機械化農業
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農業機械(のうぎょうきかい、: agricultural machinery)は、農機具のうち農業用の機械の総称[1]機械の一種であり、酪農業畜産業を含む農業の現場で、人にとって苦痛、困難、不可能な程度の重労働作業を補助、代行する。農機(のうき)と略される。
定義と分類
農機具と農業機械

農業生産での労働の技術的補助手段を総称して農機具という[1]。農機具は農業用の機械と広義の農具とに大別される(広義の農具はさらに金槌や鋸のように必ずしも用途が農業に限定されない一般道具と鍬や鎌のように主な用途が農業目的の農用道具(狭義の農具)に分けられる)[1]

道具としての農具との区別では、足踏み式脱穀機や畜力機はいずれも農業用の機械である<[1]

道具としての農具は、農作業の効率を高め労働力の軽減を可能にしているが、作業の大部分が人間の手中に残されているため、作業能率を高めるためには長年の経験が必要であり、熟練の度合いによって成果に大きな差異が生じる[1]。一方、農業機械は、人間の労働力を飛躍的に節約しつつ、作業自体を代替する性質があることから、ある程度習熟すれば整一な作業を能率的に遂行でき、長年の熟練や勘が必要となる点が大幅に少なくなる[1]

軽トラックはよく農業に利用されるが(農家では資材や機材、収穫物の運搬に使われる)、これらは一般には農業機械と見なされていない。野球場の整地やゴルフ場の管理にはよく、トラクターが用いられるが、トラクターは農業機械に分類される。

播種、農薬散布などに航空機を使用する例もあり、専用に開発された機種は農業機と呼ばれる。なお、農業生産での労働の技術的補助手段としての農機具は可動的資本財であり、建物や施設のような不可動的資本財とは区別される[1]詳細は「農業施設」を参照

機械は原動機、伝導機、作業機に大別することができるが、農業機械の場合、伝導機が独立した機械として存在することはほとんどない [1]。また、動力耕運機やトラクターのように原動機と作業機が結びついているもの(原動作業機)も多いため、原動機、作業機、原動作業機に分類される[1]。作業機には人力用、畜力用、動力用があるが、最も重要なものは動力用作業機である[1]

農業機械の種類は非常に多い。農業の形態が多様であり、農業の形態、季節によって農作業が多様であるため、農業機械もまた多様である

汎用的な農業機械 - トラクター

耕耘・整地に用いる農業機械 - プラウ(すき)、ハロー、ローラー、ロータリー耕耘機、代かき機、鎮圧機、均平機、うね立機、みぞ切り機

耕土・造成・改良に用いる農業機械 - 抜根機、心土破砕機、みぞ掘り機、モールドレイナ(暗渠せん孔機)、穴掘機、バックホー

施肥に用いる機 -マニュアスプレッダー(堆肥散布機)、スラリースプレッダー、ライムソーワー(石灰散布機)、プランタ(点播機)、施肥播種機

播種・移植に用いる農業機械 - 田植機、野菜移植機、トランスプランタ(移植機)、散播機

防除・管理に用いる農業機械 - 噴霧機、動力噴霧機、ミスト機、散粉機、動力散粉機、散粒機、動力散粒機、煙霧機、航空散布機ヘリコプター(航空防除)、土壌消毒機、刈払機、管理機、スピードスプレーヤー、凍霜害防除機、中耕除草機、シンナ(間引機)、動力ポンプ、スプリンクラー(潅水装置)

収穫に用いる農業機械 - バインダーコンバイン、野菜収穫機、モーアー、ヘイベーラー、ロールベーラー、ウィンドローワ、脱穀機、ビーンカッター(豆類収穫機)、とうもろこし収穫機、コーンシェラ、ばれいしょ収穫機、ビート収穫機、甘藷堀取り機、甘藷つる切り機、さとうきび収穫機、らっかせい収穫機、亜麻収穫機、たまねぎ堀取り機、栗用脱穀機、らっかせい脱穀機、摘採機、条桑刈取機、特用作物堀取り機、振動収穫機、ホップ摘花機

収穫物の乾燥と調製に用いる農業機械 - 乾燥機籾すり機選別機精米機、牧草乾燥機、鶏糞乾燥機、特用作物乾燥機、精穀機、ディスクモアー、モアーコンディショナー、テッダー、レーキ、フォレージハーベスター、ヘイベーラー、ヘイプレス、ロードワゴン、ヘイローダ、ベールローダー、飼料さい断機、フォレージブローワ、サイレージアンローダー、飼料粉砕機、フィードチョッパー、ルートカッター、飼料配合機、飼料成形機

