東日本大震災における放送関連の動き
[Wikipedia|▼Menu]

東日本大震災における放送関連の動き(ひがしにほんだいしんさいにおけるほうそうかんれんのうごき)では、2011年平成23年)3月11日に発生した東日本大震災における、日本国内のテレビ放送ラジオ放送関連の動きをまとめる。
概説

2011年3月11日14時46分(JST)に東日本大震災が発生したことにより、直後から報道特別番組が編成されたのを皮切りに、テレビ番組の編成などにも過去に例がないほどの大きな影響が生じた。発生直後から3月14日未明まで、NHK民放各局とも通常番組を休止し、60時間近くを震災報道に割いた。このうちNHKでは最大の報道態勢となり、発生から2週間で300時間以上にわたり報道した。

東北関東地方では放送局自体も被害を受け、特に震度6クラスの揺れに襲われた宮城県福島県放送局では、怪我人が出たり床がずれたりするほどの大きな被害を受けた。また、開局からほとんど自然災害の直接的な影響がなかった東京都心のキー局も自らが震度5強の強震に襲われ、一部で被害も生じた[注 1]

震災報道、あるいは震災そのものの影響により、予定された番組の放送中止及び延期が各テレビ局で多数発生した。震災が発生した時期が番組改編でもあったため、レギュラー番組の中断だけでなく、終了予定だった番組の終了の繰り上げ(打ち切り)や延期、新番組の放送開始の延期(あるいは放送中止)、さらには改編特番の放送中止や内容の大幅変更などが行われた。各テレビ局は報道特番と並行してこれらの対応に追われた。また、被害の大きかった3県(岩手・宮城・福島)のテレビ局では、全国ネットの通常番組が再開された後もしばらくの間、一部番組を震災関連の報道特番に差し替える対応をとった。

地震によって東北・関東地方を中心に大規模な停電が発生したため、停電した放送局の多くは自家発電によって放送を続けた。しかし、東北地方では電力の復旧が遅れたことから、自家発電機の燃料が尽きて停波する放送局が多数現れ、特に東北放送(TBCラジオ)東日本放送では親局が一時停波に追い込まれた。

総務省3月15日、同日午前10時時点での被災地域のテレビラジオ放送設備に関して、親局はすべて稼動しているものの、一部の中継局が被災し、テレビ中継局63箇所(茨城23、宮城20、岩手16、山形2、福島2)とラジオ中継局2箇所(福島2)が停波中であることを公表した[1](現在は大津波で流失・完全使用不能となり、事実上廃局となった宮城県の1局を除いてすべて復旧している)。

また、震災によって地上デジタルテレビ放送の普及活動が停止しているほか、被災地域では難視聴地域の共同アンテナの損壊や流失が起きており、これに伴う措置として総務省は、7月24日に予定されていた地上デジタル放送への全面移行を、岩手、宮城、福島の3県については半年から1年延期する方向で調整を開始し[2]、前述の3県や関東、長野で被災し、デジタル・アナログともに視聴できなくなった世帯や施設に対しては、地デジ難視対策衛星放送を視聴できるようにすることを決めた[3]。その結果、岩手、宮城、福島3県の地上デジタル放送への全面移行は、2012年3月31日に延期された。

一方で各テレビ局とも、義援金をはじめ、被災地・被災者への様々な支援活動を行っている。

2012年以降、NHK・民放各局(テレビ東京を除く)は毎年3月11日の14時46分前後に震災特別番組(同日の報道・情報番組の通常放送枠内、あるいは別枠で放送されるものもあり)を放送している。2012年からは国立劇場で開催していた日本国政府主催の追悼式(新型コロナウイルスの感染拡大により中止となった2020年を除く)と被災地からの追悼式を同時に生中継で放送していたが、政府主催の式典が2021年をもって終了したことにより、2022年以降は被災地のみから生中継[注 2]での放送となっている。
震災発生直前から震災発生直後の各放送局の動き

