根毛
[Wikipedia|▼Menu]
1. 多数の根毛が密生している根: 根毛は根の先端からやや離れた部分から生じている。

根毛 (こんもう、: root hair) は、維管束植物表皮細胞が毛状に突出した構造である。直径は10マイクロメートル (μm) = 0.01ミリメートル (mm) ほどであり、長さは多様。根端からやや離れた領域 (成熟帯) から生じる。根毛はふつう数日から数週間程度で消失するが、先端側からは新たな根毛が形成されるためふつう一定量の根毛が維持されている。根毛は根の表面積を広げ、効率的な水と無機栄養分の吸収に寄与し、また土壌粒子と密着して植物体を固定する。
形態

根毛は、表皮にある細胞の一部が、外側に円筒状に細長く伸長した突起状の部分である(表皮細胞のうち、内部にある部分は根毛には相当しない)[1]。先端はドーム状、ときに屈曲するが、分岐することはほとんどない[2][3]。長さは多様であり、数十 μm 程度のものから 1 mm 以上になるものまであるが、直径は比較的一様で数μmから十数μmほどである[2][4]。基本的に根毛内の基部側は大きな液胞で占められており、は先端近く (シロイヌナズナでは先端から約 75 μm) に位置し、先端部には小胞など先端成長を行う構造が存在する[2][5]。根毛の細胞壁はふつう薄いが、リグニンスベリンが沈着して厚化していることもある[2]。.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}2a. 多数の根毛が生じている根2b. ユリの根の横断面: 表皮細胞が伸長して根毛になっている。

根毛は一般に短命であり、ふつう数日から数週間程度で消失する。ただし一部の種では、長期間維持される根毛をもつことがある。このような根毛は宿存根毛 (persistent root hair, permanent root hair) とよばれ、数年間残存するものもある[4]。宿存根毛の有無は、分類形質とされることがある[6]
発生3. 根の先端部縦断面模式図: 1 = 根冠、2 = 分裂帯 (根端分裂組織を含む)、3 = 伸長帯、4 = 成熟帯 (多数の根毛が生じている)、5 = 側根の原基

根毛は根端 (最も若い部分) や根の古い部分に生じることはなく、根端からやや離れた、細胞伸長が終わって細胞が分化・成熟しはじめる部分(成熟帯)から生じる[7](図3)。根毛は表皮の細胞の一部が伸長して形成されるが、根毛になる表皮細胞の分化程度やその配置には以下のような多様性がある(I型、II型、III型)。根毛になる能力をもつ細胞が分化している場合、このような細胞は根毛形成細胞 (根毛細胞[7] trichoblast) とよばれる[2][4]。これに対して、根毛を形成しない細胞は根毛非形成細胞 (非根毛細胞[7] atrichoblast) とよばれる[2]

I型[7][8] … 根のすべての表皮細胞が根毛になる能力をもつ。最も普遍的であり、多くの植物にみられる。

II型[7][8] … 不等分裂によって、小型の根毛形成細胞と大型の根毛非形成細胞が形成される。このため、根毛形成細胞と根毛非形成細胞が縦横交互に市松模様に配置する。小葉植物トクサ属スイレン科、一部の単子葉植物などにみられる。

III型[7][8] … 根毛形成細胞と根毛非形成細胞がそれぞれ縦列している。表皮の内側には皮層細胞があるが、根毛形成細胞は2個の皮層細胞に接しており、根毛非形成細胞は1個の皮層細胞のみと接している。モデル植物であるシロイヌナズナなどアブラナ科にみられる。

シロイヌナズナ(上記III型)では、転写因子の相互作用によって根毛形成細胞の分化が制御されている[7][8]。4種類の転写因子であるWER (WEREWOLF)、TTG1 (TRANSPARENT TESTA GLABRA1)、GL3 (GLABRA3)、EGL3 (ENHANCER OF GLABRA3) が複合体を形成し、根毛非形成細胞においてGL2の遺伝子発現を促進する。GL2は根毛形成遺伝子群の発現を制御し、根毛の形成を抑制する。一方で根毛形成細胞では、CPC (CAPRICE) が複合体中のWERと置き換わり、GL2は発現しなくなるため、根毛が形成される。また植物ホルモンであるオーキシンエチレンも、根毛形成細胞の分化を促進する[5]

シロイヌナズナでは、根毛形成細胞の根端側の端付近から根毛が形成される[7]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:39 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef