梅毒
Treponema pallidumの電子顕微鏡写真
概要
診療科感染症内科学, 皮膚科学
分類および外部参照情報
ICD-10A50
梅毒(ばいどく、Syphilis。黴毒、瘡毒(そうどく)とも)は、スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)によって発生する感染症[1]。性感染症の一種[1][2]。 in vitroでの培養は不可能であり(現在はウサギの精巣(睾丸)内で培養されている)、病原性の機構はほとんど解明されていない。1998年には全ゲノムのDNA配列が決定[1]、公開されている。 梅毒の徴候や症状は進行に応じた3段階でそれぞれ大きく異なる。U期以降の性器や全身の皮膚の特徴的な薔薇模様で知られる。自然完治と誤解するような潜伏期を2度挟みながら、病状が徐々に悪化していき、最終的に死に至ることもある。症状が出ていない期間も感染力を持ち、体内は悪化の一途を辿っており、治療法は医師から完治診断を受けるまでペニシリン系のアモキシシリン投与を受けるのみである[3][4]。 予防に有効なワクチンは存在せず、ペニシリン系抗生物質の投与により治癒自体はするが免疫は獲得できず、梅毒トレポネーマに再感染した場合は再び罹患する[1][5]。感染すると他の性感染症にもかかりやすくなるため、ヒト免疫不全ウイルスと重複感染するケースが度々ある[6][7][8][9]。 1999年に全世界で推定1200万人が新規感染したと考えられており、その90%以上は発展途上国での感染であった。また感染者の約80%は男性である[10]。1940年代のペニシリンの普及以降、特効薬が開発されたことで晩期顕症梅毒の発症および死亡は劇的に減少した。しかし2000年以降、コンドーム不使用に起因する感染が多くの国々で増加しつつある。日本でも2011年頃から増加傾向にあり、2010年には約600件だった報告数が2022年には10,000件を超えた[11]。 梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の特徴は螺旋状形態、グラム陰性であり、活発に運動する[12][13]。自然界における唯一の宿主はヒトである[14]。宿主がいなければ数日も生きられない。これはそのゲノムサイズが小さく(1.14 MDa)、主要栄養素の合成に必要な代謝経路の遺伝子が欠落しているためである。
概要
感染者数の推移
病原体
細菌学梅毒トレポネーマに侵された病理組織(銀染色)詳細は「梅毒トレポネーマ」を参照