ここでは主に東京を中心とする在京局および関東・東北地方のラジオ局の例を挙げる。

地震の発生時間帯はNHKおよびNNN(日本テレビ系)以外、基本的にローカル編成時間帯であり、系列各局も含め独自編成を行っていたため、NHKおよび日本テレビ系列以外では、在京キー局が特番に入っても同時ネットしていない系列局が大半である。

つまり、在京キー局はあくまで自局の報道の準備が整ったところで切り替える(緊急割り込み)対応を取っていたため、系列局ではキー局から配信されるネットワークモニタを確認した後に遅れて切り替えたケースがほとんどである。また、地震速報のテロップもNHK以外は各放送局の任意送出となっており、在京局が出したテロップがそのまま全国ネットに乗っている訳ではない(NHKのローカル編成時間帯においても同様である)。
テレビ
日本放送協会(NHK)

総合テレビでは『国会中継 第177回国会参議院決算委員会 平成21年度決算決議[4]』の放送中だった。14時46分50秒、自由民主党岡田広議員の政府参考人への質問中に地震が発生し東北地方に緊急地震速報が発表され、緊急地震速報のテロップ(字幕スーパー)とチャイムが流れた。当時参議院第一委員会室内の様子を実況していた佐藤龍文(NHKアナウンサー)が東北地方に緊急地震速報が発表された旨を伝え視聴者に強い揺れに警戒するよう呼び掛けた[5]。その後、国会議事堂でも揺れが始まり佐藤アナが参議院第一委員会室内での揺れについて伝えていたところ、14時48分17秒、東京渋谷NHK放送センターのニュースセンターに切り替わり、スタジオで待機していた伊藤健三(NHKエグゼクティブアナウンサー)が地震情報の第一報を伝えた。その後大津波警報が発表されたことに伴い緊急警報放送を実施し、横尾泰輔(NHKアナウンサー)が津波情報の第一報を伝えた[6]。尚、審議は決算委員長・鶴保庸介により14時50分より休憩となり、そのまま再開される事なく散会した。

Eテレでは第1チャンネルで『NHK高校講座[7]第2チャンネルで『きょうの健康[8] を放送中に地震が発生。総合テレビと同時に(BS波[9][10][11]AM第一[12]AM第二[13]FM[14] のすべてが)緊急ニュースをカットイン(総合テレビの放送をすべてのチャンネルでサイマル(同時)放送)した(NHKニュースセンターの制御卓にある送出開始ボタンが押される事で、NHKの送信している全ての通常放送を強制中断して全波一斉に切り替えるシステム。当時の国内向けは8波だった為、「8波全中」(NHKワールドを含めると「9波全中」)と呼んでいたが、現在は「9波(または10波[注 3])全中」と呼んでいる。

各社の報道ヘリコプターが駐機されていた仙台空港では揺れにより格納庫の扉が破損し、ヘリコプター自体も接触で損傷し離陸できないまま津波の被害を受けた。NHKと契約しているオールニッポンヘリコプターの機体は偶然整備のため外に出されていたことから被害を免れ、当番だったNHK福島放送局のカメラマンが搭乗し離陸、宮城県に襲来した津波の映像を中継している[15][16]。この映像によりカメラマンの鉾井喬は日本新聞協会賞を受賞した[16]
日本テレビ

情報ライブ ミヤネ屋・第1部』を放送中に地震が発生。そのため民放系列では一番早く、また(民放系列)唯一の全国ネットで第一報を伝えた。

『ミヤネ屋』は読売テレビ(大阪府大阪市中央区)制作のため、出演者やスタッフは東北地方に緊急地震速報が発表されたことや地震が発生したことに気づいておらず、たまたま東京都知事(当時は石原慎太郎)の会見場に中継をつないだところ、中継先の中山正敏リポーターが「東京都庁内の会見場で現在地震のような揺れを感じている」と伝え、コメンテーターが「(高層ビルの庁舎の)都庁だからそりゃ揺れるでしょ」とコメントする場面があった。

しかし、地震発生時点で第1部の終盤にさしかかっており、契約上第1部終了の14時55分までに残りのCMをすべて消化する必要があったことから、20秒ほどでCMに入り、更にスポンサー表示を挟む形[注 4]となってCMが長引いたため[注 5]、詳しい情報を伝えるのが遅くなってしまった。ただ、そのスポンサー表示の際に東京汐留の日本テレビの報道フロアの様子や日本テレビ本社屋上の天気カメラ映像が生中継された。CM明けに報道フロアにいた豊田順子(日本テレビアナウンサー)が報道フロアの揺れの状況と地震情報と津波情報の第一報を伝えた。また大阪の読売テレビのスタジオでも揺れが始まり司会の宮根誠司がその旨を伝えた。『ミヤネ屋』は第1部からそのまま第2部に突入するも、開始2分後の14時57分に途中打ち切りとし、『NNN緊急特番 「東北関東大震災関連」』にそのまま移行した[17]

地震についてのテロップは、14時48分30秒。ジングルの途中で出たため、CMに入ってすぐに消えた(このテロップについては関東地方のみ〈日テレNEWS24では全国〉に送出。ただしこれは「ただいま、東京地方で地震とみられる揺れを感じました」という「地震情報」と呼ぶべき内容で、気象庁発表の震度などに関するものではなかった。ほぼ同時に出したTBSでは震度6強の第1報を伝える[注 6]「震度速報」であった)。
テレビ朝日

劇的空間おみやさん』(再放送)を放送中に地震が発生。14時49分1秒に地震速報のテロップを送出(関東地方のみ)し、同番組末尾の『砂の器』の番宣放送途中で大津波警報が発表されたことに伴い緊急警報放送を実施し、『ANN緊急報道特番 「東北地方太平洋沖地震関連」』に移行して東京六本木のテレビ朝日のニュースルームから下平さやか(テレビ朝日アナウンサー)が津波情報の第一報を伝えた[18]
TBSテレビ

3年B組金八先生』(再放送)を放送中に地震が発生。日本テレビとほぼ同じ時間で地震速報のテロップを送出(関東地方のみ)。日本テレビは「地震情報」(上記参照)だったが、TBSは「震度速報」であったため、地震本体の情報としては在京民放で最初に伝えている。その後、日本テレビがCMから明けるおよそ5秒前に東京赤坂のTBSテレビの報道フロアに切り替わり蓮見孝之(TBSアナウンサー)が地震情報と津波情報の第一報を伝えた。

また、津波警報地上波民放で最初に伝えており、テレビ放送としてはSOLiVE24(下記)とNHKの後に続いた。
テレビ東京

『スペシャル!傑作選』(『土曜スペシャル』の再放送)を放送中に地震が発生。14時49分17秒に地震速報テロップを送出(関東地方のみ)。その後、大津波警報発表に伴い緊急警報放送を実施し、東京・虎ノ門のテレビ東京の報道スタジオからテレビ東京の大浜平太郎キャスターが津波情報の第一報を伝えた。
フジテレビ

韓流αタルジャの春』を放送中に地震が発生。報道の初動対応が遅れた事による事故やトラブルが連続した。

具体的には地震速報テロップが送出されず、東京お台場のフジテレビのV9(報道)スタジオに切り替わったものの、V9スタジオの副調整室が完全に立ち上がっておらず、準備中の様子(無人のV9スタジオや新宿情報カメラ、震度地図などの映像)が数秒間連続して放送された。

一旦通常番組に戻した後、準備が整ったところで改めて、『FNN緊急報道特番 「東北関東大震災関連」』に移行して報道センター内のセンターテーブルから境鶴丸(当時フジテレビアナウンサー)が地震情報の第一報を伝えた[19]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:551 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef