梅雨
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「梅雨前線」はこの項目へ転送されています。前線の種類については「停滞前線」をご覧ください。
東京における梅雨の(2009年6月)

梅雨(つゆ、ばいう)は、北海道小笠原諸島を除く日本朝鮮半島南部、中国の南部から長江流域にかけての沿海部、および台湾など、東アジアの広範囲においてみられる特有の気象現象で、5月から7月にかけて来る曇りの多い期間のこと。雨季の一種である[1]
名称

漢字表記「梅雨」の語源としては、この時期はの実が熟す頃であることからという説や、この時期は湿度が高くカビが生えやすいことから「黴雨(ばいう)」と呼ばれ、これが同じ音の「梅雨」に転じたという説、この時期は「毎」日のように雨が降るから「梅」という字が当てられたという説がある。普段の倍、雨が降るから「倍雨」というのはこじつけ(民間語源)である。このほかに「梅霖(ばいりん)」、旧暦5月頃であることに由来する「五月雨(さみだれ)」、の実る頃であることに由来する「麦雨(ばくう)」などの別名がある。

なお、「五月雨」の語が転じて、梅雨時の雨のように、物事が長くだらだらと続くことを「五月雨式」と言うようになった。また梅雨の晴れ間のことを「五月晴れ(さつきばれ)」というが、この言葉は最近では「ごがつばれ」とも読んで新暦5月初旬のよく晴れた天候を指すことの方が多い。気象庁では5月の晴れのことを「さつき晴れ」と呼び、梅雨時の晴れ間のことを「梅雨の合間の晴れ」と呼ぶように取り決めている。五月雨の降る頃の夜の闇のことを「五月闇(さつきやみ)」という。

地方名には「ながし」(鹿児島県奄美群島[2])、「なーみっさ」(喜界島での別名[3])がある。沖縄では、梅雨が小満から芒種にかけての時期に当たるので「小満芒種(スーマンボースー、しょうまんぼうしゅ)」や「芒種雨(ボースーアミ、ぼうしゅあめ)」という別名がある。

中国では「梅雨(メイユー)」[1]台湾では「梅雨(メイユー)」や「芒種雨」、韓国では「??(チャンマ)」(「長い雨」の意味と推定される[4])という[1]。中国では、古くは「梅雨」と同音の「?雨」という字が当てられており、現在も用いられることがある。「?」はカビのことであり、日本の「黴雨」と同じ意味である。中国では、梅が熟して黄色くなる時期の雨という意味の「黄梅雨(ファンメイユー)」もよく用いられる[5]
東アジアの四季変化における梅雨

気候学的な季節変化を世界と比較したとき、東アジアでは春夏秋冬に梅雨を加えた五季、また日本に限るとさらに秋雨を加えた六季の変化がはっきりと表れる[1]

東アジアでは、は、温帯低気圧移動性高気圧が交互に通過して周期的に天気が変化する。一方、盛夏期には亜熱帯高気圧太平洋高気圧)の影響下に入って高温多湿な気団に覆われる。そして、春から盛夏の間と、盛夏から秋の間には、中国大陸東部から日本の東方沖に前線が停滞することで雨季となる。この中で、春から盛夏の間の雨季が梅雨、盛夏から秋の間の雨季が秋雨である。なお、梅雨は東アジア全体で明瞭である一方、秋雨は中国大陸方面では弱く日本列島方面で明瞭である。また、盛夏から秋の間の雨季の雨の内訳として、台風による雨も無視できないほど影響力を持っている[1]

梅雨の時期が始まることを梅雨入りや入梅(にゅうばい)といい、社会通念上・気象学上はの終わりであるとともにの始まり(初夏)とされる。なお、日本の雑節の1つに入梅(6月11日頃)があり、の上ではこの日を入梅とするが、これは水を必要とする田植えの時期の目安とされている。また、梅雨が終わることを梅雨明けや出梅(しゅつばい)といい、これをもって本格的な夏(盛夏)の到来とすることが多い。ほとんどの地域では、気象当局が梅雨入りや梅雨明けの発表を行っている。

梅雨の期間はふつう1か月から1か月半程度である。また、梅雨期の降水量は九州では500mm程度で年間の約4分の1・関東東海では300mm程度で年間の約5分の1ある。西日本では秋雨より梅雨の方が雨量が多いが、東日本では逆に秋雨の方が多い(台風の寄与もある)。梅雨の時期や雨量は、年によって大きく変動する場合があり、例えば150mm程度しか雨が降らなかったり、梅雨明けが平年より2週間も遅れたりすることがある。そのような年は猛暑少雨であったり冷夏・多雨であったりと、夏の天候が良くなく気象災害が起きやすい[1][6][7]

東アジアは中緯度に位置している。同緯度の中東などのように亜熱帯高気圧の影響下にあって乾燥した気候となってもおかしくないが、大陸東岸は夏季に海洋を覆う亜熱帯高気圧の辺縁部になるため雨が多い傾向にある。これは北アメリカ大陸東岸も同じだが、九州では年間降水量が約2,000mmとなるなど、熱帯収束帯の雨量にも劣らないほどの雨量がある。この豊富な雨量に対する梅雨や秋雨の寄与は大きい。梅雨が大きな雨量をもたらす要因として、インドから東南アジアへとつながる高温多湿なアジア・モンスーンの影響を受けている事が挙げられる[1][8]

時折、梅雨は「雨がしとしとと降る」「それほど雨足の強くない雨や曇天が続く」と解説されることがある。これは東日本では正しいが、西日本ではあまり正しくない。梅雨の雨の降り方にも地域差があるためである。特に西日本や華中長江の中下流域付近)では、積乱雲が集まった雲クラスターと呼ばれる水平規模100km前後の雲群がしばしば発生して東に進み、激しい雨をもたらすという特徴がある[1]。日本本土で梅雨期にあたる6-7月の雨量を見ると、日降水量100mm以上の大雨の日やその雨量は西や南に行くほど多くなるほか、九州四国太平洋側では2カ月間の雨量の半分以上がたった4-5日間の日降水量50mm以上の日にまとまって降っている[9]。梅雨期の総雨量自体も、日本本土では西や南に行くほど多くなる[1]
メカニズムと経過
気団梅雨前線の北上の様子。梅雨をもたらす4気団の位置および梅雨期間中の勢力変化も示した。

梅雨の時期には、以下の4つの気団が東アジアに存在する。

      揚子江気団
中国北部・モンゴルから満州にかけての地域に存在。暖かく乾燥した大陸性の気団。移動性高気圧によって構成される。

      オホーツク海気団
オホーツク海に存在。冷たく湿った海洋性の気団。

      熱帯モンスーン気団
インドシナ半島南シナ海から南西諸島近海にかけての地域に存在。暖かく非常に湿った海洋性の気団。インド洋の海洋性気団の影響を強く受けている。

      小笠原気団
北太平洋西部に存在。高温・多湿で海洋性の気団。

から夏に季節が移り変わる際、東アジアでは性質の違うこれらの気団がせめぎ合う。中国大陸方面と日本列島・朝鮮半島方面ではせめぎ合う気団が異なる。

中国大陸方面:北の■揚子江気団と南の■熱帯モンスーン気団が接近し、主に両者の湿度の差によって停滞前線が形成される[注 1]

日本列島朝鮮半島方面:北の■オホーツク海気団と南の■小笠原気団が接近し、主に両者の温度の差により、停滞前線が形成される[注 1]

性質が似ていることや、距離が離れていて干渉が少ないことなどから、北側の気団同士・南側の気団同士の間には、前線は形成されない。

北と南の気団が衝突した部分には東西数千kmに渡って梅雨前線(ばいうぜんせん)ができ、数か月に渡って少しずつ北上していく。この前線付近では雨が降り続くが、長雨の期間は各地域で1か月?2か月にもなる。


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