根粒
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1. イブキノエンドウの根粒をつけた根

根粒(根瘤、こんりゅう、: root nodule, root tubercle)[1]とは、窒素固定窒素ガスをアンモニアに変換する)を行う根粒菌が植物のに侵入・共生して形成されたコブ状の構造のことである(図1)。根粒内において、根粒菌は植物に窒素栄養分を供給し、植物から有機物を受け取る相利共生関係が成立している。根粒菌の酸素呼吸と窒素固定に必要な微好気的な環境(酸素がわずかに存在する環境)をつくるため、根粒内では酸素と結合するタンパク質(レグヘモグロビン)が多量に産生される。根粒はマメ科の植物に広く見られるが、グミヤマモモハンノキは根粒菌ではなく放線菌と共生し、やや異なるタイプの根粒を形成する。
構造

根粒は、マメ科植物のに形成されるコブ状の構造であり(図2a, b)、この内部に窒素固定能をもつ根粒菌(rhizobium, pl. rhizobia[2])が共生している[3][4][5](図2c)。根粒中の根粒菌は、自由生活状態の根粒菌とは異なる性質(分裂停止、肥大化)を示すようになり、このような状態の根粒菌はバクテロイド(bacteroid)とよばれる[3][4][6](図2d)。バクテロイドは根粒を構成する植物細胞中に存在し、膜(ペリバクテロイド膜 peribacteroid membrane, PBM)で包まれている[3][4][5][6]。バクテロイドがペリバクテロイド膜に包まれたものはシンビオソーム(symbiosome)ともよばれる[5][6]。根粒中では、根粒菌を含む細胞と全く含まない細胞が混在していることもある[3]

例外的に、クサネムやツノクサネム属(セズパニア、Sesbania)などでは、根粒菌に共生して茎粒(stem nodule)を形成する[3][4][7]。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}2a. ウマゴヤシ属の根粒2b. イブキノエンドウの根粒2c. 根粒切片の光学顕微鏡像: A = 感染細胞, B = 維管束, C = 皮層, D = 厚壁組織, E = 表皮、スケールバー = 0.525 mm2d. ダイズ根粒切片の透過型電子顕微鏡像: 根粒菌(濃色部)はバクテロイドとなり、ペリバクテロイド膜に包まれている。

マメ科の根粒中には特異な酸素結合タンパク質であるレグヘモグロビン(leghemoglobin, Lb)が大量に存在し、根粒中の全タンパク質量の30%に達することもある[3]。レグヘモグロビンが存在するため、根粒中で活発な窒素固定が行われている部分は赤色を呈する[4](図2a, 図3c)。レグヘモグロビンの存在によって、窒素固定と酸素呼吸が共に可能である微好気環境が根粒内に形成される(下記参照)。

マメ科の根粒には、大きく分けて2つの型が知られている。有限型根粒(determinate root nodule)には分裂組織はなく、根粒菌に感染した細胞が分裂して肥大生長する[4][5][8](図3a)。形成される根粒はふつう球形であり、ダイズインゲンマメラッカセイなどに見られる[4][5][6]。一方、無限型根粒(indeterminate root nodule)は先端側に分裂組織をもち、形成された細胞が根粒菌に感染して成熟していくため、先端側から基部側へ異なる成熟段階の層がならんでいる[4][5][8](図3b, c)。根粒は基本的に円筒状であり、シロツメクサエンドウウマゴヤシ属などに見られる[4][5][6]。いずれの場合も、根粒菌を含む部分が維管束で囲まれている[4][5][8](図2c, 図3a, b)。3a. 有限型根粒の模式図: NC = 根粒皮層、NE = 根粒内皮、NF = 共生域、NP = 根粒柔組織、S = 崩壊域、VB = 維管束3b. 無限型根粒の模式図: I = 分裂域、II = 侵入域、III = 共生域、IV = 崩壊域、NC = 根粒皮層、NE = 根粒内皮、NP = 根粒柔組織、VB = 維管束3c. 無限型根粒の例(ウマゴヤシ属3d. さまざまな根粒. 有限型根粒: A. ダイズ属、ササゲ属、デイゴ属; B. クサネム属、ラッカセイ属、ツルサイカチ属. 無限型根粒: C. ネムノキ属、ソラマメ属; D. ギンネム属、ウマゴヤシ属; E. アカシア属、タヌキマメ属; F. Albizia moluccana; G. Swartzia trinitensis; H. シナフジ(1, 2, 4年後); I. ルピナス属、Listia
形成4. Nod因子の基本構造: 赤字部分に多様性がある。

マメ科植物における根粒形成は、根粒菌と植物の間の情報交換によって制御されている。根粒形成に働く植物の遺伝子はノドュリン遺伝子(nodulin gene)、根粒菌の遺伝子はノドュレーション遺伝子(nodulation gene; nod遺伝子)とよばれる[6]。根粒菌は、特定の植物が分泌するフラボノイドベタレインに誘引され根毛に付着、Nod因子(根粒形成因子、Nod facter)を生成する[4][6](図4)。Nod因子は根粒菌のによってそれぞれ少しずつ異なるリポキチンオリゴ糖であり、植物に根粒形成のための変化を引き起こす[4]。Nod因子に反応した根毛の先端が屈曲(カーリング)して根粒菌を包み込み、根毛の細胞壁の一部が分解され、細胞膜が陥入して形成された感染糸(infection thread)を通って根粒菌が根毛細胞内に侵入する[4][6]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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