核形成
[Wikipedia|▼Menu]
Rock candy。過飽和の砂糖水につけた棒の表面で核生成が起こり、大きな結晶が成長する。

核生成(Nucleation)とは、非常に局所的な領域で、異なる熱力学的相が出現することである。核形成とも呼ばれる。例えば、液体中では結晶ガラス領域・気体のなどの発生が実例として挙げられる。一般に知られている例としてはメントスガイザーがある。空孔クラスタの発生にも関わっており、半導体産業などで重視される。飽和水蒸気から液滴が形成される現象も核生成の一種であり(雲凝結核)、人工降雨のプロセスや泡箱霧箱のような実験器具とも深く関連している。例外は存在するが(電気化学的核生成)、ほとんどの核生成過程は物理的な現象であり、化学的現象ではない。

通常、この現象は核生成部位と呼ばれる、流体と表面が接している場所で起こる。懸濁物や微小な気泡の表面でも発生する。このようなタイプの核生成は不均質核生成 (heterogeneous nucleation) と呼ばれるが、明確な核生成部位のない均質核生成 (homogeneous nucleation) も存在する。均質核生成は自発的・ランダムに起こるが、これには過熱過冷却が必要である。


高層大気では雲
凝結核の供給量が少ないことなど、気象学では重要な概念である(人工降雨も参照)。

ナノ粒子の結晶化過程に関連しており[1]、気相プロセスでの合成において重要である。

天然・人工を問わず、均質な溶液からの結晶化プロセスは核生成から始まる[要出典]。

酢酸ナトリウムを用いたエコカイロでは、金属板を折り曲げる際のキャビテーションを核生成中心として利用し、結晶化を引き起こしている。

指に付いたCO2の泡。

炭酸水が常圧下に置かれると、すぐに核生成により二酸化炭素の泡が発生する。このように核生成は界面の存在によって促進され(不均質核生成)、沸騰石やRock candy(上の写真)などの例がある。メントスガイザー(メントスコーラ)は劇的な事例である。

シャンパンステアラーにはこれを応用した製品があり、表面積や角の多い形状によって炭酸を効率的に逃すことができる。


液体の圧力が減少した場合、沸点が低下して過熱状態となり、液体のバルク部分で核生成が起きることがある。だがこれよりも、濡れ性の低い容器の表面の亀裂などに小さな気泡が付着し、ここが核生成部位となることが多い。このため、過熱を起こすには容器の表面が滑らかで濡れやすく、液体が脱気されていることが必要になる。

膜沸騰やライデンフロスト効果はバルク部分での均質核生成によって起きる現象である。


重合体[2]合金セラミックスなどで重要な概念である。

化学生物物理学では、重合過程の中間体としての多量体の形成にこの言葉が用いられる。これは結晶化アミロイド形成を説明するモデルとして有用である。

分子生物学では、単量体の小さなクラスタから急速な重合が起こり、ポリマー構造が生成される際の用語として用いられる。 例えば、2分子のアクチンの結合は緩いが、3分子目が結合することで安定化する。この三量体にさらに分子が結合し、核生成部位ができる。これは微小繊維の重合過程において律速段階となっている。


機構
均質核生成

均質な溶液中での核生成は起こりにくい過程であるが、均質核生成と呼ばれる。形成された核は新しい相との境界面を提供することになる。

液温が不均質核生成温度(融点)を下回るが、均質核生成温度(純物質の凝固点)を上回っている状態のことを、過冷却という。これはアモルファス固体のような準安定状態の構造を作る時に役立つが、プロセス化学や鋳造においては望ましくない状態である。過冷却により過飽和状態が生じ、核生成の駆動力となる。これは形成された固体内の圧力が液体の圧力より小さい場合に起こり、液体と固体間での単位体積あたりの自由エネルギー G v {\displaystyle G_{v}} の変化をもたらす。この変化量は、体積が増えることによる自由エネルギー獲得と新たな表面の表面エネルギーによるエネルギー損失の差として決定される。全体としての自由エネルギー変化 Δ G {\displaystyle \Delta G} が負になったとき、核生成が起こる。

核が小さすぎると(不安定核、または幼核 "embryo")、体積増加によるエネルギーが表面エネルギーを上回ることができず、核生成は促進されない。核の大きさはその半径によって表されるが、これが臨界半径 r=r* を超えると核生成が促進されるようになる。

クラスタ形成時に単位体積あたり -Gv J(ここで Gv は負)のエネルギーが獲得されるが、新たに生成する単位面積あたり σ のエネルギーを損失するとしたとき、半径rのクラスタの形成に必要なエネルギーは次のようになる[3]。 Δ G = − 4 3 π r 3 G v + 4 π r 2 σ {\displaystyle \Delta G=-{\frac {4}{3}}\pi r^{3}G_{v}+4\pi r^{2}\sigma }

初項は体積増加によるエネルギー獲得、第二項は新しい表面の表面張力( σ {\displaystyle \sigma } )によるエネルギー損失を示す[4]

このクラスタに分子を加えるにはエネルギーが必要である( d G d r > 0 {\displaystyle {\frac {dG}{dr}}>0} であるため)が、半径が臨界半径 r ∗ = − 2 σ G v {\displaystyle r^{*}=-{\frac {2\sigma }{G_{v}}}}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:34 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef