機関紙
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戦地でソ連機関紙「プラウダ」を読むウラジミール・コピック(1937年)

機関紙(きかんし)とは、政党や各種団体などの機関(主に執行機関)が組織およびその見解等の広報・宣伝、会員や同じ階層に向けた情報交換などのため、定期的に発行する新聞である。同種の構造を持つ雑誌形態の出版物は「機関誌」と呼ばれる。
細分類

公的機関が公民に公表する目的の機関紙は公報、専ら部外者に向けられた告知集は広報といい、現代では狭義の機関紙とは区別されることもある。

公報

回覧板


広報(紙誌)

社内報

機内誌

車内誌


会報

学級新聞


概説

広く一般に向けて発行され、報道機関として不偏不党・中立が求められがちな新聞(狭義の新聞)と違い、特定の団体がその目的に沿った形で発行する新聞である。機関が発行するため「機関紙」と呼ばれる。単に広く社会の出来事を報道することが期待される狭義の新聞と比べ、何らかの社会的・政治的目的を持って発行されているか、団体の活動範囲の中の出来事を報じるもので、団体によってその趣旨は様々である。

現代では、政党・政治団体・職能団体・労働組合・業界団体・宗教団体・社会運動団体や国家機関(政府・軍隊など)が発行していることが多い。
組織論と機関紙

ロシア革命の指導者ウラジーミル・レーニン1902年、自著「なにをなすべきか?」の中で労働者の手による「全国的政治新聞」の発行の重要性を説き、機関紙が「暴露」と「扇動」のみならず、革命組織を全国的に作り上げる「集団的組織者」であるとした。新聞は、集団的宣伝者および集団的煽動者であるだけでなくまた集団的組織者でもある。新聞は建築中の建物の回りに組まれる足場に喩えることができる。

足場とは建築の輪郭をしるし、各作業員間の連絡を容易にし、組織的な労働によって成し遂げられた共同の成果を見渡すのを助けるものであり、すなわち新聞を制作して配達を終えるまでの一連の流れを秘密裏に完成できれば、革命は半分達成されたようなものだからである。この新聞(機関紙)活動を中心とした党建設論は、レーニン主義を理論とする各国の政党や団体に引き継がれている他、レーニン主義を標榜しない団体でも経験則的に熟知している場合があり、大衆運動の場では機関紙が重要視される場合がある。
類型

宗教団体が機関紙部署独自の建物を持っている例。(東京・信濃町)政党の機関紙部署と関連会社の印刷工場のみが入るビルの例。(東京・千駄ヶ谷)

機関紙はその形態が様々であり、いくつかのパターンに分類できる。
組織の種類

あらゆる種類・分野の組織が機関紙を発行している。機関紙により同時に構成員間の理念の共有や組織の団結をはかろうとするものでもある。

政党
議員を抱える政治団体である政党は、自身の政策や議会報告を行う必然性があり、ほぼ全ての政党が何らかの形で機関紙を発行している。旧「共産主義」諸国の支配政党機関紙は、党の主張・宣伝を伝播する目的があった。

政治団体
特定の政治体制を志向する性格から、他の分野と比べても機関紙が重視され、執行部の運動方針・声明、団体の決定事項、現状課題の報告などが掲載される。また、支持者向けには政治思想を前面に出さないものもある。

社会団体
各分野の社会団体は、それぞれの活動報告などが掲載される。

宗教団体
それぞれの宗教の教義・教理を伝道する目的がある。また団体運営上の方針や祭礼などの行事案内・報告が行われる。ただし、一部団体の広く配布する機関紙では、必ずしも教義・教理を伝道する内容となっていないものもある。

経済団体
農業協同組合や企業団体・同業者団体などが当該業界の動向や団体の報告などが掲載される。

労働組合
単位組合のもの、ナショナルセンター発行のものがある。当該労働者の改善要求や運動方針・活動報告が掲載される。要求による団結が原則のため、記事の主体性が強い。

国・政府軍隊・公的機関
それぞれの国により、公的機関が発行する機関紙。

趣味組織
活動報告や当該趣味に関する記事がある。機関誌が多く、機関紙(新聞)形態は少ない。
発行所

内部機関
組織内部の機関・担当部署が、直接編集・発行に携わる形態。「
官報」(国立印刷局)、「しんぶん赤旗」(日本共産党中央委員会赤旗編集局)など

外部の別組織
組織外部の会社や団体が、当該組織の路線に沿って編集・発行する形態。「人民日報」(中国共産党、人民日報社)、「朝鮮新報」(在日本朝鮮人総聯合会、朝鮮新報社)、「日本農業新聞」(JAグループ、日本農業新聞社)など

なお、大東亜戦争太平洋戦争第二次世界大戦)後の日本では、政党・政治団体、宗教法人等が自ら発行する機関紙誌から得る収入(事業収入)は収益事業(営利事業)とみなされない限り法人税所得税を納める必要がないため、ほとんどの機関紙が内部機関により編集・発行されている。外部機関が発行する機関紙は、農業協同組合法改正により原則として株式会社合同会社の形態でなければ営利事業を営めなくなったJA傘下の日本農業新聞や、家庭連合(旧・統一教会)系で商業新聞の建前を取っている世界日報など、極めて限定されている。これに対し、明治の自由民権運動期から大東亜戦争までの間は、多くの政党・政治団体が外部機関によって機関紙を発行していて、立憲政友会中央新聞のように事実上の党営商業新聞を持っていたところもあった。詳細は「日本農業新聞#概要」および「中央新聞#歴史」を参照
発行形態「逐次刊行物#刊行頻度」も参照

日刊

毎日発行される。同じ職場のみでの配布を除き、配達するための体制をつくる必要がある。そのため、国や規模の大きい一部の政党・政治団体の機関紙などに限られる。

記事内容に適時性がある一方で、概ね購読料が高くなる。

官報」(日本国)、「ロシア新聞」(ロシア連邦)、「イズベスチヤ(ソ連政府)」「しんぶん赤旗」(日本共産党)、「人民日報」(中国共産党)、労働新聞朝鮮労働党)、「日本農業新聞」、(農業協同組合、農業界の業界紙としての性格も持つ)、「日刊動労千葉」(国鉄千葉動力車労働組合[1]など


週刊

1週間に1回発行される。

多くの大規模団体がこの形態で発行している。

「自由民主」(自由民主党)、「社会新報」(社会民主党)、「全国商工新聞」(全国商工団体連合会)、「新婦人しんぶん」(新日本婦人の会)など多数。


週に数回刊

1週間に2回以上5回未満発行される。

朝鮮新報」(在日本朝鮮人総聯合会)、「プラウダソ連共産党ロシア連邦共産党)」など


旬刊等

月に2?3回発行される。

「国民民主プレス」(国民民主党)、「消費者リポート」(日本消費者連盟)、「民医連新聞」(全日本民主医療機関連合会)など


月刊

月に1回発行される。

記事内容に適時性が保たれず、多くの組織がページ数を多くして保存性のある機関誌(雑誌)形態にしている。

適時性をあまり必要としないものに多い。

「赤十字新聞(赤十字NEWS)」(日本赤十字社)、「全労連新聞」(全国労働組合総連合)、「同朋新聞」(真宗大谷派)など


その他

年に4?6回程度発行されるものがある。

月刊以上に発行頻度を必要としない場合。年4回であれば「季刊」、6回であれば「隔月刊」と呼ばれる。但し「隔月刊」は題名に冠される事はない。

「JL NEWS」(日本発達障害福祉連盟)、「ADRA News」(アドラ・ジャパン)、「JARL NEWS」(日本アマチュア無線連盟)など


購読対象

会員限定
組織構成員でなければ購読できない機関紙。極めて小規模の組織は必然的にこの形態になる場合が多い。


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