東京難民
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東京難民
Refugee in Tokyo
著者
福澤徹三
発行日2011年5月18日
発行元光文社
日本
言語日本語
形態四六判上製本
ページ数552
公式サイト東京難民 福澤徹三|フィクション、文芸|光文社
コードISBN 978-4-334-92752-3

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『東京難民』(とうきょうなんみん)は、福澤徹三による日本小説光文社の『小説宝石』に2007年11月号から2011年1月号まで隔月で連載された[1]

2014年に佐々部清監督、中村蒼主演で映画化された。
概要

著者の福澤は専門学校での講師経験があり、そこで生徒たちがあまり就職について考えないまま卒業してフリーター、そして無職になっていく姿を見たことから、小説で今の経済を伝えようと執筆を決意。「勝ち組・負け組という言葉もあるが、今の世の中は戦う間もなくはじき出されてしまったり、コツコツ真面目にやっていると逆に大変なことになってしまう時代であるということを”東京難民”というタイトルに込めた」と話している。[2]
あらすじ

21歳の時枝修は親からの仕送りで1人暮らしをしながら、時々アルバイトをしたり仲間とつるんだりとなんとなく大学生活を過ごしていた。しかしクラス担任からある日突然、学費がずっと未納であることと、そのせいですでに先月で大学を除籍になっていることを告げられる。学生課に確認すると、随分前から警告はしていたが時枝の父から本人には絶対に知らせないでほしいと口止めされていたという。わけがわからず実家に電話をするが、繋がらない。恋人の吉水晴香に金を借りて地元の北九州に帰るが、父親の職場である設計事務所にはシャッターが下りており、実家にもやはり両親の姿は無かった。代わりに小指が欠けた男2人に「お前のおやじはどこにおるんか」と詰め寄られ、修は脱兎のごとく逃げ出す。

なんとか借金取りらしき男たちを振り切って東京に帰ってきた修だったが、今度はもうすぐ底をつく生活費に頭をかかえる。日雇いでも何でもして稼がなければと頭ではわかっているものの、あれこれ理由をつけて実際に面接にまで行くことはなかった。結局、友達の保坂雄介が働くレンタルビデオ屋の店長の口利きで不動産屋のポスティングのアルバイトを紹介してもらい、働き始める。しかし思ったよりも割に合わない重労働に1日目で嫌気がさし、同業者に「これが早く配り終える必殺技だ」とそそのかされて配らなければならないチラシをまとめてパチンコ屋のゴミ箱に捨てたところ、雇い主にすぐばれて3日目にあっさりクビになる。それまでの給料も返金させられ、家賃が払えないことが決定的に。しかし修は1か月ぐらいは大丈夫だろうと楽観的にとらえ、パチンコで預金の3万円すら使い果たしてしまう。

家賃滞納から1週間後、「賃貸借契約解除の通知書」が届く。なんとかしなければと今度はもう1人の友達・島村政樹からテレアポのアルバイトを紹介してもらい、成績ナンバー1の谷岡にコツを聞いたり練習したりとそれなりにがんばるが、家庭教師の紹介と偽って実は高額な教材を売りつけるという仕事内容に疑問を抱き、雇い主との関係が悪化。やる気もなくなり6日目に退職。まだ研修期間中だったため、思っていた金額はもらえず、やはり家賃は払えない。テレアポの職に就く際に強制的に作らされたカードのキャッシングで金を借り、なんとか滞納していた家賃を払ったものの、「正確には賃貸借契約ではないから借地借家法の話は関係ない」と修の住むマンション「東亜パレス」債務管理部の荒木は容赦なく契約を切って修に強制退去を命じ、修がそれに応じずに出かけてしまうと部屋の鍵を変えて入れなくしてしまった。

家を失った修は雄介の家にしばらく居候するが、ちょっとした一言から関係はぎくしゃくし、雄介との仲を疑った結果、恋人の綾香とも別れてしまう。ネットカフェに寝泊まりしながら、ウリセンのボーイやティッシュ配りの仕事に挑戦するも、直前で逃げ出したり、ズルをして雇い主にばれてクビになるという失敗を繰り返しやはりうまくいかない。治験のアルバイトでは20万円を手にしたが、退院したその日に職務質問され、UFOキャッチャーでとった折りたたみ式のナイフとレンチがついたライトがあだとなり、乱暴刑事の手によって銃刀法違反容疑で逮捕されてしまう。留置場で自分の不運を嘆くが、同室の2人に励まされ、検事には素直に謝って起訴猶予処分としてもらい、釈放。しかしその帰りに行ったショットバーで知り合った瑠衣という女に騙され、ホストクラブで高額請求されてしまう。とても払えないと思った修はトップに頼み込み、ホストとして働いて金を返すことを決意する。

なんとか茜という指名客をものにしてホストを続けていた修だったが、ツケをためていた瑠衣が行方をくらましたことで責任をとらされたホスト仲間・順矢に同情して共に逃亡。建設会社に住み込みで働き始めるも、ヤクザがバックについた店からは逃げられなかった。順矢と共に捕まり、中国船に乗せられそうになる。しかし危機一髪のところで以前留置場で一緒だった張に助けられ、命からがら逃げのびる。再びネットカフェに舞い戻るが、身分証を失った修にはどこも冷たく、闇金でさえキャッシングを踏み倒した修には何もしてくれなかった。河川敷で寝ようとした修は柄の悪い3人の若者に絡まれて暴行を受け、気がついた時にはホームレスの熊西に介抱されていた。

ホームレスとして生活を始めた修は、以前大学の前の公園にいたモスマンにも再会する。彼はホームレス達の間では不思議な力があると言われており、それは時に神の言葉のようにも聞こえた。そして彼は修に、「おまえはもうすぐ正念場だ」と言う。ある日、いつものように路上で雑誌やDVDを売っていると、音信不通だった父が目の前に立っていた。街金から逃げるために母親とは離婚したらしい。仕事も決まったし、帰ってこないかと言われるが、不思議と修の気持ちは醒めていた。――「俺はもうちょっとこっちでがんばってみるよ。」。

今までより一層雑誌売りに力を入れ、そろそろテントも独り立ちしようという頃、あの3人の若者がまたやって来る。防御のために鉄パイプで応戦した修だったが、警察沙汰になって仲間のホームレスの生活が荒らされることを恐れ、彼らとの別れを決意する。修はボランティアとしてホームレス生活を助けてくれていた光本真理に私の部屋来ないかと誘われるがそれを断り、「仕事ならなんだってできる」と、再び新しい一歩を踏み出し、歩き出すことを決意する。
登場人物
主人公とその家族

時枝 修(ときえだ おさむ)
本作の主人公。都心から電車で30分ほどの郊外の街に住んでいる大学3年生、21歳。コンビニでアルバイトしている。高校は県立だったが普通科で1番偏差値が低かった。地元の北九州から大学進学と共に上京し、15万円の仕送りをもらって現在は敷金礼金保証人無しの1Kのマンションに一人暮らし。恋人の綾香が度々来るため部屋は片付いている。一人っ子。喫煙者で、漫画を読みながら物を食べる癖がある。世間知らずで計画性や責任感もなく、大事なことは先送りにする性格。お人好しで楽観的な割にプライドが妙に高い。経済観念に無頓着で少しでも金があればパチンコ等に使ってしまう。
時枝 浩之(ときえだ ひろゆき)
修の父。50代前後。銀縁眼鏡に白髪交じりの髪型。社員は10人にも満たないが、地元で設計事務所を経営している。人前では豪快な性格を装うが、実は心配性。
時枝 恵美子(ときえだ えみこ)
修の母。自分の容姿以外のことについてはとても大ざっぱ。
大学

吉水 晴香(よしみず はるか)
修の恋人。修と付き合ってた頃はショートヘアに薄化粧にあまり飾らない服装をしていた。修より2つ年下の1年生で、修とは春の新入生の歓迎コンパで知り合った。授業には真面目に出る。寮に住んでいる。当初は修をやさしく見守っていたが…。
島村 政樹(しまむら まさき)
修の友達。父親は大手企業の重役で仕送り額も多く、自身も長身と整った容姿を買われてファッション雑誌のモデルとして度々登場している。そのバイトで知り合った女優の卵・怜奈(れな)と同棲中。経済観念は意外にもしっかりしており、金に細かく、10円単位まで割り勘。
保坂 雄介(ほさか ゆうすけ)
修の友達。短髪で、メタボというあだ名がつくほど太っており、女には縁が無い。父親は中小企業のサラリーマンなので仕送りもなく、アルバイトをかけもちして生活費を稼いでいる。お人よし。「コーポ・パインツリー」という木造モルタルの二階建ての2階の一番奥の部屋に家賃3万円で住んでいる。いじられキャラで、修は雄介に優越感を抱いて付き合ってきたが修とは対照的に地味ながら純朴に生きており、次第に修と立場が逆転していく。
野見山 晴夫(のみやま はるお)
修や雅樹、雄介らのクラス担任。小柄なため、「ノミ」というあだ名で呼ばれている。
ポスティング

井尻(いじり)
雄介のアルバイト先であるレンタルビデオ店の店長の知り合い。古びた雑居ビルの1階に不動産屋を営んでいる。50歳くらいでまるまると太った温和な顔をしている。
横手(よこて)
ポスティングをしている時に知り合った同業者。フリーター。パチンコ好き。
テレアポ

峰岸(みねぎし)
雅樹の高校の先輩で2級上。「家庭教師のグッド」という会社でテレホンアポインターとして働いている。前髪に金のメッシュを入れた長髪で、痩せていて色白。20代後半に見える。
谷岡(たにおか)
「家庭教師のグッド」でテレアポとして働く大学1年生で19歳。毎日3件はアポをとるナンバー1。モヒカンで鼻にピアスをしているが、見かけによらず愛想がいい。高校1年生からテレアポのアルバイトを続け、パンクバンドのボーカルをやっている。バンドに専念するため金をためており、現在500万円の貯金がある。
マンション賃貸

荒木(あらき)
修が住むマンションを管理している不動産会社「東亜パレス」債務管理部の男。30代半ばで目つきが鋭い。
松木(まつき)
雄介の家の大家夫婦。婆ちゃんはやさしいが、爺さんはうるさい。
ウリセン

林(はやし)
スキンヘッド。40歳くらいで顔は日焼けサロンで焼いたように真っ黒、筋肉質。ぴちぴちのTシャツを着ているオカマ。バー「ローズ」のマネージャー。
シュン
「ローズ」のウリセンボーイ。ノンケ
綿貫(わたぬき)
「ローズ」の常連客で銀髪を撫で付けた上品な顔だちの初老の男。病院の先生。修を気に入り、ホテルへ誘う。
ティッシュ配り

毛利(もうり)
神田駅前の細長いビルの5階にあるティッシュ配布代行会社「KY企画」支店長。30代後半くらい。髪を短く刈って、金縁の眼鏡をかけており、パッと見はヤクザに見える。前歯が1本欠けているため、笑うとまぬけな印象になる。
軽部(かるべ)
30歳。修と「KY企画」で一緒にティッシュ配りをする先輩。大学卒業後に車の部品を作る会社に就職するも社員と関係がうまくいかず、残業も多いのですぐ辞め、いまやティッシュ配りは7年のベテラン。通行人の間を縫うように移動しては眼にも止まらぬ早さでティッシュを配る姿は一切の無駄がなく、かっこいいとすら思える。再び就職するつもりはない。美少女アニメとゲームが好きで、女は二次元に限ると豪語する。昔はネットカフェに寝泊まりしていたが、今は実家住み。修のことを「修くん」と呼び、毎日昼食を一緒に食べたり何かと世話をやいてくれる。
治験

風間(かざま)
治験仲間。茶髪で色黒、26歳。高卒でクラブのウェイターをしていたが、先月店が潰れたため、治験に応募した。2年前は歌舞伎町でホストをしている時は、月に40万稼ぐこともあった。
姫野(ひめの)
痩せていて色が白い。


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