エンジン(: engine)またはモーター(: motor)とも呼ばれる。内燃機関蒸気機関外燃機関)などの熱機関は、燃料燃焼させてを作り出し、この熱から仕事として力学的エネルギーを取り出す。電動機は電気エネルギーを機械的運動へと変換する。空気機関圧縮空気の圧力エネルギー(エンタルピー)を使い、ぜんまい仕掛けのおもちゃなどのぜんまい仕掛け弾性歪エネルギーを回転運動や直線運動へ変換する。生物系において、筋肉中のミオシンのような分子モーター化学エネルギーを用いて、骨格の力学的な運動を作り出す。
用語

日本語のエンジンは英語由来の外来語である。英語の「engine」という用語は古フランス語の「engin」、ラテン語の「ingenium」に由来する。カタパルトトレビュシェット破城槌といった産業革命前の戦争兵器(攻城兵器)は英語で「siege engine」と呼ばれており、それらをどのように建造するかという知識はしばしば軍事機密として扱われた。産業革命期に発明されたほとんどの機械装置はエンジンと呼ばれる。蒸気機関(steam engine)が顕著な例である。

現代的用法では、英語の「engine」という用語は典型的には、蒸気機関や内燃機関のように、トルクあるいは(大抵は推力の形態で)直線力を与えることによって力学的仕事を行うために燃料を燃焼ないしは別の方法で消費する装置を言い表わす。トルクを与えるエンジンの例は馴染み深い自動車ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの他、ターボシャフトエンジンがある。推力を生み出すエンジンの例はターボファンロケットである。

内燃機関が発明された時、英語の「motor」は当初それを蒸気機関と区別するために使用されていた。当時蒸気機関は、機関車や蒸気ローラーといったその他の乗り物の動力として広く使用されていた。「Motor」と「engine」は後に日常会話では区別せずに使われるようになった。しかしながら、厳密には、2つの単語は異なる意味を持つ。「Engine」は燃料を燃焼ないしは別の方法で消費してその化学組成を変化させる装置であるのに対して、「motor」は電気空気圧、液圧によって駆動する装置であり、そのエネルギー源の化学的組成を変化させない[3]。しかしながら、高出力模型ロケットでは、燃料を消費するにもかかわらずロケットモーターという用語が使われる。

熱機関は「原動機」としても機能する。原動機とは流体の流れあるいは圧力の変化を力学的エネルギーへと転換する構成要素である[4]。内燃機関によって駆動される自動車は様々なモーターおよびポンプを利用することができるが、結局のところはそういった全ての装置はエンジンから動力を得ている。もう一つの見方は、モーターは外部源から動力を受け取り、次にそれを力学的エネルギーへ変換するのに対して、エンジンは圧力から動力を作り出している点である(圧力は燃焼あるいはその他の化学反応の爆発力から直接的に、または空気、水、蒸気といったその他の物質への何らかの力から二次的に得られる)[5]

熱エネルギーを運動へと変換する装置は通常単に「engine」と呼ばれる[6]
歴史

注:子節「産業革命」以降は、熱機関にかかる記載が中心となっており、それ以外に分類される機関についても記載されるべきではあるが未記載の状況である。
古代

槌矛てこの例)といった単純機械先史時代のものである。人力畜力水力浮力、また蒸気動力でさえも用いるより複雑な機関は古代に遡る。キャプスタン、ウインドラス(どちらも巻き揚げ機の一種)、踏み車といったロープ滑車滑車装置を用いる単純な機関の使用には人力が必要であった。この動力は大抵力は増加され、速さは減速されて伝達される。これらは古代ギリシャにおいてクレーンや運搬で用いられ、古代ローマにおいて鉱山水ポンプ攻城兵器で用いられた。ウィトルウィウスフロンティヌス大プリニウスを含む当時の著述家らはこれらの機関をありふれたものとして扱っていることから、それらの発明はより古いと考えられる。紀元1世紀までには、それ以前の時代には人力で駆動されていたものと類似した機械を駆動させるために、粉砕機と共にウシウマが使われていた。

ストラボンによれば、水駆動の粉ひき器は紀元前1世紀中にミトリダテの王国のカベリアに建造された。粉ひき器への水車の利用は続く数世紀にもわたってローマ帝国の至る所に広まった。あるものは非常に複雑で、水量を維持し水を引くために水道橋ダム水門と、回転の広がりを制御するための木製および金属製の歯車機構を備えていた。アンティキティラ島の機械といったより洗練された小型の装置は、暦として機能するためや天文学的出来事を予測するために複雑な歯車とダイアルを用いた。4世紀のアウソニウスによる詩におい、アウソニウスは水によって駆動する石切のこぎりについて言及している。アレクサンドリアのヘロンは1世紀にアイオロスの球自動販売機を含むこういったおよび蒸気駆動の多くの機械を発明したとされている。しばしばこれらの機械は、動く祭壇や寺院の自動扉といった礼拝と関連していた。
中世

中世のイスラム教徒技術者は、粉ひき機と揚水機械に歯車を利用し、水車と揚水機械に追加の駆動力を与えるためにの水力源としてダムを用いた[7]中世イスラム世界では、こういった進歩により、それ以前は肉体労働によって行われていた多くの工業用業務の機械化が可能となった。

1206年、アル=ジャザリーは揚水機械のためにクランク-コネクティングロッド機構を利用した。初歩的な蒸気タービン装置は1551年にタキ=アルジン[8]によって、1629年にジョヴァンニ・ブランカ[9]によって記述された[10]

13世紀、固体ロケットモーターが中国で発明された。火薬によって駆動するこの最も単純な内燃機関は持続する駆動力を産むことはできなかったが、戦闘において高速で敵に向かう推進兵器のためや花火のために有用であった。発明後、この発明はヨーロッパ中に広まった。
産業革命1788年のボールトン・アンド・ワットの機関

ワットの蒸気機関は、部分的な真空の助けによりピストンを駆動させるために大気圧より少し上の圧力の蒸気を利用する最初の蒸気機関であった。1712年のニューコメンの蒸気機関の設計を改良し1763年から1775年までの間に散発的に発展したワットの蒸気機関は、蒸気機関の発展における大きな一歩であった。燃料効率が劇的に向上したジェームズ・ワットの設計は蒸気機関の代名詞となった。これにはワットのビジネスパートナーであったマシュー・ボールトンも少なからず貢献した。ワットの蒸気機関により、水力が利用できなかった土地において以前では想像できない規模の効率的な半自動化された工場が急速に発展した。後の開発により、蒸気機関車鉄道輸送の大幅な拡大が起こった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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