条項
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

法令の基本形式(ほうれいのきほんけいしき)では、日本における法令の基本的な形式ないし構造について解説する。なお、この基本形式は法令に限らず、例えば公文書、民間の各種団体が定めた規則、規定(JR旅客営業規則など)や契約書などにおいても一部同様の体裁が採られることがある。
目次

1 基本構造

2 公布文

3 法令番号

4 題名

5 前文・制定文

5.1 前文

5.2 制定文


6 目次

7 本則

7.1 編、章、節、款、目

7.2 条

7.2.1 見出し

7.2.2 条名

7.2.3 項

7.2.4 号



8 附則

9 別表等

10 署名・連署

11 脚注

11.1 注釈

11.2 出典


12 関連項目

13 参考文献

14 外部リンク

基本構造

法令の形式について明文化された規定はないが、法令が官報に掲載される際には先例に準拠して一定の方式が確立しており、それが基本構造と解釈されている。

例えば法令のうち、法律についていえば、次のような構造になっている。

公布文(御名、御璽、年月日、副署

法律番号

題名

目次

本則

附則

別表等

署名連署

法律によっては題名の次に制定文、本則の前に前文が入るものがある。題名から別表等までが法律の構成要素であり、前後の公布文、法律番号、署名・連署は法律の中に含まれない。
公布文

公布文は、法令を公布する旨の公布者の意思を表明する文書である。法令公布時にその冒頭に置かれるが、法令そのものの一部を成すものではない。

法律と政令の公布者は天皇とされているため、公布文には天皇が親署の後、御璽が押され(官報では「御名 御璽」と記される)、主任の国務大臣内閣総理大臣連署・副署する。旧憲法下では天皇が裁可および公布をする旨を述べる上諭(じょうゆ)が公布文に相当する。詳細は「上諭」を参照
法令番号

法令番号は題名より前に置かれ、法令そのものの一部を成すものではない。法律の場合は法律番号、政令の場合は政令番号、府省令の場合は府令番号や省令番号と呼ばれる。詳細は「法令番号」を参照
題名

その法令の規定している分野や内容を表した名称のことであり、法令の一部を構成するものである。法律であれば「○○法」「○○に関する法律」といった題名が付されている。

なお、題名が付けられるのは原則であって、題名のない法令も存在する。例えば、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律には題名がなく、公布文中から引用した字句を題名の代わりに用いている。こうしたものは「件名」と呼ばれている。
前文・制定文
前文

本則の前に任意に置かれ、法令の趣旨、目的、基本的立場を表明する文章である。日本国憲法教育基本法の前文が有名である。

前文は法令の一部を構成するため、その改正には法令の改正手続を経なければならない。前文が改正された法令には、国会等の移転に関する法律、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律がある。「前文」も参照
制定文

法律の場合には、既存の法律の全部改正の場合に題名の次に置かれて、廃止制定ではなく全部改正である旨を示す文章を指す。

政令の場合には、題名の次に置かれて、その政令を制定する根拠を明らかにするための文章を指す。

府省令の場合は、法令番号の次、題名の前(すなわち、政令における公布文の位置)に置かれるものであり、この場合、この制定文は当該府省令そのものの一部を成すものではない。

条例の場合には、題名の次に置かれることもあれば、条例番号の次、題名の前に置かれることもある。

目次

条文の多い法令において、その理解と検索の便を図るために置かれるものであり、本則と附則の別、本則の中の章、節、款等の区分と、それらに属する条文の範囲を(第○条 - 第○条)[注釈 1]といった形で括弧で括って示したものである。なお、法令に別表、様式などがあってもそれらは目次には記されない。
本則

その法令が本来の目的とする事項についての実質的な規定が置かれる部分である。
編、章、節、款、目

条文が多い法令について、条文を論理的な体系に基づいて区分する必要がある場合には、まず章(しょう)で区分し、章の中を細分化する必要がある場合には、章の中に節(せつ)を設ける。さらに細分化する必要がある場合にはレベル順に款(かん)、目(もく)といったものを設ける。

章よりさらに上位レベルで区分を設ける際には編(へん)が設けられる。編が設けてある法律には民法刑法商法民事訴訟法刑事訴訟法地方自治法所得税法法人税法などがある。

章などには標題が付され、例えば「第○章 ○○」「第○節 ○○」のように表記される。

条(じょう)は、本則を構成する基本単位となるものである。1つの条は原則として見出し、条名、項で構成される。項は必ず設けられるが、古い法令や条文が少ない法令には見出しや条名は付されないことがある(見出しと条名がない法律には失火ノ責任ニ関スル法律元号法などがある)。また項の中には号が設けられることがある。
見出し

「見出し」は、条名の前に、その条の内容を簡潔に掲げた字句のことであり、(○○)と括弧で括った形で表記される。この見出しも法令の一部を構成するものである。現在の法令では見出しの後に改行が入って条名が記されるが、古い法令では見出しそのものがないか、条名の後に改行なしで見出しが付されているものもある。

見出しは、その条の内容の理解と検索の便のために設けられ、通常は条のみに付されるが、附則が項のみで構成されている場合には、その項に付されることがある。

また、見出しは原則として1条ごとに付けられるが、連続する複数の条が同じカテゴリーに属する事項を規定している場合は、それらの条群の最初の条の条名の前に一つだけ付されることがあり、これを「共通見出し」と呼んでいる。

前述した章、節などに含まれる条が1つしかない場合は、その章や節の標題を見れば条の内容がわかるために、見出しを設けないこともある。例として、民法第2編第2章第4節「準占有」には、条が第205条の1つしかないため、この第205条には見出しが付されていない。

古い法令で見出しがない場合は、市販の法令集(六法全書など)に掲載する際に、出版社が見出しを付けることがある。この場合、凡例で出版社が創作した見出しである旨が区別できるようになっている。
条名

条名は、ある条を特定するための名称のことであり、本則の中で一意に定められる。通常は「第○条」と番号で表記される。複数の条がある場合には、第一条から順に漢数字で番号を振ってゆくのが正式であるが、横書きの文書で法令を表記する際に漢数字をアラビア数字に置換する例も見られる。

条と条の間などに新たな条を挿入する際には、その挿入した条の条名に枝番号を付して、「第○条の○」といった形で表記する。以下は、条の挿入による枝番号付与の例を示したものである。

第1条と第2条の間に新たに条を挿入する場合、挿入した条の条名を第1条の2とする。

第1条 …

第1条の2 … ←新たに挿入された条

第2条 …


第1条の2と第2条の間に新たに条を挿入する場合、挿入した条の条名を第1条の3とする。

第1条 …

第1条の2 …

第1条の3 … ←新たに挿入された条

第2条 …


第1条の2と第1条の3の間に新たに条を挿入する場合、挿入した条の条名を第1条の2の2とする。

第1条 …

第1条の2 …

第1条の2の2 … ←新たに挿入された条

第1条の3 …

第2条 …


旧繭糸価格安定法(昭和26年法律第310号、生糸の輸入に係る調整等に関する法律と題名変更したのちに廃止)では、第12条の13の3と第12条の13の4の間に「第12条の13の3の2」という条が挿入されたことがある。これは昭和57年の改正によって追加された条であるが、昭和60年の改正で一部改正された上で第12条の8となった。

上記の例において注意すべき点は、一見すると「第1条の2」は「第1条」にあたかも従属しているように思われるが、両者間に主従関係はないという点である。つまり、枝番号付きの条もそうでない条も、同じ条として対等に扱われるのである。

一方、ある条を削除する場合には、「第○条 削除」といった形で表記することにし、条そのものは残すことになる。

挿入、削除のいずれにおいても、それらによって番号を繰り上げたり繰り下げたりして振り直す改番は通常は行わない。これは、ある法令が他の法令を引用する場合に、条文中で「○○法第○条」といった形で条名で表記するため、引用先の法令で改番が行われると、それだけのために、その法令を引用している他の法令の改正も行わなければならなくなるからである。


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