本屋大賞
国 日本
主催NPO法人・本屋大賞実行委員会
初回2004年
公式サイト本屋大賞
本屋大賞(ほんやたいしょう)とは2004年に設立された、NPO法人・本屋大賞実行委員会が運営する文学賞である。
一般に、日本国内の文学賞は、主催が出版社であったり、選考委員が作家や文学者であることが多いが、本屋大賞は、「新刊を扱う書店(オンライン書店含む)の書店員」の投票によってノミネート作品および受賞作が決定される。 出版不況と言われる中、本の売り上げが伸びず書店も数を減らしている一方で、出版される本の点数だけが増えていく状況が背景にあった[1]。実行委員会を立ち上げたメンバーの1人である杉江由次
特色
この賞は「全国書店員が選んだ いちばん! 売りたい本」をキャッチコピーとして掲げており、主催する本屋大賞実行委員会は書店員こそが(商品と顧客という形で)本と読者を「最もよく知る立場」にあると位置づけ[1]、投票資格者を書店員主体にしていることの新しさを強調する[1]。書評や賞の選考委員などの仕事も多い翻訳家の大森望も、従来のように編集者が介することのないこの賞の可能性を指摘し[3]、一次投票の結果が最終投票に向けた対象のノミネート作品と直結しており、実行委員会等によるいわゆる「根回し」や「すりあわせ」がない点を特徴の一つに挙げている[3]。一方で突出した、異彩を放つような作品が受賞しておらず、ラインナップも含め平均化されているという声もある[4]。
選考は年1回単位でおこなわれ、選考期間は年度終わりの5か月間である[1]。本屋大賞の実行委員会は書店員たちが集まって2003年に立ち上げられたものであり、文学賞の運営を行うような経験がある人間はいなかった[1]。しかし第1回、第2回の受賞作が大きく部数を伸ばしてベストセラーになり、大賞の投票に参加する書店員も増えていった[1]。現在では、直木賞や芥川龍之介賞(以下「芥川賞」と略記)受賞した作品よりも、売上部数が伸びる賞として大きな注目を集めている。
また本屋大賞に参加している書店には実行委員会の発行するフリーペーパー『LOVE書店!』が配布されており2006年2月から年3回のペースで発行が続けられている[1]。 本屋大賞には複数の部門があり、それぞれ対象作品・選出方法が異なる。受賞作品の作者には正賞としてクリスタルトロフィーが、副賞として10万円分の図書カードが授与される。 対象作品は過去1年間に刊行された日本の小説。1次投票で1人3作品を選び投票を行なった後、選出された上位10作品のうちから2次投票をおこない決定する。1次投票には制約はないが、2次投票はノミネートされた10作品を全て読んだ上で推薦理由を記載し投票しなければならない。2次投票は、3作品に順位をつけて投票し、順位に応じた点数をつけて集計される。各順位の得点は、1位=3点、2位=2点、3位=1.5点。ただし、第1回と第2回のみ、1位=5点、2位=3点、3位=2点で集計された。 第18回までのノミネート作を作家別にみると、最多は伊坂幸太郎の12作[注 1]で、森見登美彦が6作、三浦しをんが5作、有川浩、小川洋子、辻村深月、西加奈子、百田尚樹、万城目学が各4作、青山美智子、凪良ゆう、原田マハ、東野圭吾、吉田修一、知念実希人、横山秀夫、小川糸、深緑野分が各3作と続く。 対象作品はジャンルを問わず、過去1年以上前に刊行された作品。本屋大賞の1次投票と同時に発掘部門として投票する。大賞などはなく、集計結果をリスト化したものが発表される。第13回より、その集計結果の中から特に共感した1冊を実行委員会が選出し、「超発掘本!」として発表することも行われている。 対象作品は、過去1年間に日本で刊行された翻訳小説(新訳も含む)。1人3作品まで選び、推薦理由を記載し投票する。その集計結果から大賞を決定する。第9回から行われている企画である。 2018年から、小説だけではない本の魅力に触れてもらおうと「Yahoo!ニュース|本屋大賞・ノンフィクション本大賞」が創設され、全国の書店員およそ100人の投票によって10作品がノミネートされ、受賞者には取材支援費として賞金100万円が授与される。 運営体制の変更により、2023年は本部門の発表を行わないことを同年5月に発表した[5][6]。 第1位が大賞受賞作品。年は大賞発表年。第10回までの受賞作品は全て映像化・漫画化などのメディアミックスがなされており、ノミネート作品にも過去にメディアミックスがおこなわれたもの、あるいはその後なされたものが多い。『告白』や『東京タワー ?オカンとボクと、時々、オトン?』などの大ヒット作品も多く、そういう点では芥川賞・直木賞より“稼げる”文学賞とも言われる。これについて映画評論家の垣井道弘 2004年4月5日発表 順位受賞作著者得点出版社備考・メディア展開 2005年4月5日発表 順位受賞作著者得点出版社備考・メディア展開 2006年4月5日発表 順位受賞作著者得点出版社備考・メディア展開 2007年4月5日発表 順位受賞作著者得点出版社備考・メディア展開
部門
本屋大賞
発掘部門
翻訳小説部門
ノンフィクション部門
受賞・ノミネート作品
2004年(第1回)
1博士の愛した数式小川洋子202点新潮社
第55回読売文学賞受賞作
2006年1月映画化
2006年3月ラジオドラマ化
2クライマーズ・ハイ横山秀夫148点文藝春秋
『週刊文春ミステリーベスト10』2003年版1位
2005年12月テレビドラマ化
2008年7月映画化
3アヒルと鴨のコインロッカー伊坂幸太郎111点東京創元社
第25回吉川英治文学新人賞受賞作
2007年5月映画化
4永遠の出口森絵都109点集英社
5重力ピエロ伊坂幸太郎99点新潮社
2009年5月映画化
64TEEN石田衣良76点
第129回直木賞受賞作
2004年漫画化
2004年7月テレビドラマ化
7デッドエンドの思い出よしもとばなな54点文藝春秋
2018年映画化
8終戦のローレライ福井晴敏51点講談社
第24回吉川英治文学新人賞受賞作
第21回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞受賞作
2005年3月漫画化
2005年7月『ローレライ』として映画化
9陰摩羅鬼の瑕京極夏彦38点
10ららら科學の子矢作俊彦38点文藝春秋
2005年(第2回)
1夜のピクニック恩田陸374点新潮社
第26回吉川英治文学新人賞受賞作
2006年9月映画化
2明日の記憶荻原浩302点光文社
第18回山本周五郎賞受賞作
2006年5月映画化
2006年9月ラジオドラマ化
3家守綺譚梨木香歩274点新潮社
2005年2月ラジオドラマ化
4袋小路の男絲山秋子185点講談社
第30回川端康成文学賞受賞作
2009年4月ラジオドラマ化
5チルドレン伊坂幸太郎155点
2006年5月テレビドラマ化
2006年11月映画化
6対岸の彼女角田光代153点文藝春秋
第132回直木賞受賞作
2006年1月テレビドラマ化
7犯人に告ぐ雫井脩介138点双葉社
第7回大藪春彦賞受賞作
『週刊文春ミステリーベスト10』2004年版1位
『週刊現代最高に面白い本』2004年版1位
2007年10月映画化
8黄金旅風飯嶋和一102点小学館
9私が語りはじめた彼は三浦しをん92点新潮社
10そのときは彼によろしく市川拓司74点小学館
2007年6月映画化
2006年(第3回)
1東京タワー ?オカンとボクと、時々、オトン?リリー・フランキー279点扶桑社
2006・2007年テレビドラマ化
2007年映画化、舞台化
2サウスバウンド奥田英朗196.5点角川書店
2007年10月映画化
3死神の精度伊坂幸太郎190点文藝春秋
第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞作
2006年10月ラジオドラマ化
2008年3月『Sweet Rain 死神の精度』として映画化
4容疑者Xの献身東野圭吾184.5点
第134回直木賞受賞作
第6回本格ミステリ大賞受賞作
『週刊文春ミステリーベスト10』2005年版1位
『本格ミステリベスト10』2006年版1位
『このミステリーがすごい!』2006年版1位
2008年10月映画化
2009年4月舞台化
5その日のまえに重松清179.5点
2007年3月ラジオドラマ化
2008年11月映画化
2014年テレビドラマ化
2016年朗読劇
6ナラタージュ島本理生162点角川書店
2017年10月映画化
7告白町田康152.5点中央公論新社第41回谷崎潤一郎賞受賞作
8ベルカ、吠えないのか?古川日出男152点文藝春秋
9県庁の星桂望実141点小学館
2005年漫画化
2006年2月映画化
10さくら西加奈子135点
2020年11月映画化
11魔王伊坂幸太郎103点講談社
2007年『魔王 JUVENILE REMIX』として漫画化
2007年(第4回)
1一瞬の風になれ佐藤多佳子475.5点講談社
第28回吉川英治文学新人賞受賞作
2008年2月テレビドラマ化
2007年7月漫画化
2007年5月ラジオドラマ化
2夜は短し歩けよ乙女森見登美彦455点角川書店
第20回山本周五郎賞受賞作
2007年7月漫画化
2009年4月舞台化
2017年4月アニメ映画化
3風が強く吹いている三浦しをん247点新潮社
『週刊ヤングジャンプ』にて漫画化
2009年10月映画化
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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