枕営業
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対象者と一夜を共にして仕事を取る

枕営業(まくらえいぎょう)とは、業務上で付き合いのある人間同士が性的な関係を築くことによって、物事を有利に進めようとする営業方法のことである。
概要

」とは、本来は就寝に使用する代表的な寝具の1つにすぎないが、この言葉が「寝る」ことの換喩となっているため、次第に性行為売春などの意味合いで用いられるようになった。古くは、江戸時代における「枕芸者(まくらげいしゃ)」や「枕附(まくらつき)」、「枕金(まくらきん)」などの隠語、同衾(どうきん=一緒の布団で寝ることで転じて性交の意味)を意味した「枕を交わす」や「枕を重ねる」といった言葉の用法などに見ることができる[1][2][3]

隠語の「枕営業」は現代において、特に性的な魅力(セックスアピール)や擬似的な恋愛(感情労働)などを利用することで成り立つ業種、ホストクラブキャバクラなどの水商売風俗店芸能界マスメディアに関連する業種などで多く使用されている隠語である。

いまでは世間的に広く知られている隠語であるため、一般の業種やインターネット上の会話などでも通用する隠語となっている[4]

枕営業は、業務上の利害関係にある人間同士が性的な関係を築き、例えばセックスを交換条件にして物事(交渉や契約などの商行為)を有利に進めたり利益を得ようとする営業方法であるため、不道徳不正行為と見られやすく、それに係わった人間や組織(会社)などを主に揶揄したり侮蔑する目的で使用される場合が多い。つまり、性的な関係を構築する方法をそれなりの実力が必要な営業手法と見做さず、「実力によらない、ルール外の営業手法」とみなす文化が多く存在している。なお、交換条件としてのセックスについては、双方の合意による和姦の場合もあれば、片方からの強制(強要)や職権の乱用(セクシャルハラスメントパワーハラスメント)による強姦の場合もある[4][5][6][7]

ただし、和姦と強姦の境界線を厳密に定義したり立証することは困難であるため、マスメディアなどで報道される際は根拠のない噂話都市伝説誹謗中傷風評被害といった名誉毀損の可能性を含む悪質なゴシップとなることも多い。また、和姦の場合は、結果的に愛人といった恋愛感情が含まれる関係に発展する場合がある。一方で、金銭の授受や利益誘導などが立証された場合は、裁判などで売買春行為としてみなされる場合もある(後述の#判決事例も参照)[8]
類義語

枕営業の類義語には、「肉体を使った接待」を略した「肉体接待(にくたいせったい)」や「肉接(にくせつ)」、「裏接待(うらせったい)」などの隠語がある。また、「裏営業(うらえいぎょう)」や「夜の営業(よるのえいぎょう)」などといった隠語もある[9][10]。俳優への対価の場合、キャスティング・カウチ(en:Casting couch)とも言う。
該当事例

枕営業を持ちかけたり求めたりする人間はある程度の年齢・役職にある男性の場合が多い。ただし、女性の場合や、それらの相手を紹介したり唆したりする第三者が介在するような場合もある[4][5][7]。また、不道徳であることや、賄賂ハニートラップなどの教唆(共犯)となる可能性を避けるため、該当者となる人間自身は枕営業という隠語を直接は口に出さず、交換条件がセックスであることや、それによって得られる利益や本来の目的などは具体的な言葉として明言しない場合もある[6][11]
報道事例
日本

日本の芸能界では古くから枕営業など性接待が行われている。かつては興行を取り仕切る暴力団と関係の深い芸能会社によって、興行などを巡る枕営業・性接待が常態化していた[12]。1970 - 1980年代には、俳優のスケジュールを押さえるため映画会社やプロデューサーが女性を用意して枕営業で接待することが横行しており、当時の芸能界を振り返って歌手の泉谷しげるは「接待を断ると「お前はホモか」などと言われてしまう」「習慣だから。長年そうだったから。俺のちょっと先輩達はそういう習慣できちゃってる」と明かしている[13]

近年の事例は以下の通り。

ジャニーズ事務所の前社長・ジャニー喜多川は、事務所所属の複数の未成年男性タレントに対して、断れば立場が悪くなるなどとして性行為を強要していたとされる。詳細はジャニー喜多川の性的虐待疑惑を参照。

2007年4月、芸能事務所「アーツビジョン」代表取締役の松田咲實が、オーディション面接者の少女(当時16歳)に対して、合格を交換条件に猥褻行為を強要したとして逮捕された。これにより声優業界における枕営業問題が取り沙汰され、大塚明夫小野坂昌也などの男性声優陣がインターネットラジオの番組などで苦言やコメントを述べた[14][15]

2008年11月、芸能事務所「リップ」から解雇通告を受けた女性タレントの小向美奈子が、芸能界で枕営業が常態化していたとして告白記事が週刊誌『週刊ポスト』に掲載され、後追いの報道やインターネットで取り沙汰された[16][17][18]

2009年8月、グラビアアイドル立花麗美が、旧芸名の橘麗美時代に所属していた芸能事務所から猥褻行為を強要されていたとして告白記事が写真週刊誌フライデー』に掲載され、枕営業として取り沙汰された[19]

2010年6月、寺田千代乃アートコーポレーション社長の夫で当時同社の会長であった寺田寿男が芸能プロダクション社長から紹介された16歳の女子生徒に対し、芸能界入りと引き替えにわいせつな行為に及んだとして警視庁が東京都青少年健全育成条例違反(淫行)の容疑で書類送検された[20][21]

2010年8月、芸能事務所「アヴィラ」との契約解除について法廷で争っていた女性タレントの眞鍋かをりが、準備書面において事務所側や男性オーナーによる猥褻行為の強要があった旨を暴露している、などとしてスポーツ新聞東京スポーツ』に掲載され、枕営業として取り沙汰された[22]


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