枢密院勅令
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枢密院の命令(Order of Council)としての「枢密院令」とは異なります。

枢密院勅令(すうみついんちょくれい)または執行院勅令(しっこういんちょくれい)(英:Order in Council)は、多くの国(典型的には英連邦諸国)における制定法の一種である。イギリスにおいては、この制定法は、枢密院(Privy Council)の助言と承認により女王の名において(「枢密院における女王(Queen-in-Council)」)制定されるが、他の国においては用語法は異なり得る。この語は、日本語では(イギリスの場合)「枢密院令」(すうみついんれい)と訳すことが多いが、女王ではなく枢密院の命令としての枢密院令(Order of Council)と混同してはならない。
目次

1 裁可

2 種類、利用方法および用語法

2.1 大権勅令

2.2 行政委任立法としての枢密院勅令ないし執行院勅令


3 議論を呼んだ利用例

3.1 カナダ

3.2 イギリス


4 関連項目

5 脚注

6 外部リンク

裁可

枢密院勅令または執行院勅令は名目上は女王によって制定されるが、実務上、国王裁可は形式的なものでしかない。実際になされているのは、政府の代表者(一般には閣内大臣か枢密院議長(Lord President of the Council))が政府によって起草された枢密院勅令をまとめて女王の面前で読み上げ、女王は各枢密院勅令が読み上げられるごとに「承認された。(Approved.)」と述べるのである。こうして勅令は効力を有することになる。
種類、利用方法および用語法

枢密院勅令には主として2種類のものがある。枢密院における女王による国王大権の行使としての枢密院勅令と、議会の制定した法律(Act of Parliament)に従って制定される枢密院勅令である[1]

イギリスにおいては、枢密院勅令は、枢密院(Privy Council)の助言と承認を得て女王の名において(「枢密院における女王(Queen-in-Council)」)制定される。カナダの連邦政府においては女王枢密院(Queen's Privy Council for Canada)の助言と承認により総督(Governor General)の名において(枢密院における総督(Governor-General-in-Council))、カナダの各州政府においては執行院(Executive Council)の助言と承認により副知事の名において(執行院における副知事(Lieutenant-Governor-in-Council))、その他の国・地域では、執行院の助言と承認により知事または総督の名において(執行院における知事(Governor-in-Council)または執行院における総督(Governor-General-in-Council))、それぞれ制定される。ニュージーランドでは、執行院勅令は政府の決定に対して効力を与えるために求められる。議会の制定する法律(Act of Parliament)を別にすれば、枢密院勅令または執行院勅令は、政府が法的効力を要する決定を実施するための主たる方法である。
大権勅令

国王大権により制定される枢密院勅令は、第一次立法であり、その権限につき何らの制定法に依拠するものでもないが、法律(Act of Parliament)によってこれは変更され得る[2]。この種の枢密院勅令は、国王大権の一部を構成していた分野を制定法が浸食するにつれ、時の経過とともにあまり通常ではなくなってきた。

今なお国王大権に属し、そのため大権による枢密院勅令によって規制される事項には、国王の官吏に関するものがあり、例えば、公務員の服務規程、特殊法人(Crown Corporation)の長の選任、イギリスの海外領土の統治、イングランド国教会の人事および国際関係のものなどがある。

伝統的に、枢密院勅令は首相による政治任用の方法として用いられてきたが、単に命令の形で立法を行うためにも用いられる。しばしば緊急時には、政府は枢密院勅令によって直接に立法を行い、通常の議会の手続を踏まないこともできるが[3][4]、この種の枢密院勅令は、緊急事態の終了に伴って廃止されない限り、結果的には伝統的な立法過程に従って法律の形式を与えられる。しかしながら、この権限は、後に制定法によって、民間非常事態法(Civil Contingencies Act)に基づいて枢密院勅令を制定する権限に置き換えられた。

イギリスの枢密院勅令は時として、議会の関与なくイギリスの海外領土に適用のある裁判所の判断を実効性をもって覆すために用いられ得る。イギリス国内においては、裁判所の判断は、形式的には法律(Act of Parliament)か上級の裁判所の判断によってのみ上書きされ得る。

英連邦の他の国においては、枢密院勅令ないし枢密院勅令は、議会による承認を要しない内閣または執行府の判断を実行するために用いられる。
行政委任立法としての枢密院勅令ないし執行院勅令

行政委任立法としての枢密院勅令ないし執行院勅令は、行政委任立法(Statutory Instrument:イギリスにおいては1946年行政委任立法法(Statutory Instruments Act 1946)によって規制される。)の一形式に過ぎず、単なる行政委任立法よりも多くの方式を要する。この種の枢密院勅令ないし執行院勅令は、多くの重要な行政立法において用いられる傾向にあり、その利用は拡大しつつある[要出典]。あらゆる行政委任立法と同様に、議会の両院に提出されることだけが求められるが、下院(イギリスとカナダにおいては庶民院(House of Commons)、その他の王国では代議院(House of Representatives))または上院(イギリスでは貴族院(House of Lords)、その他の王国では元老院(Senate))のいずれかの決議によって無効化され得るか(消極的決議手続(negative resolution procedure))、または、いずれかの院もしくは(例外的に)両院の決議による承認が求められる(積極的決議手続(affirmative resolution procedure))。前述のように枢密院勅令ないし執行院勅令の利用は近年拡大しており、例えば1998年スコットランド法(Scotland Act 1998)の規定によれば、枢密院勅令案は、一定の場合には、ウェストミンスターの議会に提出されるのと同様の方法で、スコットランド議会に提出されることがある。2007年からは、ウェールズ議会に提出される立法は、積極的決議手続を経た後に、枢密院勅令によって制定される。

この種の枢密院勅令または執行院勅令は、通常、次のような文言を含む。


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