この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
株主代表訴訟(かぶぬしだいひょうそしょう)とは、日本の株式会社において、株主が会社を代表して取締役・監査役等の役員等(下記参照)に対して法的責任を追及するために提起する訴訟のことである(b:会社法第847条
)。会社法では、責任追及等の訴えという。会社法や同法施行前の旧商法会社編自体には、「株主代表訴訟」という文言はない。つまり法令上の用語ではなく、俗称である。略して、単に代表訴訟と呼ばれることもある。また、アメリカ法における名称の直訳である派生訴訟という用語も用いられる。会社法では、この訴訟を「責任追及等の訴え」という語で呼ぶことになった。しかし、すでに世間に「株主代表訴訟」という語は定着したため、報道や会社法実務などにおいてもこの語がよく用いられている。 通常、株式会社においては取締役会(取締役会が設置されていなければ取締役)が、会社の意思決定を行ない、また取締監督する。しかし、取締役間の馴れ合いによって取締役の責任追及がなされない恐れがある。また、会社が取締役の責任を訴訟によって追及する場合には、監査役(監査役設置会社の場合)が会社を代表するものと定められているが、監査役も会社内部の人間であるため、取締役との個人的な関係などからこれを怠る可能性も考えられる。このため、株主が会社に代わって取締役の責任を追及する訴訟を提起できるようにしたものである(民事訴訟における法定訴訟担当
概要
制度趣旨
株主代表訴訟においては、原告が株主、被告が取締役となるが、訴えの内容としては「取締役○○は株式会社××に対して△△円支払え」などといった形になり、原告である株主には直接の利益はもたらさない。訴えによって利益を得るのは会社であり、原告自身が直接に利益を得るわけではないことに注意が必要である(原告は、役員等の賠償により会社の損害が回復され、株価が上がるという間接的な利益のみを得る)。 原告となり得る株主は、公開会社においては、6か月前から引き続き(訴訟終結時まで。一般的には口頭弁論終結時までと解されている。)株式を有する株主である。6か月前からという期間は、各会社の定款によって、6か月より短い期間を定めてもよい(847条
原告となる株主
被告となる役員等には、発起人・設立時取締役・設立時監査役・取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人・清算人が該当する。旧商法より、対象となる役員が拡大している。
旧商法においては、株主代表訴訟の規定は取締役について定めたもので、それを発起人、監査役、委員会設置会社における執行役、および清算人に準用していた。その趣旨は、取締役に対する代表訴訟の場合と同様で、事後的な責任追及を可能とすることにより株主の会社経営に対する参加と監督を強化し、これによって経営健全化を担保するものである。さらに、旧有限会社の社員による取締役、監査役、および清算人に対する訴えにも準用された。有限会社に株主は存在しなかったので「株主代表訴訟」ではなかったが(いうなれば社員代表訴訟)、趣旨は株式会社におけるそれと同一であった(なお、現在、有限会社と名乗ることのできる特例有限会社は、法律上は株式会社である)。 6か月前から引き続き(訴訟終結時まで。一般的には口頭弁論終結時までと解されている。)株式を有する株主は、会社に対して書面をもって、取締役の責任を追及する訴訟(会社による責任追及等の訴え)を提起するよう請求することができる。 株主が請求をしたにもかかわらず、会社が60日以内に訴訟を提起しない場合、当該株主は、会社の代わりに、自らが原告となって訴訟(株主による責任追及等の訴え)を提起することができる。ただし、60日間を待つと会社に回復不可能な損害が生じる場合(会社の債権が時効にかかるなど)には、会社への請求なしに直接訴訟を提起できる(847条3項5項)。
手続