核廃棄物
[Wikipedia|▼Menu]
被曝警告の標識、2007年に国際原子力機関 (IAEA) と ISOにより追加された。

放射性廃棄物(ほうしゃせいはいきぶつ、: radioactive waste)とは、使用済みの放射性物質及び放射性物質で汚染されたもので、以後の使用の予定が無く廃棄されるものを言う[1]

原子力発電に代表される原子力エネルギーの利用に伴って発生し[2]、また医療[3]や農業、工業における放射性同位元素(RI)の利用によっても発生する。日本においては、その発生源に応じて取り扱いを規定する法律及び所管官庁が異なる。
概要

放射性廃棄物はその定義から放射性物質を含む、すなわち人間にとって有害な放射線を放出しておりその取り扱いには一般に注意を要する[4]。一口に放射性物質といっても発生源及びその性質などに応じて分類され処分方法も変わってくる[5]

日本の国内法においては、核燃料物質であるかそれ以外の発生の放射性同位元素(radioisotope:RI)であるかの違いによってその取り扱いを規定する法律は異なる。なお、日本においては、放射性廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で定義される「廃棄物」には原則として該当しない[6]。ただし、その放射性物質を含む廃棄するものの放射能のレベルがクリアランスレベル以下または規制除外対象であるなどといった場合は、法定上は放射性廃棄物とはみなされず産業または一般廃棄物として処理される。

原子力発電所から出る放射性廃棄物の場合、原子炉から取り出した使用済み核燃料[7]や、作業員が使用した衣服やこれの除染に用いた水など多岐に渡る。使用済み核燃料は一時保管した後、再処理工場に運ばれる。再処理工場からは、燃料棒の部品、また燃料棒のペレットに含まれる核分裂反応による生成物(核分裂生成物)や、湿式によるウランプルトニウムの分離抽出の過程で発生した廃液などの放射性廃棄物が発生する。発生別により、ヨウ素を閉じ込めるための廃銀吸着剤、二次廃棄物(MOX燃料施設から発生するものも含む)等の内、ウラン燃料を加工する施設から発生するウランで汚染された廃棄物は特にウラン廃棄物と呼ばれる[8]
日本における放射性廃棄物の分類
法令に基づいた分類

日本においては、法律に基づいて、放射性廃棄物は(a)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に言う放射性廃棄物[9](以下、核燃料廃棄物という)と、(b)それ以外の法律によって規制される放射性廃棄物(以下、RI廃棄物という)に大別することができる。さらにRI廃棄物は(b-1)放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律における研究分野からのRI廃棄物(以下、研究RI廃棄物という)と、(b-2)医療法薬事法獣医療法及び臨床検査技師等に関する法律における医療分野からのRI廃棄物(以下、医療RI廃棄物という)

に分けることができる[10]
特別措置法によるもの

平成22年度までは法的には概ね上記のように分類されていたが、平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(放射性物質汚染対処特措法)が公布および施行されることとなり、その中で言う(c)特定廃棄物(指定廃棄物及び対策地域内廃棄物からなる)と呼ばれる放射性廃棄物の分類が新たに導入されることとなった[11]。環境省によれば、指定廃棄物は2022年9月30日時点で、10都県に計40万6931トンある[12][13][14]
IAEAの分類を参考にした慣習的な分類

日本において放射性廃棄物は、慣習的に、使用済み核燃料の再処理における溶解に使った硝酸を主とする廃液及びその固化体のみを指す高レベル放射性廃棄物(High Level Waste、HLW)[15]と、それ以外のものを指す低レベル放射性廃棄物[16]の二つに分類される[17]。なお、低レベル放射性廃棄物は、その中でアルファ放射体[18]を多量に含むものはアルファ廃棄物もしくはTRU廃棄物[19]と呼ばれさらに区分される[17]
「放射性物質として扱う必要の無い物」に関する制度・概念

放射性廃棄物とは、使用済みの放射性物質及び放射性物質で汚染されたもので以後の使用の予定が無く廃棄されるものを言うが、放射線の検出は物理現象の中でも最も鋭敏に検出できるものであることから、極端なことを言えばすべての廃棄するものを放射性廃棄物とすることができる。しかし、この場合、規制の対象となるものは膨大となり、規制制度自体が機能しなくなることにつながる。

このように、放射線防護に関する規制の枠組みの中にある放射性物質であっても、その規制自体をうまく機能させるためには、その量が微量であり人の健康に対する影響が無視できる、または規制をしても効果がほとんどないなどといった場合は、それを放射性物質として扱う必要の無い物としてその規制の枠組みから外しても良いという制度や概念が必要となる。

放射性物質を含んでいて廃棄するものであっても、それら制度や概念を適用することにより条件によって放射性廃棄物として規制外となれば、例えば廃棄物処理法でいう「廃棄物」として埋設処分するなど[20]といったことができるようになる。
クリアランス(clearance)または規制免除(exemption)

人工放射性物質に起因する被曝線量が「自然界の放射線レベルと比較して十分小さく」また「人の健康に対するリスクが無視できるものである」ならば、規制の枠組みから外しても良いという考え方をクリアランス(clearance)と呼ぶ[21]。また、放射性物質として扱う必要のないものを区分するレベルをクリアランスレベル(clearance level)と呼ぶ[22]

クリアランス制度が適用される放射性物質を含むものは、その定義より人の健康に対するリスクは無視できる程度であると言うことができる[23]

日本においては1997年から原子力安全委員会は、IAEAの技術文書[24]に示されたクリアランスレベル算出の考え方に基づき、発電用原子炉(軽水炉、ガス炉、試験研究炉)などを対象として委員会報告書をとりまとめた[25][26]
規制除外(exclusion)

自然放射性物質[27]による被曝のように「規制が不可能で規制のしようがない」または「規制をしても効果がほとんどない」ならば、規制の対象にしないことを規制除外(exclusion)と呼ぶ[28]

規制除外廃棄物は、その定義から規制の対象とはならないが、かといってクリアランス制度の対象とは限らないので人の健康に対するリスクが無視できる程度の廃棄物とは言い難い。
核燃料廃棄物の処理・処分

核燃料廃棄物は、便宜上その発生源に応じてさらに次のように分類される[29]。発電所廃棄物:原子力発電所の運転、保守、解体に伴って発生する廃棄物をいう[30]。高レベル放射性廃棄物:使用済み核燃料の再処理における溶解に使った硝酸を主とする廃液及びその固化体をいう。TRU廃棄物:MOX燃料加工や使用済み核燃料再処理の運転・保守の結果発生する超ウラン元素(TRU)で汚染された廃棄物をいう[31]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:64 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef