森はなに色
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森はなに色(もりはなにいろ)は、粕谷紀子による漫画作品。

週刊セブンティーン1980年48号から1982年42号まで連載され、1983年から1984年にかけてセブンティーンコミックスから全7巻の単行本として発売された。主に横浜を、時に長野瀬戸内海を舞台に、幼い頃からの親友同士であった2人の男性が、1つ年下の女性を同時に好きになってしまったことから始まる10年間の愛を描いた恋愛マンガである。
概要

横浜の高校2年生の幼なじみ、カイとシュンが、1つ年下の女子高校生、裕子に同時に恋をしたことで物語は始まる[1]。シュンと裕子、そしてカイと裕子の恋愛関係と、カイとシュンの友情関係からなる三角関係は互いを思いやる気持ちと自己保身の気持ちが重なり合ってやがて泥沼化[2]し、裕子の妊娠発覚で一度破綻[3]する。幾度かのすれ違いののち、シュンと裕子が結婚し、カイが彼らを支える形で関係は修復する[4]が、裕子の出産後、産まれた子への望外の喜びからシュンが事故死[5]したことで、関係は裕子の育児をカイが支える形に変化する。シュンの死から3年後、彼らの下にカイの指導教授の娘、貴美子が登場[5]し、今度はカイと裕子の恋愛含みの友情関係[5]と、カイに憧れる貴美子とカイの恋愛関係[6]での三角関係が再び発生し、再び泥沼化[6]する。しかし、以前の経験から問題は解決[7]し、その6年後の、カイと裕子が出会って10年後に、2人は瀬戸内海の離島で結婚[7]する。
あらすじ
1巻

1980年、横浜。同じ城南高校2年生の甲斐照己(カイ)と港俊輔(シュン)は、かたや医学部志望の優等生、かたやリーゼントに髪を固めた不良でありながら、周囲も認める、幼い頃からの親友同士である。ある秋の日の夕方、2人は、母娘喧嘩に出くわす。シュンが喧嘩を止めた後の母親の手当にタオルを貸したカイは、喧嘩をしていた娘のほうの如月裕子に一目惚れをしてしまう。奥手で女性とまともに喋ることもできないカイのために、シュンが裕子に話しかけ、それから2人はほぼ毎日、裕子のアルバイト先である"レディードーナツ"に通うことになる。

ある日、カイの都合でシュンは1人だけでドーナツ店に向かい、そこで暴走族に絡まれていた裕子を助け、その勢いでキスしてしまう。そして、カイへの罪悪感で、シュンはそれ以降ドーナツ店に付き合うことをやめることを宣言する。いっぽう、シュンにキスされたことで、裕子は自分が好きだったのがシュンであったことに気が付く。しかし、次の月曜、裕子の思い人を見ようと同級生一同らがドーナツ店で張り込んでいたところに現れたのは、カイであった。裕子は、カイの熱心さにほだされ、試しに付き合ってみるも、シュンのことを諦められきれず、カイとの付き合いをやめ、連絡を断とうとアルバイトも辞める。カイがフラれたことに怒って裕子の通う白珠高校に乗り込んできたシュンに、裕子は自分の気持ちを話して去り、シュンも裕子の魅力に改めて気がつく。

授業料を稼ぐアルバイトがなくなった裕子は、冬休み、長野のスキーロッジでのアルバイトを申し込む。同じ頃、失恋の痛みを慰めるためにシュンはカイを盛り場へ連れ出すが、カイには慰めにならず、逆にカイが長野の別荘に遊びに行くことを提案する。別荘への道すがら、シュンは休憩のために寄ったロッジの一人娘・麻理を口説き、別荘に遊びに来るよう誘う。麻理はアルバイトで働いている裕子を誘い、ロッジに泊まっていた大学生をも連れて別荘に向かう。別荘には、大学生の1人、高山と裕子が遅れて到着し、それを見たカイと高山の争いになる。喧嘩はカイの一方的な負けに終わるが、自分のために戦ってくれたカイに感動して、裕子はカイとのことを考え直す。深夜、シュンに部屋を追い出されたカイは、麻理が出ていった裕子の部屋に向かうが、入室を拒否される。しかし、その後裕子もカイのいるリビングに降り、そこで話しているうちに、2人は改めて付き合うことになる。

新年の初詣デートの後、カイは自宅に裕子を迎えて両親に紹介する。表向きは歓迎するも、受験を控えているカイを考えて両親は心配する。興信所で調べた如月家の身分を気にする父親との喧嘩でカイは家を飛び出し、シュンの部屋に転がり込むが、カイの純潔宣言を聞いたシュンは罪悪感と嫉妬から逆ギレしてカイを追い出す。

3学期、学校に訪ねてきた裕子とのキスの誘惑をカイが無理やりはねのけたことで、裕子は未だ自分がシュンを好きであり、カイへの情熱がないことに気がついてしまう。改めてシュンに告白するも、シュンはカイへの友情からそれを断る。絶望した裕子はふらふらと夜の街を歩く。その姿を、かつてシュンに追い払われた暴走族の1人、貞二が見つける。貞二は裕子を拉致し、無理やり酒を飲ませて泥酔させ、暴走族のアジトの一室に連れ込む。シュンを追いかけて上京し偶然アジトのあるバーで飲んでいた麻理はシュンに連絡して助けを求める。裕子を助ける試みはシュンは貞二とのタイマンとして埠頭でのチキンレースになり、シュンはその勝負に勝つ。うわ言で裕子がシュンの名前を呼んでいることに気がついた麻理は、その日は身を引くことにする。シュンと裕子は停泊していたヨットの1室に入り込んで暖をとり、その夜2人は結ばれる。そして、2人はカイに、そのことを言わなければならないと決意する。
2巻

決意はしたものの、2人はカイに真実を言うことが出来ない。シュンと身体含みで付き合い出した裕子は、しかし純潔を貫くカイと付き合うことをやめられずにいた。シュンがつれなくなったことに気がついた麻理は、二股している裕子の気持ちを晒そうと動き出す。万引きトラブルをわざと起こしてカイのところに近づき、裕子の二股についてカイに助言するも、シュンを信じているカイは全く取り合わない。体を差し出してカイを誘惑しても、裕子への一途を貫こうとしているカイは取り合わず、転がり込んできた麻理を追い出す。いっぽうで、麻理の指摘に二股を自覚している裕子は動揺し、母親に相談するが、相談を聞いた母親は「男女のことは自分で解決するしかない」と話しつつ、想像していたより早く大人になった裕子のことに感慨深くする。

カイの純情への罪悪感に、シュンと裕子は、誰も知らないところで会おうと、4月1日にデートを計画する。麻理は偶然その計画を知り、彼らの待ち合わせ場所である東海道線横浜駅の反対の端にカイを誘い、小田原行きの電車に同乗してデートを尾行する。そしてカイは、2人が菅田浜で楽しくデートをしているところを目撃してしまう。

決着をつけるために裕子とカイは浜辺で2人で対峙するが、自棄になったカイは裕子を無理やり犯してしまう。シュンへの信頼も、自分への信頼も失ったカイは茫然自失のまま浜辺を彷徨い、警察に保護される。家に帰ったあと、自分の思い出がことごとくシュンとのものであることに気がついたカイは、全ての写真を破り捨てる。

始業式の朝、同じ3年C組になったものの、シュンはカイのことを心底軽蔑する発言をし、カイはそれに対してナイフでシュンを刺そうとする。果たしてそれは全くの未遂に終わり、カイはシュンには全くかなわないことを再認識させられる。いっぽうシュンは、裕子と付き合っている自信から、リーゼントをやめ、クラスに溶け込み、体育祭のバスケットボールで優勝するなど大活躍する。

打ちひしがれたカイは、深酒し、埠頭のたまり場でシンナーに手をだす。偶然それを見たシュンはカイを助けるも、カイが自分の真似をするように荒れていることに気がつき、自分が裕子と付き合ったままでいいのか疑問に持ち始め、デート中にもその気分が抜けなくなる。裕子の母親は、シュンが友情から裕子を捨てるのではないかと心配し、シュンを呼び出して釘を刺す。

裕子のもう一つの心配は、生理が予定日よりも2週間以上遅れていることだった。そんなとき、裕子の同級生たちは、カイが喫茶店の片隅で慣れないタバコを吸うなどすっかり落ちぶれているところに出くわし、裕子が二股していたことを知る。そして、クラス内で「裁判」と称した裕子の糾弾会を開く。裕子が開き直ったことでつかみ合いの喧嘩になりかけるが、親友しなちゃんが仲裁し、さらに裕子の悪阻が現れたことで会はうやむや、中絶のためのカンパ集めの会に変貌する。おそらく子供の父親はカイであった。
3巻

妊娠した事実を確かめに病院に行くことも、カイやシュンに話すことも出来ず、裕子は学校を休み続ける。シュンとカイは相変わらずギクシャクしていたが、道端で言いがかりに巻き込まれたカイと、道すがらそれをシュンが助けたことがきっかけで、お互い裕子が何を考えているのかわからないことに気がつく。2人はアルコールの勢いを借りて裕子の家に押しかけ、翌日の約束を取り付ける。2人からどちらかを選べと言われた裕子は一瞬喜ぶものの、自分がどちらかを選べなくなっていることにも気が付く。

翌日、約束の喫茶店で、選択の前に妊娠の事実を話そうとした裕子だが、その前に2人から別れを突きつけられ、呆然として帰ってくる。裕子の母親は自分の経験からも中絶に賛成するが、逆にそのことで裕子は出産すると翻意する。母親が出産を諦めさせるようキツく言った言葉を真に受けた裕子は家を飛び出す。

2週間無断欠席が続いたことで、裕子は学校を退学処分になり、それは学校中の噂になっていた。表向き仲直りしたシュンとカイが楽しそうにしているのを見たしなちゃんは激昂し、裕子との約束を破って2人に裕子の妊娠の事実を告げる。カイは妊娠の責任を取るために裕子との結婚を決意し、シュンはカイと裕子のために裕子を探し出そうと決心して夏休みの初頭に退学する。

裕子は家を出た後、子供を一人で産んで育てようと、東京で深夜喫茶に泊まりつつアルバイトを探していた。しかし、家出少女を雇う店はどこにもなく、当座の金もなくなり、空腹の中、売春に手を出そうとするも思いとどまる。駅で松本行きの列車を見つけ、かつてのロッジでの思い出を懐かしみ、無賃乗車で乗り込み、長野の小諸付近をさまよう。

観光果樹園も行っている蓮見農園の一人娘であるえり子とその従兄の恒は、家に帰る車の道すがら、道端で倒れている女性を見つけ、かかりつけの一瀬病院に運び込む。その女性はすっかり衰弱した裕子だった。妊娠を把握した上で、一ノ瀬医師は母体保護のために中絶をしようとするが、かつて中絶経験のあるえり子は一ノ瀬医師に母子ともども助けるよう頼み込む。奇跡的に裕子は回復し、ユミ子の偽名でえり子の家に退院し、入院費を返そうと、蓮見農園で働きだす。学会で上京した一ノ瀬医師はその晩、学生時代の友人だったカイの父を訪ね、そこで、迷い込んできた10代の妊婦のことを話す。家に泊まることになった一ノ瀬にカイは事情を話し、裕子の住んでいる農園の住所を聞き出す。

高校を辞め、実家の青果店を手伝いながら裕子を探すシュンは、歩いての人捜しに限界を感じていた。そんな夜、貞二と暴走族の一団がシュンの家にやってくる。チキンレースでのシュンの度胸に感心したリーダーの遺言に従ってオートバイを渡しに来たのだった。オートバイの欲しいシュンは、引き渡しの条件である族の仲間になることにも了承し、免許を取って集会に参加することにする。集会で裕子を探していることを話すシュンに貞二は感動し、全国の支部も動員して裕子を探しはじめる。しかし、裕子は見つからず、捜索活動に関わるメンバーは次第に減っていっていた。シュンは、裕子は絶対にどこかで働いていると確信し、素性が怪しくても働ける季節労働をしていると考える。折しも季節は初秋で、この時期の季節労働は観光りんご園だと考えたシュンと貞二は、長野に足をのばすことを決める。

妊娠しながらも真面目に働く裕子は他の使用人にも評判がよく、恒も感心する。そんな恒が実はえり子を好きなことに裕子は気がつくが、実際のところ恒はえり子のワガママに愛想を尽かしつつあった。そんな夜、カイが裕子のところを訪ねてくる。
4巻

えり子の手引きで、カイと裕子は会って話し合う。しかし、カイの言葉が妊娠の責任を取る話ばかりで自分を求めているわけではないことに裕子は気がつき、再び姿を消そうと決心する。長野で人捜しを始めたシュンは、道すがら車の故障に困っていた恒を助けるが、恒はシュンに見せられた裕子の写真にしらを切る。

台風が近付いていたその夜、えり子は無理してパーティーに出かけるが、恒が自分に愛想を尽かしつつあることに後悔しつつ、一人でパーティーを中座し、大雨の帰り道の中、よろけたところをシュンに助けられる。


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