植物ウイルス
[Wikipedia|▼Menu]
トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)

植物ウイルス(しょくぶつウイルス、: plant virus)とは植物感染するウイルスのことである。他のすべてのウイルス同様、植物ウイルスは偏性細胞内寄生体、すなわち宿主なしで増殖するための分子機構をもたない寄生体である。植物ウイルスは高等植物に対する病原となる。この記事はすべての植物ウイルスを一覧にすることは意図しておらず、いくつかの重要なウイルスとそれらの植物分子生物学における用途について記述している。
概説

植物ウイルスは動物ウイルスほど良く理解されてはいないが、一つの植物ウイルスは象徴的なものになっている。初めてウイルスとして発見されたのがタバコモザイクウイルス(TMV)である(以下参照)。このウイルスを含め植物ウイルスは世界の年間作物収穫高において推定US600億ドルの損失の原因となっている。植物ウイルスは73のと49のに分類される。しかしながら、これらの数字は栽培植物にのみ関係するものであり、これはすべての植物種のうちほんの一部のみを代表するに過ぎない。野生植物に感染するウイルスに対する研究は未だ乏しいが、野生植物とウイルスの間のそのような相互作用が宿主の病気を引き起こすようには見えない、ということをほとんど圧倒的多数にある研究が示している[1]

ある植物から他の植物へ、またはある植物細胞から他の植物細胞へ移動するために、植物ウイルスは動物ウイルスとは大抵の場合違う戦略を取らなければならない。植物は動かないため、植物から植物への伝染はたいてい昆虫などの病原菌媒介生物を必要とする。植物細胞は硬い細胞壁に囲まれているため、原形質連絡を介した輸送がウイルス粒子が植物細胞の間を移動するための経路として好まれている。おそらく植物は原形質連絡を通してmRNAを運ぶ仕組みに特化していて、これらの仕組みは、細胞から細胞へ広がっていくためにRNAウイルスによって使われていたと考えられている[2]

ウイルス感染に対する植物の防御は、他の手段に加えてdsRNAに応じてsiRNAを使用することを含んでいる[3]。たいていの植物ウイルスはこの反応を抑えるためのタンパク質をコードする[4]。植物は損傷を踏まえて原形質連絡を通した輸送をも抑制する[2]
歴史

病気を引き起こす植物ウイルスの発見はしばしば、アドルフ・エドゥアルト・マイヤーによるものだとされる。彼はオランダで働きながら、タバコの葉から得られたタバコモザイク病の樹液が健康な植物に注入された時にタバコモザイク病の症候を生み出す、ということを明らかにした。しかしながら樹液を加熱したとき、樹液のもつ感染症は損なわれた。そこで彼は原因である病原体は細菌だと考えた。けれども彼は多くの細菌をより広く注入してみたものの、モザイクの症候を発病させることに失敗した。

1898年にオランダの工科大学で微生物学の教授をしていたマルティヌス・ベイエリンクはウイルスは微小なものだという考えを述べ、また「モザイク病」はシャンベラン濾過器を通してもなお伝染性のままであることを明らかにした。細菌の微生物ならば濾過器によって分離という点で、このことは微生物と対照的である。ベイエリンクが伝染性の濾液を"contagium vivum fluidum"として言及した。このようにして"virus"という新語が生まれたのである。

ウイルスという概念の最初の発見以降、顕微鏡による観察が無益なものだとわかったとはいっても、他の知られているすべての伝染型のウイルスの病気を明らかにする必要が出てきた。1939年、ホームズ (Francis Oliver Holmes) が129の植物ウイルスの分類表を発表した。これは拡張され、1999年には、植物ウイルスは977の正式に認められたものといくつかの暫定的なものとに分類された。

TMVの浄化(結晶化)はウェンデル・スタンリーによって初めて行われた。彼はRNAが伝染性の物質であるということをはっきりさせることはなかったが、1935年に自身の発見を出版した。しかしながら、彼はノーベル化学賞を1946年に受賞した。1950年代に二つの研究室が同時に発見した事実によってTMVの浄化されたRNAが伝染性であることが示され、この発見が議論を強化することとなった。そのRNAが新しい伝染性の粒子の生産のためのコードをするための遺伝情報を運ぶ。

もっと最近のウイルス研究では、ウイルスがどのようにして増殖し、移動し、植物に感染するのかをはっきりさせることに対して特別な興味が持たれている。この研究において、遺伝学と植物ウイルスのゲノムの分子生物学を理解することに焦点が当てられている。ウイルス遺伝学とタンパク質の機能を理解することは、バイオテクノロジーを利用する会社による商業利用の可能性を模索するために使われてきた。特に、ウイルスの起源となった配列は、抵抗の新しい形態を理解するために使われてきた。人間が植物ウイルスを操ることを可能にする技術における最近の発達は、植物に含まれる付加価値のあるタンパク質の生産に対して、新たな戦略を与え得る。
構造

ウイルスは極めて小さく、電子顕微鏡を通してはじめて観察し得る。ウイルスの構造はウイルスのゲノムを囲む、タンパク質の外皮によって出来上がっている。ウイルスの粒子の集まりは自発的に発生する。

知られている植物ウイルスの50%以上が桿状(屈曲していて硬い棒のような形状)である。粒子の長さは通常ゲノムに依存するが、たいていは長さ300~500nm直径15~20nmである。円盤を形作る円の円周付近にタンパク質のサブユニットが置かれる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:29 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef