極渦(きょくうず、きょくか、英語: polar vortex)とは、北極・南極の両極上空にできる大規模な低気圧およびそれを取り囲む強風領域のこと[1][2][3]。周極渦(しゅうきょくか、しゅうきょくうず)[1]、ポーラーサイクロン (polar cyclone)[4]ともいう。成層圏や中間圏にみられ冬側の極域で発達し夏側の極域では反転する極渦(極夜渦(きょくやうず、polar night vortex)、成層圏極渦 (stratospheric polar vortex))と、対流圏の中層から上層に年間を通してみられる極渦(対流圏極渦 (tropospheric polar vortex))がある[1][2][3]。 両極の地表から対流圏下層は気圧が高い極高圧帯となっているが、上空では反対に等高度面で見て気圧が低くなり、低圧の領域を取り巻くように西風が吹く。この風は温度風の性質をもつ[1][2]。概ね500から600 hPa高度より上層に現れる[5][6]。 対流圏の極渦は、南北の温度差が大きくなる冬に最も強くなるが、両極で違いがある。南半球では南極点付近を中心としてほぼ円形となる。北半球では夏季は円形に近いが、冬季は円形が著しくゆがみ変動しており、典型的には中心がグリーンランドの西付近にずれ、オホーツク海の低圧領域が影響した形となる[1][3]。対流圏の極渦の範囲はふつう、上空の偏西風の中心部にあたる、等圧面天気図に現れるジオポテンシャル高度の等高度線で定義される。極渦の端はふつう緯度40 - 50度にある[3]。また極渦は渦位の低気圧性偏差[注 1]が大きく、極渦の縁を流れる極夜ジェット気流の付近が渦位勾配が最も大きいことから、渦位分布で極渦を検出することもある[7]。 北半球でゆがむのは、海陸分布や長大な山脈の影響により南半球よりも強くプラネタリー波が上空へ伝播し、偏西風が曲げられるため[1][2]。 対流圏の極渦の変形は波打ち(伸長し)、その配置によっては寒気が移動してきた地域が寒波に見舞われる[6]。 成層圏や中間圏では、季節の変化に伴い極域上空の気温が著しく変化することで風向きは逆転する。極夜となった冬側の極域では、オゾンの紫外線吸収による加熱がなくなって気温が著しく低下し、強い極渦となる。反対に、夏側の極域上空には中低緯度上空よりも高温の領域ができ、極渦は消滅して高気圧になり、風向は逆転して東風が吹く[1][2][8][3][9]。 成層圏や中間圏では極渦内でこれを取り囲む強い西風の領域である極夜ジェット気流 (polar night jet stream)が吹く。極夜ジェット気流は冬側の半球に生じ、夏側では東風のジェットが見られる。成層圏の極渦の端は緯度50度付近、極夜ジェット気流の中心は緯度60度より高緯度にある。成層圏極渦は下部から上部へと大きくなる形をしており、中間圏の極夜ジェット気流の中心は緯度40度付近にある[8][3]。
成層圏と対流圏の極渦