家畜の管理に用いる農業機械 - 自動給餌機、搾乳機械、牛乳冷却機、給水機、温水機、尿散布機、畜舎清掃機、固液分離機、糞尿処理装置、保温機、エッグリフター、洗卵選別機、畜舎消毒機

育蚕に用いる農業機械 - 稚蚕共同飼育濕温調整装置、動力ざ桑機、稚蚕用自動飼育装置、壮蚕用自動飼育装置、条ばらい機、収けん機、まゆ毛羽取り機

蔬菜果樹園芸(畑作)に用いる農業機械 - マルチャ、磔耕栽培装置、ハウス暖房機、蔬菜洗浄機、深層施肥機、動力剪定機、ツリータワー、果樹園用ロータリーカッター、選果機、樹園地内運搬用機、管理機

に用いる農業機械 - 蒸し機、粗じゅう機、じゅうねん機、中じゅう機、精じゅう機

花卉特用作物に用いる農業機械 - 剪枝機、ラミー剥皮機、い草選別機、チューリップ選別機、らっかせい脱皮機

林業に用いる農業機械 - 刈払機チェーンソー、集材機

運搬搬送に用いる農業機械 - トレーラー、穀物用搬送機、フロントローダー

作物の種類による分類

汎用的な農業機械 -
トラクター耕耘機(歩行型トラクター)

水田稲作に用いる農業機械 - 代かき機、田植機水田除草機バインダーハーベスターコンバイン乾燥機籾すり機米選機精米機

蔬菜園芸(畑作)に用いる農業機械 - 播種機、接ぎ木ロボット、野菜移植機、管理機、野菜収穫機、ポテトハーベスター、てんさいハーベスター、キャロットハーベスター

酪農畜産に用いる農業機械 - マニュアスプレッダー、スラリースプレッダー、モーアー、ヘイベーラー、ロールベーラー

機械の形態による分類

乗用型機械 - 乗用型トラクター、乗用型田植機、乗用型コンバイン

歩行型機械 -
歩行型トラクター、歩行型管理機

定置機械 - 穀物乾燥機籾すり機、農用裁断機

携帯式機械 - 刈払機、動力摘採機、ヘッジトリマー、背負式動力噴霧機、背負式動力散粉機、チェーンソー

遠隔操作機械、無人走行機械 - 無線操縦式ヘリコプター、無線操縦式草刈り機

航空機 - 農業機

日本における法律上の定義

農業機械化促進法では、農業機械の定義はされていないが、「農機具」、「農業機械化」、「高性能農業機械」は定義されている。農業機械のなかには、車両の形態をしているものもある。道路を自走可能なものは、道路運送車両法道路交通法にいう軽車両、小型特殊自動車、大型特殊自動車に該当するが、保安基準が無いため公道を走行できないものもある。詳しくはこの記事の節「車両としての農業機械」を参照。
農機具
耕うん整地、は種、肥培管理、有害動植物の防除、家畜又は家きんの飼養管理、収穫、調製加工その他農作業(これに附随する作業を含む。以下同じ。)を効率的に行うために必要な機械器具(その附属品及び部品を含む。)
農業機械化
動力又は畜力を利用する優良な農機具を効果的に導入して農業の生産技術を高度化すること
高性能農業機械
農作業の効率化又は農作業における身体の負担の軽減に資する程度が著しく高く、かつ、農業経営の改善に寄与する農業機械
農業機械の歴史
農業機械の始まり

農具と農業機械との区別は厳密なものではなく、農具から農業機械への進歩は連続的な変化であった。それでも、18世紀の蒸気機関の発明、18世紀から19世紀にかけての産業革命が農業機械の発展に与えた影響は大きい。

ヨーロッパの農業では、早くから畜力(家畜の力)、水力風力を利用した農業機械が用いられ、改良されてきた。農業機械の発展は、農業経営の大規模化と表裏一体に進んだ。18世紀末ごろから脱穀機、刈取機がつくられるようになった。これらは当初、を動力として動作した。

蒸気機関が実用されるようになってから約50年が経った1849年には、アメリカ合衆国のアーチャンボールト(Archambault)が農用蒸気機関車を製作した。


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