横断歩道橋
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横断歩道橋(兵庫県佐用町交差点を取り囲むように設置されたエレベーター付き横断歩道橋(国道357号稲荷交差点、千葉県千葉市中央区)

横断歩道橋(おうだんほどうきょう)は、人道橋の一種で、車道または鉄道を跨ぐように架けられた歩行者自転車専用のである[1]。単に歩道橋とも呼ばれることもある[2]。横断歩道橋と地下横断歩道を合わせて「立体横断施設」と言う[1]
概要車椅子用エレベーターを装備した中国楼閣風の歩道橋(金山嶺橋

横断歩道橋は、交通量が特に多い道路を跨いで架けられる橋で、車両と歩行者との交通事故防止の観点から必要に応じて設置される交通安全施設である[3]

交通量が多く幅の広い道路では、歩行者が道路を横断する横断歩道を多数設定すると、交通信号機が複数必要になり、結果として渋滞が増加してしまう。信号によらず道路を横断できる横断歩道橋は、渋滞緩和の手段として設置されることが多い。また、周辺に幼稚園保育園小学校病院などがあり、交通弱者が多く横断する道路に、交通事故の予防手段として横断歩道橋が設置される場合もある。その他、駅前に大きな交差点や幹線道路が隣接しており、隣接する商業施設などとの間に上層階で連絡通路を設定できる場合、横断歩道橋と連絡通路を折衷したタイプのものが設置される場合もある。

しかし、横断歩道橋の設置により、橋脚や階段の存在が死角となって、車道側から歩行者が見えづらくなるなど、安全を妨げている事例がある[4]。また、景観との調和が問題となることがある[5]。これまで道路横断橋は画一的で景観的に問題が発生することもあったが、本来、歩道橋は自動車道路橋や鉄道橋に比べて荷重が小さいためデザインなど設計の自由度が高い構造物とされる[6]
土木構造物の区分

土木構造物としての横断歩道橋は、人道橋の一種である跨道橋に分類される[7]。人道橋は跨道橋、跨線橋、跨河川橋、その他(海上橋、側道橋[注 1]、公園橋など)に分類される[7]。跨道橋はさらに横断歩道橋、自転車等専用橋、ペデストリアンデッキなどに分類される[7]

なお、歩道橋は英語ではfootbridgeというが、footbridge(歩道橋)の名称をもつ橋には川に架けられているものや公園内にあるものもある[6]。日本でも横断歩道橋以外の人道橋に行政機関が「歩道橋」と命名しているものもある(例えば、本渡瀬戸歩道橋)。
欧米の歩道橋

歴史的な歩行者専用の人道橋としてはパリのセーヌ川に架けられた芸術橋(ポンデザール、Pont des Arts)などがある。

イギリスでは1850年ロンドンに歩道橋が完成した[7]

しかし、横断歩道橋はヨーロッパでは市街地の街並みに調和しないものと考えられており設置例は多くはない[5][9]。日本が交通渋滞緩和のために参考にしたとされる1960年ローマオリンピックの横断歩道橋もあくまでも五輪期間中の仮設構造物であった[10]
日本の歩道橋
歩道橋の設置

日本では安全性の観点から横断歩道橋が多く設置されている。日本の歩道橋は、道路から通常470 cm以上空けて建造されている。

歩行者の利用のみを考慮した階段状の物が主であったが、幅の狭いスロープをつけて自転車を押して渡れるようにした物、スロープのみの物もある[9]。現在設置されている横断歩道橋の大部分は交通事故が急増し始めた昭和40年代に建設されたもので、当時は通学途中の児童等の安全確保の為に重宝されたが、道路横断のための負担を通行者に多く強いるものであることから、バリアフリーの精神、交通弱者優先の精神に反する建造物であるともいえる[9]。このため一部ではエスカレーターエレベーターの設置も行われている[9]。歩行者に負担を強いるため、道路をそのまま横断してしまう人の数が増えているという事例もある[4]。なお、日本において歩道橋は道路交通法に特段定めのある道路施設ではなく、道路の横断に歩道橋の使用が義務となっているわけではない。また、歩道橋という呼称にもかかわらず、歩行者専用の道路標識(325の4)により交通規制されていない場合は、道路交通法上の歩行者専用道路には該当しない。したがって、自転車等の通行も可能である。写真の国道357号稲荷交差点のように各隅にエレベーターを設置し自転車の昇降を可能とし、歩行者のみでなく自転車による車道横断も排除した交差点も多い。

その他にも、少子高齢化によって児童の数が減少したり、学校の統廃合で横断歩道橋のある道が通学路から外れるなど、児童の交通量が減少したこと、従来技術的にできなかった信号機による細かな制御が可能となったこと、また景観を損ねることなどから[9]、老朽化を機会に撤去する自治体も増えてきている[4]昇開式歩道橋(茨城県日立市・水木歩道橋)

茨城県日立市国道245号にある水木歩道橋・河原子歩道橋は、同市内にある日立製作所で製造された大型の発電機などの輸送の際に障害にならないよう、昇開式可動橋となっている。なお、神奈川県川崎市川崎区国道132号にある四谷下町歩道橋も同構造だが、既に利用する工場はなく、可動用の設備は撤去されている。

道路法上は、「道路の付属物」として道路の一部という扱いになっており、横断される側の道路の管理者が建設・管理を行う。横断デッキ上に構造物が設置され、周辺施設と一体化している六本木ヒルズ正面の66プラザは例外的な存在である。

地域的に、自動車交通量が多い大都市やその周辺地域に多く設置されていて、都道府県別では東京都、愛知県、神奈川県、埼玉県、大阪府、兵庫県と三大都市圏が設置数の上位を占める[11]

同様の趣旨で作られたものとして地下横断歩道(地下道)がある。特に日本海側の雪国では路面のすべり防止や吹雪対策のために歩道橋に代えて横断地下道の設置が検討されることがある[12]。実際に、新潟県、富山県、石川県、福井県の4県に設置されている地下横断歩道の合計数は、同県の歩道橋の設置数よりも多く、2.6倍以上にあたる530カ所以上の地下横断歩道が設けられている[11]

静岡県榛原郡吉田町には、「歩道橋型の津波避難タワー」2基(道路上では全国初のもの)がある。平時は一般的な横断歩道橋として活用される[13]

歩道橋には柵が設けられているが、埼玉県行田市の行田市諏訪町歩道橋(忍城跡、諏訪神社、行田市役所付近)で、柵の隙間を抜けたことが原因とみられる1歳女児の転落事故が発生したことがある[2]
歩道橋の歴史

日本では昭和30年代の高度経済成長期においてモータリゼーションが進展し、自動車の保有台数が急増した。


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