植物の性
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エキノプシス属の一種(Echinopsis spachiana)の花。雄しべ雌しべがそれぞれ見えている。

植物の性(しょくぶつのせい)では、植物界の多様な有性生殖の様式について解説する。
概要

動物における性とは異なり、植物では、同一の個体中、または一つの花の中にオス、メスが存在することも珍しくなく、植物の個体は繁殖相手を「誘う」機能も「選ぶ」機能も同時に有している[1]

種子植物被子植物裸子植物)の繁殖器官であるは非常に多様な形態を示し、あらゆる生物の繁殖器官の中で最も多様な繁殖方法をもっている[2]カール・フォン・リンネは、花の構造をもとに植物を分類する体系を提唱した。その後 Sprengel(英語版) (1793) は植物の性を研究し、生物と非生物の相互作用に関係する受粉の過程を初めて解明し、「自然の秘密を解き明かした」と公言した (チャールズ・ダーウィン自然選択に関する仮説でも、この研究が活用された)。

また植物には、花をつける種子植物だけでなく、緑藻植物マゴケ植物 (蘚類)、ゼニゴケ植物 (苔類), ツノゴケ植物シダ植物など花を咲かせないものも多くある。しかしこれらの植物でも、造精器や造卵器など有性生殖を行う器官を持ち、有性的な繁殖を行なっている。
被子植物における有性生殖花の構造セイヨウヒイラギは雌雄異株である。(写真上)雄花を持つ個体。(写真右上)雄花の拡大。花粉を持つ雄しべが見えている。雌しべは矮小化している。(写真下)雌花を持つ個体。(写真右下)雌花の拡大。雌しべと、花粉を持たない雄しべが見えている。顕花植物の分類例。雌雄両全株(Hermaphrodite)、雌雄異花同株(monoecious)と雌雄異株(Dioecy)
花の構造と種類

被子植物の花は、有性生殖を行う器官であると同時に、花粉送粉者を誘引する機能を持つ器官である[3]。最も一般的な花の構造は、外側から萼片花弁雄しべ雌しべが輪生する[4]が、それらの数や形、機能は種によって様々である。

被子植物が有性繁殖を行うために用いる繁殖器官やその生殖システムは非常に複雑であるため、植物学者と進化生物学者はその構造や生殖戦略についての膨大な用語を使用することとなった。Dellaporta and Calderon-Urrea (1993) では、被子植物の性についての多様な用語をリストアップして定義した[5]。その中でも、植物体上に雌雄の器官がどう配置されているかによって、花のタイプを大別したものを性型(Sex type)という[6]以下に、花の種類と主な性型を示す。ただし無性花など有性生殖を行わないものは除く。

花のタイプ

両性花(bisexual flowers, perfect flowers) - 雄性器官と雌性器官を両方もつ花。1つの花に雄しべ雌しべ子房をもつ。ユリ科バラ科など多くの花がこの両性花となる。また、完全花という場合もあるが、これは雄しべ、雌しべに加え、花弁と萼をもつ両性花のことを指す。

単性花(unisexual flowers) - 雄性器官、または雌性器官のどちらかのみをもつ花のこと。

性型

雌雄両全株 (Hermaphrodite) - 両性花のみをもつ植物のこと。

雌雄異花同株 (Monoecious) - 雌雄両方の単性花をひとつの個体群にもつ植物のこと。雌雄同株ともいう。雌雄異花同株の植物の例としては、トウモロコシ[7]カバノキマツイチジク属のほとんどの種[8]などがあげられる。

雌雄異株 (Dioecious) - 雌雄どちらかの単性花のみをもつ植物集団のこと。植物の各個体は雄性器官、または雌性器官のみを有しており、ひとつの個体に雌雄の器官をつけていることはない[9]

雌性型(Gynoecious) - 雌性器官を持つ個体。種子を生産できるが、花粉は生産できない。

雄性型(Androecious) - 雄性器官を持つ個体。花粉を生産できるが、種子を生産できない。


雌雄混株 (Subdioecious) - 基本的には雌雄異株植物として振舞うが、時として雌花に雄性器官が発生する(あるいは逆に、雄花に雌性器官が発生する)ことで、雌雄同株の状態となる植物[10]

ある調査では、調査対象とされた約12万種の被子植物のうち11%が、厳密に雌雄異花同株、または雌雄異株となることが判明した[11]。その調査において、雌性型や雄性型を含む性的二型の中間的な構造は、被子植物のうち7%で確認された[11]。また同じ調査において、被子植物の10%の種が単性花と両性花を同時に持っていることが明らかとなった[11]
雄性器官と雌性器官

被子植物の花では、雄しべとその花粉が雄性器官、雌しべやそこに含まれる胚珠などが雌性器官とされる。被子植物においては、花粉を別の花の雌しべに受粉させ、花粉管を伸ばして精細胞を胚珠に受精させることで、有性生殖の一連の流れが完了する。

花弁は、昆虫などの送粉者を誘引し、受粉率を高める機能があることから、雌性器官と考えられてきた。しかし花弁が雄性器官か雌性器官かという問いが提唱され、1980年代頃から議論されるようになった[1]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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