東日本大震災による電力危機
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東日本大震災による電力危機(ひがしにほんだいしんさいによるでんりょくきき)では、2011年3月11日東日本大震災以降、地震と津波で発電所などの電力設備が被害を受けたこと、また福島第一原子力発電所事故後に日本国内の原子力発電所が安全審査のため停止していることなどによって発生している、電力への影響を述べる。

震災直後の2011年3月は設備被害や原発事故に伴う電力供給低下により東京電力管内で輪番停電実施を伴う電力危機が発生、同年夏季には原発停止の影響が大きくなる中東北電力・東京電力・関西電力などの管内で、2011-2012年冬季には原発停止により関西電力・九州電力管内でそれぞれ節電を実施した。

2012年夏季以降も供給不足が懸念され節電が実施された一方、原発安全審査の妥当性、地元同意を主とした再開の是非、日本の原子力政策エネルギー政策などが議論されている。福島第一原子力発電所の事故については「福島第一原子力発電所事故」を参照
概要日本の電力網。明治時代に初導入された交流発電機の製造国が、東西で異なっていた事に由来し、東日本の商用電源周波数は50Hz、西日本は60Hzと異なる。融通可能な電力に余裕があっても、周波数変換所の能力が2011年3月現在100万kWに限られている[1]ため、これを超える電力を東西間で融通することは出来ない。

2011年3月11日東北地方太平洋沖地震が発生し、東北・関東の広い範囲で停電が起きた。東京電力管内では、茨城県全域など、405万世帯が停電した[2][3]東北電力管内では、3月11日の地震発生2時間後である午後5時時点で青森県秋田県岩手県全域、および山形県宮城県のほぼ全域、福島県の一部地域(福島市伊達市伊達郡など)が停電し、東北地方での停電は全体で約440万世帯にのぼった。

地震と津波で複数の発電所が停止したため、東京電力と東北電力では供給できる電力が不足した。電力の需要と供給のバランスが崩れると、管内全体の大規模停電につながる恐れがあった。そのため、両社管内での電力使用抑制を両社・日本国政府が呼びかけて需要の抑制を図ったほか、被災した発電設備や電力流通設備の復旧、被災していない電力会社からの融通を実施した(商用電源周波数の違いにより、西・中日本からの融通には限界があり)。しかしピーク時の需要超過が予想されたため、東京電力と東北電力の管内では3月14日から、供給不足に陥ると予想される時間帯に地域を区切って順々に停電させる、輪番停電(計画停電)の実施の可能性があることを発表した。

東京電力の管内では、3月14日から28日にかけて計画停電を行った。周知の方法や区割り等を巡って混乱が発生したほか、停電に伴って社会活動全般に影響が生じた。東北電力の管内では、他社からの融通などで供給を確保し、実施せずに済んだ(そもそも被災規模が大きく、需要回復が遅れていた)。その後は供給回復と需要抑制によって、計画停電を行わずに済むレベルで推移している(2011年末現在。なお両社では、需要が逼迫した場合には再び実施する可能性があるとしている)。

電力需要が少ない時期にあたる春は上記のように乗り越えたが、冷房などにより電力需要が年間のピークに達する夏季には再び供給不足に陥る可能性が懸念されたことから対策が検討され、政府は5月13日に東北電力・東京電力管内において夏季のピーク時間帯で需要の15%削減(ピークカット)を目指すことを発表した。また、契約電力500kW以上の大口需要家に対して電気事業法第27条に基づく法的拘束力のある「電力使用制限」を発動することを発表し、7月1日から9月上旬にかけて実施した。対象地域では大口需要家の企業を中心に様々な節電施策を実施し、家庭などでも社会運動として節電を行った。

一方で、福島第一原子力発電所事故によって原発の安全性に対する危機が高まったことで、日本国内各地の定期検査中の原子炉の再稼働が延期されはじめたほか、5月には運転中だった中部電力浜岡原発の4, 5号機を内閣総理大臣菅直人の要請により運転停止した。再稼働延期は徐々に増加していき、2011年2月に71%前後だった原発稼働率は、2011年12月には15%まで低下している[4][5]。そのため、震災の影響を直接受けていないが原発依存度の高い関西電力九州電力で、電力需要が夏季に準じてピークに達する冬季に、自主的な節電要請を行う事態となった。
発電所の被害
東京電力詳細は「福島第一原子力発電所事故」および「福島第一原子力発電所事故の経緯」を参照

地震後、福島第一原子力発電所の稼働していた1 - 3号機、福島第二原子力発電所の1 - 4号機が地震により停止した。福島第一原子力発電所の4 - 6号機は定期検査で停止中だった。福島第一原子力発電所では地震の影響で冷却水を供給するための電力を確保不能な状況に陥った[6]。その後、原子炉格納容器内の圧力上昇、弁からの放射性物質の排出、水素爆発による原子炉建屋の崩壊、第一原発及び第二原発の周辺住民への避難指示が出されるなど[7]、重大な原子力災害へと進展した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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