核分裂性物質
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核分裂性物質(かくぶんれつせいぶっしつ、: fissile material)とは、熱中性子との相互作用によって核分裂を起こす物質の総称を言う[1]。主にウラン235(235U)とプルトニウム239(239Pu)のことを指す[2]
概要

熱中性子以上の運動エネルギーを持つ中性子からなる環境で連鎖反応を持続できる物質を核分裂性物質(fissile material)と呼ぶ。熱中性子炉及び原子爆弾のエネルギー源(核燃料)として主に用いられる。核分裂性物質として重要なのは235Uと239Puである[注釈 1]

核分裂連鎖反応の燃料として役立つ物質であるためには以下の条件が必要である。

原子核の結合エネルギーの曲線上で核分裂連鎖反応が可能な領域にあること(すなわちラジウムより原子番号が大きいこと)。

中性子捕獲によって核分裂を起こす確率が大きいこと。

核分裂の際に平均2個以上の中性子を放出すること。

十分長い半減期を持つこと。

それなりに十分な量が利用できる(希少過ぎない)こと。

なお、核分裂性 (fissile) という語は核分裂可能 (fissionable) という語とは区別される。代表的な例として、ウラン238(238U)は高速中性子以上であれば核分裂を起こす[注釈 2](他に自発核分裂も起こす)が熱中性子以下では核分裂を起こさず、核分裂可能な物質であっても核分裂性物質とは呼ばれない[注釈 3]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ウラン233プルトニウム241、そしてネプツニウム237も核分裂性だが、これらは核燃料には利用されていない。この他にもいくつかの超ウラン同位元素が核分裂性であることが知られており、これらの核種は全て原子番号が偶数で質量数が奇数である。これらの例として以下の核種がある。

ネプツニウム237[1]

キュリウム244[2]

アメリシウム241

^ 238Uの高速中性子核分裂はある種の高速増殖炉ではエネルギー出力のかなりの部分を担っている。しかし238Uはそれ自体では臨界に達することはないため、これらの物質を軽水炉といった熱中性子炉で利用する際には連鎖反応を維持するために核分裂性物質も必要となる。
^ 核分裂性物質は熱中性子によって核分裂を起こす物質であるが、核分裂可能な物質は熱中性子以上の運動エネルギーを持つ中性子(高速中性子、超高速中性子など)であれば核分裂が可能な物質を指す。すなわち、核分裂性物質は全て核分裂可能だが、核分裂可能な物質の全てが核分裂性物質であるわけではない。専門家の中には、核分裂可能という語を核分裂性物質以外の物質のみを表す語として限定的に用いる人々もいる。

出典^ 用語辞典(1974) p.55 『核分裂性物質』
^ 発電工学(2003) p.186

参考文献

吉川 榮和、垣本 直人、八尾 健『発電工学』(社)電気学会〈電気学会大学講座〉、2003年。 

原子力用語研究会 編 編『図解 原子力用語辞典』(新版)日刊工業新聞社、1974年。 

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