東京バンドワゴン
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『東京バンドワゴン』(とうきょうバンドワゴン)は、小路幸也による日本の連作短編推理小説のシリーズ。

「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ。」をキャッチコピーに、東京の下町古本屋「東亰バンドワゴン」を経営する大家族・堀田家の面々が、家訓の「文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決」を守り、様々な謎や事件を解決する物語。

79歳の大黒柱、60歳で金髪の現役ロッカー、シングルマザーの長女、嫁の実家と断絶状態の長男夫婦、愛人の子である次男など、堀田家内のことを描いたホームドラマでもある。

2006年より、毎年春に新刊が刊行され、2020年現在、第15作まで刊行されている。本編は各巻とも4編が収録されている。また、4作おきに番外編が刊行されている。

第4作「マイ・ブルー・ヘブン」は、シリーズ全体の語り手・サチの娘時代(終戦後)を描いている。

第8作「フロム・ミー・トゥー・ユー」はシリーズの番外編短編集である。

第12作「ラブ・ミー・テンダー」は秋実と我南人の出会いを描く。

第16作「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」は藍子・マードック夫妻が暮らすイギリスを舞台で巻き起こる事件に東京とロンドンの2か所から堀田家の面々が解決に向けて動く姿を描く。

ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー・2009年12月号)の「読者なんでもランキング・リターンズ!」で、「映像化してほしい小説」の第1位に選ばれた。2013年10月から12月にかけて『東京バンドワゴン?下町大家族物語』のタイトルでテレビドラマ化された。
書誌情報

東京バンドワゴン

2006年4月26日発売、
集英社ISBN 978-4-08-775361-5

2008年4月18日発売、集英社文庫ISBN 978-4-08-746287-6、解説:紀伊國屋書店本町店書店員


シー・ラブズ・ユー

2007年5月25日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775377-6

2009年4月17日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-746424-5、解説:三省堂書店京都駅店書店員


スタンド・バイ・ミー

2008年4月25日発売、集英社、ISBN 978-4-08-771229-2

2010年4月20日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-746557-0、解説:文教堂書店三軒茶屋店書店員


マイ・ブルー・ヘブン(長編)

2009年4月24日発売、集英社、ISBN 978-4-08-771290-2

2011年4月20日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-746686-7、解説:ブックファースト阪急西宮ガーデンズ店書店員


オール・マイ・ラビング

2010年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-771350-3

2012年4月20日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-746825-0、解説:小田急ブックメイツ新百合ヶ丘北口店書店員


オブ・ラ・ディ オブ・ラ・ダ

2011年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775400-1

2013年4月19日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-745056-9、解説:さわや書店フェザン店書店員


レディ・マドンナ

2012年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775409-4

2013年8月21日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-745100-9、解説:文教堂北野店書店員


フロム・ミー・トゥ・ユー

2013年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-771510-1

2015年4月17日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-745305-8


オール・ユー・ニード・イズ・ラブ

2014年4月25日発売、集英社、ISBN 978-4-08-771557-6

2016年4月20日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-745430-7


ヒア・カムズ・ザ・サン

2015年4月24日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775424-7

2017年4月20日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-745567-0


ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード

2016年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775429-2

2018年4月20日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-745725-4


ラブ・ミー・テンダー

2017年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775434-6

2019年4月19日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-745859-6


ヘイ・ジュード

2018年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775441-4

2020年4月17日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-744097-3


アンド・アイ・ラブ・ハー

2019年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775446-9

2021年4月25日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-744232-8



イエロー・サブマリン

2020年4月24日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775453-7

2022年4月21日発売、集英社文庫、ISBN 978-4-08-744372-1


グッバイ・イエロー・ブリック・ロード

2021年4月26日発売、集英社、ISBN 978-4-08-775457-5


短編集収録作品一覧

書籍名収録作品季節主な出来事
東京バンドワゴン春・百科事典はなぜ消える4月末
夏・お嫁さんはなぜ泣くの7月半ば過ぎすずみが青の元へ押しかけて来る
花陽の父親が明かされる
秋・犬とネズミとブローチと10月犬のアキとサチが堀田家の仲間入り
冬・愛こそすべて12月10日 - 12月20日
シー・ラブズ・ユー冬・百科事典は赤ちゃんと共に12月24日 - 12月31日
春・恋の沙汰も神頼み3月17日 -花陽が中学生になる
夏・幽霊の正体見たり夏休み8月11日 -勘一、妹・淑子と60年ぶりに再会
秋・SHE LOVES YOU10月12日 -亜美とすずみ出産、秋実の七回忌
スタンド・バイ・ミー秋・あなたのおなまえなんてぇの秋の終わり頃
冬・冬に稲妻春遠からじ12日20日過ぎ
春・研人とメリーちゃんの羊が笑う4月半ば
夏・スタンド・バイ・ミー7月初め
オール・マイ・ラビング夏・あなたの笑窪は縁ふたつ8月お盆過ぎ
秋・さよなら三角また会う日まで10月半ばかんなと鈴花が1歳になる
冬・背で泣いてる師走かな12月半ば過ぎ - クリスマス紺が大学を辞めた理由が明らかになる
春・オール・マイ・ラビング3月1日 -研人が小学校を卒業する
オブ・ラ・ディ オブ・ラ・ダ春・林檎可愛やすっぱいか研人が中学校に入学する
我南人が友人キースのバンドのワールドツアーに参加する
夏・歌は世につれどうにかなるさ7月の初め青が映画の準主役に抜擢される
秋・振り向けば男心に秋の空かんなと鈴花が2歳になる
冬・オブ・ラ・ディ オブ・ラ・ダ12月の初め淑子が東京の病院に入院後、死去
レディ・マドンナ冬・雪やこんこあなたに逢えたクリスマス
春・鳶がくるりと鷹産んだ4月の終り頃花陽が高校生になる
夏・思い出は風に吹かれて8月某日真奈美、第一子を出産
秋・レディ・マドンナ10月某日かんな・鈴花、3歳になる
オール・ユー・ニード・イズ・ラブ秋・真っ赤な紅葉はなに見て燃える
冬・蔵くなるまで待って蔵書データのデジタル化
春・歌って咲かせる実もあるさ
夏・オール・ユー・ニード・イズ・ラブ
ヒア・カムズ・ザ・サン夏・猫も杓子も八百万玉三郎とノラが死ぬ
秋・本に引かれて同じ舟捨て猫2匹を引き取り、玉三郎とノラと名付ける
冬・男の美学にはないちもんめ
春・ヒア・カムズ・ザ・サン

フロム・ミー・トゥー・ユー

タイトル(語り手)主な出来事
紺に交われば青くなる(堀田紺)紺、22歳の頃の物語。中学2年生の青が、自分だけ母親が違うことを知り、素行に問題が出始める。
散歩進んで意気上がる(堀田すずみ)昭和33年に新人賞を受賞した推理小説が掲載された雑誌を持って、幼なじみの見舞いに行く勘一にすずみが付き添う。
忘れじの其の面影かな(木島主水)マードック・モンゴメリーという人物に薬物密輸疑惑があると聞きつけ、恩義のある堀田家のために木島が真相を確かめる。
愛の花咲くこともある(脇坂亜美)亜美、20歳。趣味の一人旅で北海道を旅行中に盗難に遭い、紺と出会う。
縁もたけなわ味なもの(藤島直也)急に仕事の予定が空いた藤島が、ずっと憧れていた東京バンドワゴンに初めて訪れる。
野良猫ロックンロール(鈴木秋実)我南人が、チンピラにからまれ怪我をしていた秋実を助ける。
会うは同居の始めかな(堀田青)青、25歳。合コンで出会い付き合い始めたすずみと青が結婚に至るまでの物語。
研人とメリーの愛の歌(堀田研人)研人、小学4年生。学校の慈善バザーでメリーと〈東京バンドワゴン・ワゴン〉を実施し、校長先生の心残りを解決することになる。
言わぬも花の娘ごころ(千葉真奈美)小学6年生の花陽が、母の幼なじみである真奈美に実の父について聞き、真奈美が藍子にも誰にも話していなかったことを教える。
包丁いっぽん相身互い(甲幸光)コウが真奈美の友人に「カキのコロッケ」の作り方を教えながら、自身が「はる」で働くことになった経緯を伝えると、真奈美のコウに対する思いが友人から語られる。
忘れものはなんですか(堀田サチ)いつものように賑やかな堀田家の朝食の席、朝刊の配達忘れから、紺がサチに協力してもらい、配達少年のある悩みを晴らす。

用語
東亰バンドワゴン(とうきょうバンドワゴン)
東京のやたらとお寺の多い下町の一角に、1885年明治18年)に創業された老舗の古本屋。明治大正昭和初期、若き文士達の梁山泊のようになっていた時代があり、錚々たる顔ぶれの作家たちが〈東亰バンドワゴン〉を贔屓にし、店の目録にエッセイや短編を寄稿した。店名は初代が坪内逍遥に名付けてもらったもの、店の文机はかつて森?外が使っていたものと伝わっている。隣でカフェも営んでいる。カフェにも一応〈かふぇ あさん〉という名があるが、2つあるのは紛らわしかろうと、古本屋もカフェも〈東亰バンドワゴン〉で通っている。
堀田家家訓
堀田家には家訓がいくつもあり、全員がなるべく守るように努めている。帳場の後ろの壁に墨文字で書かれている〈文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決〉は、明治に新聞社を興そうとした堀田草平が当局の弾圧により志半ばで家業を継いだ際に、世の森羅万象は書物の中にある、という持論から導き出したものである。他に、〈煙草の火から目を離すな〉〈食事は家族揃って賑やかに〉、トイレには〈手洗励行〉など様々。
呪いの目録(のろいのもくろく)
夏目漱石、森?外、石川啄木樋口一葉二葉亭四迷梶井基次郎などが寄稿したエッセイや短編が含まれる〈東亰バンドワゴン〉の目録。昭和初期には、これを巡って強盗殺人事件が起こり、それ以降、堀田家の災厄の元凶〈呪いの目録〉と呼ばれ、金庫に仕舞われっぱなしになっていた。
登場人物

年齢は初登場時に準ずる。
堀田家堀田家家系図(第1巻『東京バンドワゴン』時点)

     堀田達吉
(初代店主) 

         

     草平
(二代店主) 

         

     勘一・79歳
(現店主) サチ
(享年76) 
  
           

   ? 我南人
(60歳) 秋実
(故人)   
    
                     
     
 牧原みすず
(槙野すずみ) 青
(26歳) 藍子
(35歳) 紺
(34歳) 亜美
(34歳) 
   
                    

         花陽
(12歳)   研人
(10歳) 

堀田家家系図(第7巻『レディ・マドンナ』時点)

    堀田達吉
(初代店主) 

        

    草平
(二代店主) 美稲
(故人) 
  
              
      
    淑子
(故人) 勘一
(現店主) サチ
(享年76) 
  
              

  池沢百合枝     我南人  秋実
(故人)       脇坂和文 佳代子
           
                                      
               
         槙野春雄
(故人)  藍子 マードック 紺 亜美 修平 三迫佳奈 
       
                                  
      
    青 すずみ 花陽      研人 かんな 
  
          

      鈴花 


堀田 勘一(ほった かんいち)
〈東亰バンドワゴン〉の三代目店主。79歳。ごま塩頭。頑固で偏屈。筋金入りの病院嫌い。
堀田 サチ(ほった さち)
本作の語り手。勘一の妻。16歳で堀田家に嫁ぎ、良妻賢母として堀田家を支えてきた。2年前に76歳で死去し、現在は空から家族を見守っている。
幽霊のため、知っている場所・行ったことのある場所ならどこへでも一瞬で飛んでいける。藍子・紺・青の名付け親。元は子爵家の長女。本名は五条辻咲智子だったが、理由があり堀田サチを名乗りそのまま勘一と結婚した。その経緯については「マイ・ブルー・ヘブン」を参照。
堀田 我南人(ほった がなと)
勘一の一人息子。60歳。金髪の長髪。ロックバンド〈LOVE TIMER〉のボーカルで「伝説のロッカー」と呼ばれるロックンローラー。街を歩けばサインを求められることもある。いまだにふらふらとしている放蕩息子で、ふっと姿を消していたかと思うと、人間関係のごたごたやいざこざを解決する鍵をしっかり探してくる。今なおロック魂は健在で、「LOVEだねえ」が口癖。高校在学中の18歳の時に、日比谷野外音楽堂の他人のライブに飛び入りしデビュー。その場にいた全ての観客を熱狂の渦に巻き込み、とぼけた言動と破天荒なルックスは日本中のPTAを敵に回し、日本中の若者たちのヒーローになった。「ロックは反抗だ」と言いながら、色々と悪事に手を染め警察の厄介になったこともしばしばあったが、正義感が強く、無関係の他人に迷惑をかけるようなことはなかった。学費を使い込み滞納し、早稲田大学を除籍になった。「背で泣いてる師走かな」で甲状腺の病気を患っていることを明かし、手術を受ける。その後しばらくは歌うことから距離を置いていたが、「オール・マイ・ラヴィング」で世界的なロックスターで古くからの知人でもあるキースからの手紙をアメリカからわざわざ来日したハリーから受け取ったことを機に、ゲストとして彼らのワールドツアーに同行する。
堀田 秋実(ほった あきみ)
我南人の妻。故人。夫の愛人の子である青を受け入れ、藍子や紺と分け隔てなく育てた。堀田家の太陽のような人だったが、約5年前にで他界、家族は崩壊寸前にまで荒んだ。小さい頃から身寄りがなく養護施設で育ち、何度も家出を繰り返し、夜の街をふらついては警察の厄介になっていた。喧嘩をする時に、指の間にカミソリを挟んでいたため、地元の警察官の間で〈二枚刃のアキ〉という二つ名を付けられていた。チンピラにからまれていたところを我南人に助けられたのがきっかけで結婚まで至った。
堀田 藍子(ほった あいこ)
我南人の長女。35歳。昭和47年生まれ。画家シングルマザー


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