標準モルエントロピー
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標準モルエントロピー(ひょうじゅんモルエントロピー、英語: standard molar entropy)とは、標準圧力における理想的あるいは仮想的な状態の、物質1モル当たりのエントロピーである。標準圧力 P° としては、1気圧が伝統的に用いられているが、1980年代以降に編纂されたデータ集には1バールすなわち 105 Pa を採用しているものもある。標準モルエントロピー S°m の値は温度に依存して変化するので、例えば 298 K における標準モルエントロピーであれば S°m, 298 や S°m(298 K) のように添え字か引き数で温度を表す。温度が明示されていない場合は、298.15 K すなわち 25 ℃ における値であることが多い。

熱力学第三法則により、純物質絶対零度における完全結晶のエントロピーは0であることから、物質の絶対エントロピーを求めることが可能となる。
標準モルエントロピーの算出
定圧モル熱容量より
純物質の固体と液体

純粋な固体を絶対零度から絶対温度 T まで加熱する場合を考える。相転移がこの温度範囲で起らなければ、温度 T、圧力 P における物質のモルエントロピーSm(T, P) は温度 T ' < T、圧力 P におけるこの固体の定圧モル熱容量 CP,m(solid; T ', P) と以下の関係がある[1]

S m ( T , P ) = S m ( 0 , P ) + ∫ 0 T C P , m ( solid ; T ′ , P ) T ′ d T ′ {\displaystyle S_{\text{m}}(T,P)=S_{\text{m}}(0,P)+\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P)}{T'}}dT'}

熱力学第三法則により、絶対零度における完全結晶のエントロピーは、任意の圧力 P において S(0, P) = 0 である。従って、絶対零度において完全結晶となり、かつ絶対零度から温度 T までの間に相転移がない固体の温度 T における標準モルエントロピーは以下の式で求められる。

S m ∘ ( solid ; T ) = ∫ 0 T C P , m ( solid ; T ′ , P ∘ ) T ′ d T ′ {\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{solid}};T)=\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'}

絶対零度から温度 T までの間に相転移が存在する場合は、相転移エントロピー変化 Δ trs S m = Δ trs H m T trs {\displaystyle \Delta _{\text{trs}}S_{\text{m}}={\frac {\Delta _{\text{trs}}H_{\text{m}}}{T_{\text{trs}}}}} を加算しなければならない。

S m ∘ ( solid ; T ) = ∫ 0 T C P , m ( solid ; T ′ , P ∘ ) T ′ d T ′ + Δ trs H m ( T trs , P ∘ ) T trs {\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{solid}};T)=\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'+{\frac {\Delta _{\text{trs}}H_{\text{m}}(T_{\text{trs}},P^{\circ })}{T_{\text{trs}}}}}

一般には、絶対零度から温度 T までの間に複数回の相転移が起こりうるので、一般式は

S m ∘ ( solid ; T ) = ∫ 0 T C P , m ( solid ; T ′ , P ∘ ) T ′ d T ′ + ∑ i T trs , i < T Δ trs H m ( T trs , i , P ∘ ) T trs , i {\displaystyle S_{\text{m}}^{\circ }({\text{solid}};T)=\int _{0}^{T}{\frac {C_{P,{\text{m}}}({\text{solid}};T',P^{\circ })}{T'}}dT'+\sum _{i}^{T_{{\text{trs}},i}<T}{\frac {\Delta _{\text{trs}}H_{\text{m}}(T_{{\text{trs}},i},P^{\circ })}{T_{{\text{trs}},i}}}}


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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